亡くなったペットのお悔やみに始まり、離婚報告や絶縁状など多種多様な手紙を題材にして来たドラマですが、最後は亡くなった身内への感謝、生前に伝えられなった想いを伝えたいっていう、とても普遍的なテーマが描かれました。
それはシリーズ全話かけて綴られて来たヒロイン=鳩子(多部未華子)と先代=祖母(倍賞美津子)の物語、そのクライマックスですから、やっぱ展開が予想出来ても泣かされちゃいます。
前回完結した高橋克典さんのエピソードは、逆に亡くなった身内から生きてる身内に想いを伝えるストーリーでした。こちらもシリーズ序盤から描かれてますから、多部ちゃんの話と高橋さんの話は「対」になってたと、言えなくもありません。
高橋克典さんと言えば『特命係長 只野仁』等に代表されるアクの強い芝居が印象的だけど、今回は母の介護に苦しむ平凡な男をナチュラルに、かつ繊細に演じておられました。
NHKのトーク番組で代表作を問われ、この『ツバキ文具店』が新たな代表作だと答えておられた高橋さん。それは半分社交辞令だとしても、もう半分はご本心だったんじゃないでしょうか。それくらい良い仕事をされたと思います。
高橋さんだけじゃなく、ヒロインの恋のお相手となった上地雄輔くん、そのキュートな娘役の新津ちせちゃん、口は悪いが心根は優しい「男爵」役の奥田瑛二さん、恋する乙女「パンティー」役の片瀬那奈さん、日本人離れを通り越して浮世離れしちゃってるお隣さん「バーバラ婦人」役の江波杏子さん等、皆さん本当にチャーミングで、一人一人がいとおしかったです。
もちろん、その中心にいる多部ちゃんと倍賞さんが素晴らしいのは、もはや言うまでもありません。
俳優さんがみんな輝いて見えるのはスタッフ全員の功績に他ならないけど、特に多部未華子という女優さんの本質を的確に理解し、100%活かしてくれた脚本&演出は、2017年度タベリスト特別賞を授与すべき、近年稀れなベストワークと言えましょう。
さすが、局の看板番組である朝ドラのヒロインに、何千といる候補者の中から、まだマイナーだった多部ちゃんを見いだしたNHKさんです。多部ちゃんの連ドラとしては、かなり久々のホームランとなりました。
恋愛ネタもあるにはあったけど「壁ドン」だの「萌えキュン」だのといった空虚なもんじゃなく、ヒロインが壁を乗り越えるための糧として無くてはならない要素でした。
ただし、1つだけ疑問が…… かつて上地くんの奥さんが通り魔に「殺された」っていう設定は、あんまり意味無かったですよねw 上地くんが再婚を積極的に考えない理由としては、ちょっとブラック過ぎて『ツバキ文具店』の世界観だと違和感があり、余計な付け足しとしか思えませんでした。
気になったのはそれ位で、基本的にはハイクオリティーを最後までキープしつつ、明確なメッセージを真摯に伝えてくれた、本当に素晴らしいドラマ。タベリスト特別賞決定です。エクセレント!
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