ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジョーカー/許されざる捜査官』2010

2019-07-07 00:00:11 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2010年の夏シーズン、フジテレビ系列の火曜夜9時枠で全10話が放映された刑事ドラマ。

神奈川県警・捜査一課強行犯係の第4班長=伊達警部(堺 雅人)はふだん温厚で冴えない感じのサラリーマン刑事なんだけど、夜になると法で裁ききれない極悪人どもを麻酔銃で眠らせ「神隠し」する、闇の処刑人に大変身!ってことで、現代版『必殺仕置人』あるいは21世紀の『ザ・ハングマン』みたいなコンセプトかと思います。

あと、伊達警部が幼い頃に目の前で両親を殺されたトラウマを背負っていたり、彼の正体に気づいた若い鑑識課員(錦戸 亮)が途中から相棒になったりするのはアメコミの『バットマン(&ロビン)』をも彷彿させます。タイトルの『ジョーカー』はバットマンの敵キャラ名と同じですから、間違いなく意識はしてたでしょう。

ほか、熱血肌の新人刑事に杏、捜査一課長に鹿賀丈史、刑事に平山浩行、伊達の元同僚にして元カノのルポライターにりょう、伊達の秘密を知るバーのマスターに大杉 漣、といったレギュラーキャスト陣。

放映当時、私はこの番組に対して期待と不安を両方抱きながら初回を観ました。法の網をかいくぐるほど狡猾な極悪人を、一見優男の堺雅人さんが人知れず成敗するっていうのは素晴らしいコンセプトです。

だけど反面、クレームを恐れるあまり自主規制でがんじがらめになってる現在のテレビ業界で、どこまで「処刑」をキチンと描けるのかが不安でした。殺すことは出来ないにしても、被害者と同等以上の苦しみを主人公はどうやって犯人に与えて見せるのか?

『ザ・ハングマン』の場合は犯人を追いつめて自白、あるいは仲間割れさせて暴露合戦する様子をテレビ中継する等、屈辱や恥辱を加味して社会的に抹殺することでカタルシスを提供してました。

でもそれは『ハングマン』がコメディ要素を含む娯楽作品だから成立したのであって、かなりシリアスな『ジョーカー』でそれをやるには無理があります。

で、『ジョーカー』の場合は「神隠し」でした。麻酔で眠らせた犯人を、どうやら離れ孤島に連れ込んで幽閉しちゃう。そこで犯人がどんな生活をしてるのか、私は第5話あたりまで観ましたが劇中では描かれませんでした。

さて、この仕置きは残酷なのか手ぬるいのか? 殺しちゃうよりは生き地獄を味わわせる方が残酷かも知れないけど、刑務所に入るのと一緒やん!と思うと手ぬるい気もして来ます。

いずれにせよ私が大いに不満なのは、犯人が苦しむ様を具体的に見せてくれない事です。そこは見せなきゃ駄目ですよ!

このドラマでは伊達警部の仕置きがやむを得ない最終手段であることを視聴者に納得させる為か、いかに犯人が極悪非道かつ狡猾な人間で、法律ではどうやっても裁けない卑劣な相手であるかをやたら強調し、さらに被害者やその遺族の苦しみを、執拗なほど時間を割いて描いてる。(実はこっちを見せたくて創ったんじゃないか?って思うくらい、病的にしつこく見せて来る)

そんな陰湿な場面を延々と見せられた視聴者はストレスを溜めに溜めまくり、この憎たらしい腐れ外道に早く鉄槌を下してくれ!って、伊達警部の仕置きを今か今かと待ちわびるワケです。

で、やっとその時が来た!と思ったら、麻酔銃で眠らせてハイおしまい。後は想像にお任せしますと来たもんだ。

それじゃあダメです。我々は溜まりに溜まった鬱憤を胸に残したまんまで、まさに文字通りの消化不良。

想像に任せてちゃ駄目です。ちゃんと画にして見せてくれないと! 被害者たちの苦しみを描いた時間と同等に、いや、その2倍か3倍は時間をかけて犯人の苦しみを描いてくれないと、全然スッキリしないですよ!

『必殺仕置人』に置き換えれば、悪代官の卑劣な悪行三昧をさんざん描いた挙げ句、殺しの依頼を受けた仕置人たちが悪代官を殺しに向かった所で「後は想像してちょんまげ」って幕を閉じちゃうようなもんです。それじゃあドラマが成立しませんよね?

やっぱり、暴力が一番手っ取り早いですよw マジメな話、走る殴る蹴る撃つのアクションを見せないで、何の為の刑事物なの?って話です。仕置人にしろハングマンにしろ、そもそもアクションを見せる為に生まれたキャラクターなんだから。スカッとさせてナンボのジャンルなんだから。

そこにやっぱり、現在のテレビ業界の限界を感じずにいられません。昭和の刑事さん達は大して悪くない奴でもバンバン殺してましたからねw 背後から無言で撃っちゃう人すらいましたからw

とは言え、決して『ジョーカー』の創り手たちは腰が引けてたワケじゃないと思います。逃げの姿勢なら最初からこんな企画は避けてる筈ですから。

今やれることの限界まで追求した結果の「神隠し」であろうと私は思うので、あえて困難な企画にチャレンジされたその心意気は大いにリスペクトします。

それと、後に『リーガルハイ』や『半沢直樹』等で堺雅人さんの十八番となる「社会の矛盾に鉄槌を下す男」キャラの原点としても、この『ジョーカー』はTVドラマ史に残るべき作品かと私は思います。

そして堺さん、杏さん、錦戸くんの型にはまらない演技がまた素晴らしく、鹿賀さん、大杉さんらベテラン陣の脇固めもバッチリでした。それだけで観る価値は充分にあり!

だからこそ、陰湿な描写にやたら時間を割くバランスの悪さと、中途半端な仕置き描写が残念でなりません。一言、もったいない!
 
コメント (2)
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