ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』2011

2019-07-29 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
誉田哲也さんの警察小説『ジウ』シリーズを原作とする『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』は、テレビ朝日系列の金曜深夜「金曜ナイトドラマ」枠で2011年夏シーズン、全9話が放映されました。

『デカワンコ』にハマったこの年、すっかり多部未華子さんのファンになった私は、彼女の次なる出演作を心待ちにしてました。

そこに飛び込んで来た夏の連ドラ情報に、私は狂喜乱舞しました。多部ちゃんが同い年の黒木メイサさんとダブル主演する新番組はなんと、またしても刑事物だと言うではないですか!

多部ちゃんサイドとしては、別に好んで刑事物を選んだワケじゃなく「コメディの次はシリアスな作品を」という意図で選んだ企画が、たまたま刑事物だっただけの話かと思います。

けれども私は「多部ちゃんにはいつか、スタンダードな刑事ドラマにも出てもらいたいなぁ」と思ってた矢先で、そんな漠然とした願いがいきなり叶ってくれたワケです。

スタンダードというのはつまり『デカワンコ』みたいな変化球と違って、ストレートに『太陽にほえろ!』の流れを汲む正統派の刑事物ってことです。

で、企画の概略を読むと、クールな武闘派刑事(黒のイメージ)に黒木メイサ、心優しい庶民派刑事(白のイメージ)に多部未華子、みたいなことが書かれてたんで、これは『太陽~』と言うより女性版『俺たちの勲章』だなと、私は勝手に想像を膨らませました。

と言うことは、対照的な2人の刑事が反目し合いながら犯罪者と闘う内に、やがて信頼の絆を結んで行くバディ物のパターンが想像され、いずれにせよスタンダードな刑事ドラマが観られるに違いないと、私はワクワクしながら放映日を待ちました。

ところが、いざ蓋を開けてみたら驚いた! そこに映し出されたのはスタンダードどころか、近来まれに見る珍品ドラマなのでしたw

『ジウ』というドラマはある意味『デカワンコ』を凌ぐ変化球? いや、魔球? 暴投?w とにかくそれは、ヘンなドラマとしか言いようの無い代物だったんです。

まず、メイサ扮する伊崎基子と多部ちゃん扮する門倉美咲は、ほとんど顔を合わしません。最初こそ同じ特殊犯捜査係=SITの所属だけど、すぐに基子は女性初の特殊急襲部隊=SAT隊員に抜擢され、美咲は所轄・柿の木坂署に異動しちゃう。

映画『ヒート』のロバート・デニーロとアル・パチーノみたいなもんで、それぞれの活躍が別個に描かれて重要なポイントでしか交わる事がない。だから反目する機会も少なく信頼の絆が育まれる時間も無い。2人の間の距離感は、最後まで変わらないままなんです。

基子は人を一切信じないロンリーウルフなんだけど、ヒューマニズム一直線の美咲に感化されることも無く、孤独なまんまでドラマは終わっちゃう。これには度肝を抜かれました。普通なら孤独な主人公が誰かと絆を結び、愛や友情の大切さを知るのがドラマってもんですから。

また、美咲は同僚達から「カンヌ」と呼ばれてて、それは泣きの芝居で犯罪者を落とす交渉テクニックが「主演女優賞もの」って理由なんだけど、彼女はドラマの中でその特技を、なんと一度たりとも披露しない!

それって「ジーパン」と呼ばれてる刑事が背広姿のまま最後まで通しちゃうようなもんで、彼女の一体どこが「カンヌ」なのか視聴者にはサッパリ解んないw

それより何より、彼女らが追う「ジウ」と呼ばれる謎めいた連続殺人鬼と、その背後に潜む「新世界秩序」なる怪しいテロ組織の存在が、怖いんだか可笑しいんだか、そもそも奴らは一体何をどうしたかったのか、最終回まで観てもよく解んないw

そしてタイトルロールにもなってる若き殺し屋「ジウ」です。言わばこのドラマの核となる人物で、彼の得体の知れない恐ろしさや、無敵とも言える強さがあればこそ、それに立ち向かうメイサ&多部ちゃんの活躍が光るワケです。

ところが、そのジウを演じる韓国から来たダンサー少年=L君が、ちっとも強そうにも怖そうにも見えない! これはホントに、返す返すも致命的でした。ミスキャストどころの話じゃありません。

そもそも、見かけは可愛い少年だけど眼が死んでるとか、全身に殺気が漲ってるとか、背中に哀しみが滲み出てるとか、そういうのは文字の世界(小説)じゃ成立しても、映像で表現するのは極めて難しいことです。

それだけハードルの高いキャラクターなのに、よりによってほとんど芝居が出来ない、見かけもお人好しの中学生にしか見えないガキンチョを、なんでわざわざ韓国くんだりから引っ張って来なきゃいけないのか?

そこには抗いようの無い大人の事情があったのかも知れないけど、ハッキリ言ってこのキャスティングは、全てを「台無し」にしたと私は思ってます。

……とまぁ、ツッコミだしたらキリが無い『ジウ』なんだけど、それでも私はこの作品を駄作だとは言いたくありません。だって多部ちゃんが出てるから……っていうのが主たる理由だけどw、それだけじゃないんです。

手垢が付きまくった既製のフォーマットに、旬の人気俳優をとっかえひっかえハメ込んだだけの、まるでインスタント食品みたいにお手軽で無個性な刑事ドラマがはびこる今のご時世においては、「非凡である」という事こそが何より素晴らしい!と私は思うワケです。

確かに私はスタンダードな刑事ドラマが好きだけど、そこに何かプラスアルファの新しさが無ければ、創る意味が無いとも思ってます。

良くも悪くも、他の刑事ドラマには無い味わいが『ジウ』には溢れてました。返す返すもL君の起用は大失敗だけど、安易に日本のメジャーアイドルを使わなかったチャレンジ精神は評価すべきかも知れません。

チャレンジと言えば、スタントマンに頼ることなく数々のハードアクションを自らこなした黒木メイサさんにも拍手を贈りたいです。彼女の殺陣は本当にカッコ良かった!

私は格闘技に関して素人ですから、殺陣のレベルがどれほどなのか判断出来ないけれど、彼女の全身から漲る殺気が、べらぼうに強いキャラクターに説得力を与えてました。L君のへなちょこアクションとは大違いw(今あらためて観直してもホントへなちょこ)

そしてやっぱり、果てしなくB級(いやC級?)に近いこの番組を、ちゃんと大人の鑑賞に耐え得る作品に底上げしたのは、間違いなく多部未華子さんの功績です。『デカワンコ』もそうであったように、彼女の卓越した演技力がキャラクターに実在感をもたらし、作品の世界観を「荒唐無稽」一歩手前でつなぎ止めてくれました。

美咲が冴えない中年男である東主任(北村有起哉)にほのかな想いを寄せる展開も、我々に夢を与えてくれましたw 多部ちゃんはなぜか、中高年のオッサン世代にファンが多いんです。

そんな多部ちゃんが籠城犯の要求に従って下着姿になったり、メイサはSATの同僚=城田 優くん相手にベッドシーンを披露する等、お色気描写も忘れない姿勢がまた素晴らしい!

その他キャストは、警察関係者に伊武雅刀、モロ師岡、阿南敦子、小柳 友、矢島健一、飯田基祐、宮川一朗太、石丸謙二郎、光石 研、寮のまかないオバサンに岸本加世子、美咲の両親に不破万作&松本じゅん、ジャーナリストに小市漫太郎、新世界秩序の首領に石坂浩二、といった面々。

主題歌はレディ・ガガ(ただしDVDでは差し替え)、そして制作はテレビ朝日&東宝という珍しい組み合わせ(映画化を目論んでたのでしょう)。

一般的な眼で観て面白いかと問われると返答に困るしw、決して名作とは言えない、どちらかと言えば迷作、珍作なんだけど……いや、だからこそ、これは忘れられない作品であり、昨今の無個性極まりない刑事ドラマ群に飽き飽きしておられる方には、恐る恐るながらもオススメしたいですw

多部ちゃんの下着姿やメイサの本格アクションも必見だし、L君の下手すぎる芝居&へなちょこアクションを見て笑うのも、これまた一興ですからw
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする