Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

お薬代

2009-10-26 | 想い・雑感
 車をはじめとする様々な工業製品を生み出すには、開発費が必要となる。めでたく商品として世に出るときには、その開発費を回収しなければ、会社として成り立たなくなる。当然商品の価格には、かかった開発費が反映される。産業スパイと呼ばれる人は、この開発のノウハウを盗み出し、開発費ほとんどなしに商品を生み出したいという欲求に応える悪人ということになる。
 医薬品にも開発費がかかる。新化学物質を発見した時点で、特許出願するとそこから20~25年特許権が存続することとなる。しかし、化学物質を発見しただけでは臨床薬にはならない。発見した化学物質を使って様々な基礎研究を行い、動物実験を行い、臨床試験を行い、その上で承認審査を受けるという、5年から10年、あるいはそれ以上の開発期間が必要となる。とすると、ようやく薬として販売を始めても、10年くらい、下手をすると5年くらいで特許権を喪失することとなる。
 新薬を開発した会社とすれば、5年から10年のうちに、研究開発費を回収する必要が出てくるので、どうしても値段が高くなってしまう。近年の分子標的薬などというものは、特に高価な薬品となってきている。
 グリベックもそんな分子標的治療薬の一つ。私の場合は、消化管に発生するGISTと呼ばれる腫瘍が再発した患者さんに使っている。一旦この薬が必要となれば、途中で完全に中止することはとても難しく、服用し続けていただくことになる。通常量をつかえば、一月の薬代は40万円近くになる。1割負担で4万円、3割負担でも高額医療費分が還付されるまでは、とりあえず12万円支払う必要がある。びっくりするような金額だが、まだまだ高い薬は存在する。
 新薬の開発に多額の費用が必要なのはわかるし、資本主義社会ではそれを薬の値段として回収しなければならないことがわかるだけに、薬の値段をどうしたらよいのかわからない。個人の負担を少なくできる方法は無いものだろうか。
 ちなみに、高額な薬を使っても、それは病院の収入にはなりません。医療費高騰といえばすぐに病院が槍玉にあがりますが、お薬代のほとんどは、薬の問屋さんと、製薬会社の収入になると思って間違いありません。



1錠3200円 命の薬を控える患者も