藤井財務相辞任へ 小沢氏と確執?政権痛手
18日召集予定の通常国会を控え、鳩山由紀夫首相の大きな後ろ盾となってきた藤井裕久財務相が辞意を固めたことは、政権に大きな痛手となった。
後任人事をめぐり、政府・民主党ではすでに熾烈(しれつ)な綱引きが始まっており、これが政局の序章となる可能性もある。
「藤井さんは大丈夫ですか? 次を用意した方がいいんじゃないですか」
民主党の山岡賢次国対委員長は4日、党本部で首相にこう詰め寄った。
首相が最優先課題に掲げる平成21年度第2次補正予算案と22年度予算案審議では財務相が最前線に立たされる。後任には即戦力を求められるが、首相は「どうなんですかねえ…」とあいまいに答えるだけだった。
首相は昨夏、政界引退を表明していた藤井氏を必死に説得し、衆院選で比例代表の名簿に登載した。財務相起用には民主党の小沢一郎幹事長が難色を示したが、これも押し切った。いかに首相が藤井氏に絶大な信頼を置いていたかの証左といえる。
にもかからわず、唐突な辞意は腑(ふ)に落ちない。藤井氏は「健康上の理由」の一点張りだが、小沢氏との確執を指摘する声もある。
小沢、藤井両氏はかつて盟友だったが、次第に疎遠となり、昨年12月の22年度予算編成をめぐり、対立は表面化した。
藤井氏は子ども手当への所得制限導入や診療報酬引き上げ反対を主張したが、小沢氏は次々に覆し、12月16日の民主党の重点要望の際には「財務省は予算編成を『急げ、急げ』と言っているが、国民の声をちゃんと聞いてやってくれ!」と藤井氏を面罵(めんば)した。この件を機に藤井氏は財務相を続けることに嫌気が差したといわれている。
◆「政治とカネ」も
もう一つ、辞意を固めた理由として「政治とカネ」問題も取りざたされる。
藤井氏は旧自由党で小沢党首の下、幹事長を務め、14年に政党助成金など党費から組織活動費として約15億2千万円が藤井氏あてに支出されたことが明らかになっている。
この件について、藤井氏は複数の議員に「おれ、あれ知らないんだよなあ」と漏らしているが、自民党は通常国会でこの問題を徹底追及する構えを見せており、藤井氏が矢面に立たされる公算は大きかった。
首相が藤井氏の慰留をあきらめても後任人事は難航が予想される。
即戦力として仙谷由人行政刷新担当相、野田佳彦財務副大臣の名が挙がるが、両氏は小沢氏と距離があり、無理に起用すれば首相と小沢氏の関係にヒビが入る可能性がある。菅直人副総理・国家戦略担当相の起用も有力視されるが、菅氏にあまりに権限が集中するとの見方もある。ピンチヒッターとして峰崎直樹財務副大臣の起用も取りざたされている。
「あれは検査入院じゃないだろ?」
藤井氏が入院した翌日の12月29日夜、小沢氏は与党幹部との懇談会の席上で冷ややかにこう言い放ったという。こういう事態になることを予測していたのかもしれない。(加納宏幸)
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