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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

夏越しの祓え

2016年07月03日 | 日記
 水無月の末日、明日からは七月の折り返しとなる。それならば、午後から近くの神社へ夏越大祓祭に合わせて茅輪くぐりを体験し、この半年間についた小さな罪や穢れを清めて蘇りの心身で後半を迎えることにしよう、と思い立った。

 その前にランチをどこにするのか、すこしの思案で浮かんだのが、車で20分程で行けるベトナムとタイの味覚を楽しめるオリエンタルレストラン。ここからは、次の目的地への移動もスムーズなので、休日の午後をゆっくりと過ごすにはなかなかよい選択だろう。
 北里方面へ走らせて、大学病院の手前で左折、住宅街に残された貴重な雑木林の道を抜けてしばらくすると、右側に忽然といった感じで平屋建ての白い瀟洒な建物が見えてくる。レストラン「SUIREN 睡蓮」、名前からしてこの季節にふさわしくさわやかで涼しい気分になってくる。店内ランタン製の椅子や木製テーブルなど、オリエンタルなインテリアが基調で天井にある扇風機が回り、室内の空気を緩くかき回して白壁まで届かせている。この空間全体が南国風なのは、そのせいもあるだろう。

 窓際のテーブルに座ってしばらくすると、ランチセットの紫玉ねぎスライスの入ったサラダの小鉢が出される。二の鉢が目に鮮やかなエビの半身の入った生春巻きと揚げ物、これを魚醤ベースのソースでいただく。メインは鶏肉の入った土鍋ごはん、味付けがベトナム風でもさっぱりとしていて、底のおこげが香ばしく、ポリポリした食感が食欲をそそる。
 そして向かい席で湯気を上げているフォー(ベトナムの米粉麺)の澄んだスープを口にすると、ライムスライスやさまざまな香辛料の混じった複雑な酸っぱみのあるさっぱり味が、湿度の高い外の空気から一転、天国へと連れていかれたかのよう。澄んだ塩風味の出汁は、おそらく干しエビなどの魚介類がベース、彩りと香りのメインの香菜パクチーは大好きだが、大学生の娘によると通称カメムシ草と呼ばれるそうで、人によって好みが大きく別れるのがおもしろい。
 食後の飲み物にジャスミンティーとヨーグルトベースのマンゴー、ココナッツなど南国フルーツ賽の目切が入ったデザート、さっぱりした冷たいお茶と濃厚な果汁の対照が食事を締めくくった。隣の席には三人組の乳児を連れた若いママさんグループ、だっこされた赤ちゃんがこちらをみて愛想を振りまいてくれてたので、ほっとその場が和む。

 ゆっくりとした時間の後は、車で通称行幸道路を座間キャンプ方面少し先の鈴鹿神明社へと移動する。このあたり、湧水の里として道路わきには疏水が整備された遊歩道があり、古くからのまちなかで鈴鹿長宿と呼ばれるところ。その中心に目指す神社はあって、すぐとなりの座間農協の駐車場に車をおかせてもらう。
 この神社の由緒書きには、鈴鹿の名の通り古代の時世に伊勢の鈴鹿郷から、相模入海の東嶺に流れ着いた神輿を崇めまつったのが起源とある。境内には古墳遺跡もあることから古くから人が住み着いていたのは確かで、由緒の真偽のほどはともかくあれこれ想像力を刺激される。そういえば、武相荘旧白洲邸の裏手の森につづく入口に「鈴鹿峠」の碑が置かれていたことを憶いだし、白洲正子がたどったであろう伊勢から伊賀、甲賀から信楽、そして琵琶湖畔への道を想像して、いつか巡礼の旅に誘われてみたい。

 本殿の正面に置かれた茅の輪には、すでに人の列が長くつづいていて間もなく儀式が始まる雰囲気だ。その流れに沿って、しずしずとこうべを垂れて神妙に輪をくぐる。本殿内には、すでに祭壇のしつらえと氏子の方々、神主が祝詞をあげるのを後方に立って聴き入る。やがてふたりの神官が本殿をでて四方を修祓してめぐるとしまいとなり、参列者退席のさいに直会(なおらい)のお神酒がふるまわれ、草で編まれた五本の関西風粽ちまきを模したわら細工を渡してくれる。
 これって縁起物か厄除けなのだろうか、「蘇民将来子孫也」と書かれた和紙の付箋がついているその品をありがたく受け取って持ち帰ってきたのだけれど、こんな近所で!、人生初めてのおもしろい体験だった。
 

 ここの前でまず一礼、それから左回り、右回り、左回りと順に三回巡って、本殿にお辞儀する習わし


“蘇民将来子孫也”の文字、今年後半の無事を願って玄関扉の上に供えることに。
 

 (2016.6.30書出し、7.3初校)