2009年の11月から12月にかけてNHK「土曜ドラマ」枠にて全6話が放映された、麻生幾 原作、古沢良太 脚本によるサスペンスドラマ。2012年には同キャスト&スタッフによる劇場版も公開されてます。
刑事物というよりはスパイ物で、日本のCIAとも言える警視庁公安部外事4課の対国際テロ捜査、決して表には出ない諜報活動が非常に渋いタッチで描かれてます。
外事第4課作業班の冷酷な班長・住本警部補に渡部篤郎、美人でもブスでもない無個性が買われて公安に抜擢される所轄刑事・松沢巡査長に尾野真千子、第4課メンバーに片岡礼子、北見敏之、滝藤賢一、渋川清彦、山本浩司、斎藤 歩、警視庁警備局の局長に石橋 凌、理事官に遠藤憲一、内閣官房長官に余 貴美子、そして「協力者」として住本らに利用されるヒロイン・愛子に石田ゆり子、といったレギュラーキャスト陣。新米役の尾野さんと民間人役の石田さんを除けば、何を考えてるのか判んない怪しい顔の人ばかりですw
だけどそれもリアリティーなんですよね。警察内部でも捜査内容を決して漏らさず、時には味方をも欺き、国益の為なら一般市民も躊躇なく利用し、用済みになれば切り捨てるという非道な世界でずっと生きてたら、そりゃあヘビみたいな眼つきにもなるってもんです。
キャストの顔だけじゃなくドラマの作りそのものがドキュメントタッチで、全編隠しカメラで撮ってるようなブレまくりの映像、ライティングを最小限に抑えた暗い画面、そして起承転結がハッキリしないストーリーと、これで演技が全部アドリブならまるで『警視―K』ですw
ただ、そこはさすが『相棒』や『ゴンゾウ/伝説の刑事』等で高評価を得てきた古沢良太さんの脚本で、行き当たりばったりに見えて実は計算ずくのストーリー、ハイテンポな展開、そして実質の主人公である松沢=オノマチさんの成長ドラマ等、『警視―K』と違ってしっかりとした軸がありますw
目的の為なら手段を選ばず、まだピュアな松沢の正義感さえ利用しちゃう住本班長と、そんな上司に翻弄され、反発しつつも影響されていく松沢との関係は、古沢さんが後に手掛けられるフジテレビの連ドラ『リーガルハイ』シリーズの古美門弁護士(堺 雅人)とその助手・黛(新垣結衣)の関係にも似てる気がします。
とは言え、今回の古沢さんは強力な武器の1つである弾けたユーモアを完全封印。徹底的にシリアスで、映像のトーンと同じく内容もこの上なく暗い! 同じNHK土曜ドラマの『リミット/刑事の現場2』も暗かったけど、その比じゃないくらいに暗い。
だから私は、その徹底したリアリズムと臨場感に圧倒されながらも、次回が楽しみになるほどハマることは無く、最終回までは観なかったし劇場版も観てません。同じ古沢作品なら『リーガルハイ』や『鈴木先生』『デート/恋とはどんなものかしら』の方が絶対的に好きです。
しかしそれはもう、まったくもって好みの問題ですから、コメディよりシリアスなドラマ、リアルな作品がお好きな方には『外事警察』をオススメします。