さきの日曜日はお休みだったので、のんびりとリビングで何を観ようかと新聞のテレビ欄を眺めていたら、NHKEテレ「日曜美術館」のところで目が留まった。番組タイトルに「佐野元春 世界的写真家を訪ね鳥取へ!」とあって、これはもう当然、植田正治のことだろうとチャンネルボタンを合わせる。意表をついた面白い組み合わせだと思ったが、ちょっと気取った感じの佐野元春が、田園の中にコンクリート打ち放しの直方体を横に並べた異形の写真美術館建物や境港市にある植田の住まい、鳥取砂丘と訪ねて歩く姿を見ていたら、どうして佐野が植田正治の写真世界にひかれたのかわかってきて、UEDA調と称される鳥取砂丘を舞台にした一連のシュールなモノクロ作品の世界は、佐野元春本人の興味の対象や指向する世界観とつながっていることが理解できたのだった。
それで、この植田個人名義の美術館のことは、赤瀬川原平「個人美術館の愉しみ」(光文社新書)で取り上げられていたのだろうかと思い、改めて目次ページをめくると、第6話「田んぼの中の写真館」と題されて紹介されているではないか。
それによると「植田正治の写真は、上品なカステラみたいだ」と端的に比喩しているのがなんともおもしろい。その赤瀬川さん自身も写真をよくしたカメラマニアであるので「きちんとナイフを入れた綺麗な立方体が、白い皿に載って紅茶と一緒に出てくる感じ」と書かれると、なるほどと思う。そうするとそのカステラは、さしずめ長崎の老舗「福砂屋」キューブ、紅茶のほうは国産の日東紅茶でもいいのだが、やはり物足りなくて仏国ブランドのフォションであってもよい気がした。だとすると、手にするカップもボーンチャイナ製、ヨーロッパブランドのジノリかロイヤルコペンハーゲンあたりかなあ、とどうでもよさそうなことを想像して遊んでみたくなる。
この美術館(設計は高松伸)、その周囲の田園の向こうには大山の美しい山裾までの全容が望めるそうで、美術館人工池には晴天の日には見事な逆さ大山が映っているらしく、いつかMといっしょに訪れてみたいなあ。もちろん、生前の植田が「わたしの青空スタジオ」と呼んでいた鳥取砂丘も。
NHK「日曜美術館」より、シュールなショットを。鳥取砂丘を歩く佐野元春、手前には植田正治へのオマージュの黒いハットとステッキ棒
それで、この植田個人名義の美術館のことは、赤瀬川原平「個人美術館の愉しみ」(光文社新書)で取り上げられていたのだろうかと思い、改めて目次ページをめくると、第6話「田んぼの中の写真館」と題されて紹介されているではないか。
それによると「植田正治の写真は、上品なカステラみたいだ」と端的に比喩しているのがなんともおもしろい。その赤瀬川さん自身も写真をよくしたカメラマニアであるので「きちんとナイフを入れた綺麗な立方体が、白い皿に載って紅茶と一緒に出てくる感じ」と書かれると、なるほどと思う。そうするとそのカステラは、さしずめ長崎の老舗「福砂屋」キューブ、紅茶のほうは国産の日東紅茶でもいいのだが、やはり物足りなくて仏国ブランドのフォションであってもよい気がした。だとすると、手にするカップもボーンチャイナ製、ヨーロッパブランドのジノリかロイヤルコペンハーゲンあたりかなあ、とどうでもよさそうなことを想像して遊んでみたくなる。
この美術館(設計は高松伸)、その周囲の田園の向こうには大山の美しい山裾までの全容が望めるそうで、美術館人工池には晴天の日には見事な逆さ大山が映っているらしく、いつかMといっしょに訪れてみたいなあ。もちろん、生前の植田が「わたしの青空スタジオ」と呼んでいた鳥取砂丘も。
NHK「日曜美術館」より、シュールなショットを。鳥取砂丘を歩く佐野元春、手前には植田正治へのオマージュの黒いハットとステッキ棒