中学生の頃、大阪に住んでる親友Hの家に泊まりに行った夜、すぐ近所にある看護学校の女子寮を2人で見学しに行きました。
裏手の墓地から寮の窓が見えるんだけど、カーテンが閉まってて中がよく見えない。となると、寮の敷地内に忍び込むしか道はありません。
近づけばカーテンの隙間から中が見えるかも知れないし、運が良ければお風呂も見学出来るかも知れない。学校ではなかなか学べない事ですから、何としても我々は覗かなければなりません。
そんな崇高な志を抱くご立派な我々でしたが、寮内にいる女子たちにその存在を知られてしまっては、彼女らの真に自然な姿を見て学ぶ事が出来なくなってしまいます。それでは意味がありませんし、彼女らにも迷惑がかかる事でしょう。
なので、正義感溢れる我々は出来るだけ姿勢を低くし、息を殺して足音を忍ばせながら、寮の敷地内へと入って行ったのでした。
すると全く不可解な事に、我々は5歩も歩かない内からまばゆい光に照らされ、建物からまるで警報ベルみたいな騒音が鳴り響いたのです。
我々は顔を見合わせ、とっさに思いました。これは恐らく、警備会社が仕掛けた警報装置に違いない。という事はつまり、この敷地内に怪しい者が侵入したという事になる!
「やべぇ!」
我々はまず、そう叫びました。これは勿論、侵入者によって寮内にいる女子たちに危険が及ぶかも知れないからヤバい、という意味です。そして次に口から出た言葉が……
「ずらかれ!」
これは言うまでもなく、侵入者に対して「俺達から逃げられるもんなら逃げてみろ!」という意味です。我々以外の侵入者を、我々は絶対に許しませんからね。
姿なき侵入者を追うために、我々は全力で走りました。その時の我々は物凄い形相をしていたと思いますが、それはもちろん侵入者をビビらせる為の計算です。
我々は何度も何度も女子寮の方を振り返りながら、必死に走りました。この時、もしタイムを計っていたなら、オリンピック並みのスピード記録が出たに違いありません。
何度も後ろを振り返ったのは、もしかすると侵入者が背後にいる可能性まで、我々は冷静に考慮していたからです。
それと、もし警備員が我々を侵入者と間違えて追いかけて来た場合、我々は彼よりも速く走るべきだと直感したんですね。何となく、その方が丸く収まる気がしたんです。
残念ながら侵入者を捕まえる事は出来ませんでしたが、我々も言われの無い誤解で侵入者扱いされずに済んで、心底ホッとしました。警備員さんにそんなミスをさせたら可哀想ですからね。
しかし、とんだとばっちりを受けたもんです。いくら見聞を広げる為のアカデミックな活動とは言え、無許可で女子寮に入るという試みは無謀でした。
でも正直言って、これはメチャクチャ楽しかったですw ゲーム機などでは決して味わえない、本物のスリルですから。娯楽性と麻薬性を秘めた危険なゲームです。
だからと言って、また女子寮を覗いてみたいとは決して思いません。さすがにこの歳になると、それは有り得ません。警報が鳴ってもあの時みたいに速く走れませんから。
いや、すみませんm(_ _)m 被害に遭われた女性からすれば、冗談では済まされない事です。本当に卑劣な行為ですから、私は断じて許しません!