腹腔穿刺

悪性腫瘍がお腹の中に散らばると
腹水が溜まってくることがよくある

悪性腫瘍に対するお薬が
効いてくれれば
その腹水も一旦は消失するが
いずれ効かなくなり
再び水が溜まり出す

消化管間質腫瘍を治療していたUさん
ここに来て腫瘍が再増大し
腹水が急速に溜まってきた
様子を見ていたが
息苦しさを訴え始めた
お腹に溜まった水に
横隔膜が押し上げられ
息を吸いにくくなってしまったのだ

すぐに入院していただき
針をお腹にを刺して腹水を抜いた

随分楽になったと喜ばれたが
原因の治療を行ったわけではないので
再び腹水が増加してくるのは
目に見えている

お腹の中に薬を入れて
再貯留を先延ばしにするよう努めるが
治療選択肢は限られている

いよいよ難しい段階に入ってきた

味覚

病院中庭の渡り廊下に
柿の種が落ちている
鳥が実を食べた後のようだ

確か渋柿のはずだが
鳥には渋みを感じる
味覚がないのだろうか

そもそも味覚があるのだろうか

梢

家の前の桜たちも
少し離れたところにある銀杏の木も
すっかり全身の葉を落としてしまい
こずえが寒風に揺れている

落ち葉が舞うことも
なくなった

枯木の様に見える
その内部では
来春に向けて
静かに命を燃やしている

時節に合わせ
あるがままに
あるべきように
生きて行く姿に乾杯

と言いながら
言い訳しながら
今夜は熱燗かな