(番組の概要&初回レビューは『刑事ドラマHISTORY』カテゴリーの記事をご参照下さい)
☆第2話は、第4機動捜査隊の伊吹(綾野 剛)と志摩(星野 源)がパトロール中に見かけた車の様子に違和感を覚え、それが凶器を持って逃走中の殺人犯(松下洸平)を乗せた車だと判り、追跡を開始するという滑り出し。
このドラマは日常から事件への導入がいつもスムーズかつ絶妙で、毎回あれよあれよと引き込まれて眼が離せなくなっちゃう。そこに強引さを感じさせない脚本がほんと神レベルで素晴らしいです。
で、車の持ち主である夫婦(鶴見辰吾、池津祥子)は若い犯人に脅されてるワケだけど、なぜか彼の逃走を手助けしようとする。実はこの夫婦、息子を信じなかったせいで自殺に追いやってしまった暗い過去があり、同じ年頃の犯人の無実を信じることで贖罪しようとしてる。
犯人が本当に人を殺したことを知ってもなお、我が身を挺して逃がそうとする夫婦がやってることは果たして愛なのか、単なるエゴなのか?
「人は信じたいものだけを信じる」っていう志摩の言葉が真理を突いてて、泣かされつつも考えさせられるお話でした。
☆『アンナチュラル』の刑事たち(大倉孝二&吉田ウーロン太)も登場した第3話では、偽りの110番通報でパトカーを呼び、よーいドンで逃げ切ったら勝ちっていうゲームを繰り返す高校生たちに、元陸上部で俊足だけが取り柄の伊吹が挑みます。
実はその高校生たちも、先輩部員が起こした不祥事の連帯責任で活動停止させられ、走る機会を奪われた陸上部員なのでした。
事件そのものは他愛ないイタズラであり、捕まった部員たちは素直に反省するんだけど、1人だけ逃げ切ってしまった子が怪しい男(菅田将暉)と出逢ってしまい、どうやら深刻な悪の道へと堕ちていく。
「人は何かのスイッチで道を間違える」
志摩が言った台詞はその高校生と、彼自身のダークな過去にも架かってることが後のエピソードで明かされます。
☆第4話は、冒頭でいきなりヤクザたちに銃で撃たれた女=透子(美村里江)が、なぜヤクザに追われてるのか、いったい何がしたくて逃げてるのか、その謎解きと平行して、桔梗隊長(麻生久美子)と同居する謎の女=麦(黒川智花)の素性も明かされていきます。
透子はかつて働いてた裏カジノ店で摘発を食らった後、心機一転で就職したつもりの会社までヤクザと繋がってることが判り、自分の人生に絶望して裏金を横領し、それがバレていま追われてる。
一方、麦もかつて裏カジノと関わり、その情報を提供したにも関わらず警察が摘発に失敗し、組織から命を狙われる羽目になっちゃった。それで責任を感じた桔梗が麦を匿ってるんだけど、どうやら彼女の存在がクライマックスの展開に大きく関わって来そうです。
で、撃たれた透子が命懸けでやろうとしてたのは、女子児童慈善団体への寄付でした。ろくでもなかった人生の最期に1つだけ、誰かの役に立って彼女は死にたかった。でもそれはヤクザの裏金だから寄付させちゃいけないのに、あえて見逃してやる伊吹&志摩の温情に泣きました。
なお、今回の事件を通して、志摩にもスコッチ刑事的な暗いトラウマがあり、リーサル・ウェポン的な危ないダークサイドがあることが分かって来ます。
そうしてゲスト側のドラマとレギュラー側のドラマを違和感なく絡ませ、各キャラクターをより深く掘り下げ、その関係性を変化させていく作劇が本当に見事! 毎回、存分に楽しみながらも唸らされます。
☆第5話ではベトナム人留学生たちによるコンビニ強盗を捜査する伊吹&志摩が、劣悪な労働環境にあえぐ外国人たちの実態を思い知らされ、彼らを支援したい気持ちが強すぎて強盗を首謀した日本語教師(渡辺大知)に哀しい手錠をかける羽目になりました。
昨今の刑事ドラマは奇想天外なトリックやらどんでん返しに固執しすぎて、すっかり現実離れしちゃってるけど、この『MIU404』で描かれる犯罪は我々の身近でも起こり得るものばかりで、とても現実的で現代的。
私が住む地域でもここ数年で外国人労働者が爆発的に増えており、つい色眼鏡で見ちゃう自分がいるもんだから身につまされました。確かに素行の悪いヤツはいるけど、いい子もいっぱいいる。それはどこの国でも同じ。当たり前のことですよね。
☆さて、第6話では「相棒殺し」と陰口される志摩のスコッチ的過去が明かされ、それを全面的に受け入れた伊吹によってその傷が癒され、ドラマが1つの節目を迎えました。
「人は何かのスイッチで道を間違える」
遠慮してスイッチを押せなかったせいでかつての相棒(村上虹郎)を死なせてしまい、自分自身すら信じられなくなった志摩の魂を、遠慮という文字が辞書から抜け落ちてる伊吹が救うんですよね。志摩が押して欲しくなかったスイッチまで片っ端から押しまくってw
それで傷が癒えたからと言って、志摩が遠慮を知らない人間に生まれ変われるワケじゃない。けど、横に伊吹がいれば何とかやって行ける。それは伊吹にとっても同じこと。名コンビとはそういうものなんだと思います。
☆そうして志摩や桔梗に関する謎が解明され、次回あたりから菅田将暉くんが本格始動して最終章に突入する、その間の骨休め的な位置づけの第7話は、追跡に次ぐ追跡の純エンタメ路線。私が一番観たいのはこういうエピソードなんですよねw
初回のカーチェイスを凌駕するような格闘アクションも見られ、陣馬班長(橋本じゅん)の長さん的ホームドラマにはホロッと来たし、スマホ世代のボンボン刑事=九重(岡田健史)の相棒想いな一面も描かれて、クライマックス前にやっておくべき事はこれで全部やった感じ。
☆いやあ~、ほんとに素晴らしいです。各エピソード単体のクオリティーもさることながら、回を跨いだ謎の匂わせ方にせよ、伏線の張り方と回収の仕方にせよ、あざとさを微塵も感じさせないのが野木脚本の凄いところ。そういった謎や伏線を毎回事件の内容とリンクさせるテクニックもさる事ながら、何より作品にこめられた「熱量」がストレートに響いて来るから素直に感動できる。
その熱量がどこから生まれてるのかと言えば、たぶん「怒り」なんですよね。あおり運転する輩どもへの怒り、反社会勢力への怒り、子供や外国人労働者を食い物にする連中への怒り、それを見て見ぬフリをする大人たちへの怒り、またその犠牲となった弱者たちに対する共感も、ぜんぶ作者が日頃から抱いてる本当の気持ちなんだろうと思います。
私がよく言う「作品に魂がこもってる」ってヤツです。説得するにせよ論破するにせよ、言葉に魂をこめなきゃ相手の心は動かせない。それとまったく同じことで、野木亜紀子さんのドラマが面白いのは常にメッセージが明確なのと、そこに嘘や建前がたぶん無いから。その根底にある怒りが、我々凡人が持つそれと全く同じだから。テクニックは二の次だろうと私は思います。
それと各キャラクターへの愛ですよね。謎解きゲームの単なる「コマ」になってない。刑事ロボットどころか、伊吹&志摩が使う覆面車にまで「まるごとメロンパン」っていう個性=人間味を持たせてる。
昨今の刑事ドラマがすっかり見失ったものが、この作品には詰まってる。格好つけて言えば「パッション」ってヤツです。パッションがあれば自ずと登場人物は走るだろうから、ドラマはアクティブになります。
ただ突っ立って謎解きしたり、裏切者を探したりする「ゲーム」にパッションなんか感じようがありません。だからこそ気楽に観られる→安定した視聴率を稼げる→そればっかりになっちゃうって事なんでしょう。
けど、そんなもん観たって何も得られないことに、もう皆とっくに気づいてますよ。かつて特撮ヒーロー物が「ジャリ番」と呼ばれてバカにされた代わりに、今じゃ刑事物が医者物と並んで鼻で笑われるジャンルの筆頭になってませんか?
それはマンネリだからじゃなくて、創り手にパッションが無いからだと私は思う。小手先だけで創ってるのがバレバレなんです。『刑事7人』がその代表格。なのにそういう番組の方が視聴率を稼いだりしちゃうから厄介なワケです。破滅です。
それは本当に嘆かわしいことだけど、一方でこの『MIU404』みたいにパッションの塊みたいな刑事ドラマも、ごく稀れにだけど生まれてますから捨てたもんじゃありません。
野木亜紀子さんが刑事物を書いて下さったことに、私は心から感謝します。ほかの創り手さんはこれを観て「ああ、さすがだな」だけで済まさず、「よし、こっちも負けずにやったるで!」って、どっかで落として来たパッションを是非とも取り戻して頂きたい! ほんと切に、切にそう願います。
セクシーショットは、第3話で高校陸上部のマネージャーを演じた山田杏奈さんと、第5話でベトナム人留学生を演じたフォンチーさん、そして第6話で志摩の死んだ相棒に命を救われた垣内彩未さんです。
毎回気づいたら泣いてますww
大倉孝二さん&吉田ウーロン太さんって、アンナチュラルと同じ役なんですか??
ホントにつながってるんですね、今度私の大好きなずんの飯尾さんもではあの役なんですよねww
大倉さんの調べもしますし助けもしますよはもうほんと痺れました、号泣でした!!
今回は橋本さんがホントにかっこよかった
いいあんばいってこういうことなんですよね、
素晴らしいドラマです。
ご紹介いただきましてありがとうございます!!
分かる人にしか分からない程度に、さりげなくやってるのがまさに「いい案配」ですよね。