ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『ルート225』考察その2

2020-11-09 18:32:43 | 多部未華子










 
藤野千夜さんの小説を志村貴子さんがコミカライズされた、漫画版『ルート225』を読みました。

大筋は映画版とほぼ同じだけど、漫画版ではヒロイン=エリ子の男友達である「マッチョ」こと松本くんと、エリ子の弟=ダイゴの女友達であるクマノイさんの出番がもっと多いこと、そしてエリ子とダイゴがそれぞれ親戚に引き取られた後、またサプライズが待ってることが映画版とは違ってました。

まず、映画版でマッチョとクマノイさんの出番が大幅に減らされたのは、単純に尺を2時間弱にまとめる為の事務的な処置と思われます。それでも映画版でこの両者はとても印象に残ってますから、そこはうまく整理して脚色された林民夫さんがさすが!と言うほかありません。

その中で私が気になったのは、映画では元の世界で死んだはずのクマノイさんがパラレルワールドで生きてて、愛犬のツインキーが死んでる設定なんだけど、漫画版ではそれに加えて、ツインキーが死んだのがエリ子のせいだった事実が判明するんですよね。

元の世界では、クマノイさんはエリ子と出逢う前に死んじゃってますから、たぶんツインキーはまだ生きてます。

もしかしたらクマノイさんの身代わりに? 片方の世界で死ぬ予定だった者が生き残ったら、代わりにもう片方の世界で近しい者、あるいは愛する者がいなくなっちゃうシステム?

だとしたら、やっぱりエリ子とダイゴの身代わりになって、両親はいなくなっちゃったのかも? あるいは、エリ子かダイゴがそう思い込もうとしてる。両親が自分たちを見捨てて失踪した、あるいは死んじゃった現実を受けとめられずに。

エリ子とダイゴは、元の世界からパラレルワールドに移る途中で、ツインキーを抱いたクマノイさんに出逢ってます(しかも漫画版では海辺に忽然と現れる!)から、少なくともあの黄昏の海が「死後の世界」を意味してるのは間違いなさそうです。あの海は国道225号線=車がビュンビュン行き交う幹線道路があるべき場所に現れますから、二人は本来なら車にはねられる運命だったのかも?

パラレルワールドに来てから、エリ子がギクシャクしてた親友の大久保ちゃんと知らぬ間に仲直りしてたり、ダイゴが自分のせいで死んだと思ってるクマノイさんが生きてたりして、元の世界より明らかに良くなってるんだけど、「なのにパパとママがいない!」って、エリ子が泣くシーンが漫画版にはありました。(映画版にもあったかも?)

つまり、何かを得れば何かを失う。すべてプラマイゼロになるよう、最後に帳尻が合うように世の中は出来てる。人生とはそういうもんだっていうメッセージなのかも?

……と、そんなことを思いながら漫画版を読んでたのですが、最後まで来てまた驚いた!

映画版とのもう1つの大きな相違点。エリ子とダイゴがそれぞれ別の親戚に引き取られた後のこと。

これはたぶん、小説にも無かった漫画版オリジナルのエピローグなんだけど、なんと、エリ子が引っ越した町では、その世界では、両親がちゃんと存在する設定になっていた!w なにぃーっ?!

エリ子が親戚に引き取られたのはお母さんが入院してるからであり、やがて退院することになって、また一家4人で元の生活に戻ってみたら、大久保ちゃんとはまたギクシャクしてるというw

だけどそれは、やっぱり「何かを得れば何かを失う」を裏付けてると解釈出来なくもありません。

で、今度の世界では、エリ子は自分から大久保ちゃんに、面と向かって仲直りの言葉をかける。何が原因であるにせよ両親がいない試練の時期を経て、ちょっと成長した姿を見せてくれるワケです。

巻末に、原作者の藤野さんが「この新しい世界に生きるエリ子とダイゴを、私はとても気に入っています」って寄稿されてるので、こういう「if」もアリだし、また違った「if」もアリなんでしょう。

いずれにせよ、誰にでもいつかは訪れる「自立しなくちゃならない時」を描いた作品なのは間違いなくて、現実にせよ妄想にせよパラレルワールドはその試練のメタファー。

それさえ感じ取れたら、あとはどう解釈しようが自由ってこと。そもそも、はっきりした答えが出ないからこそ『ルート225』は面白い。カルトですよカルトw

カルトな作品って、観客や読者が勝手に深読みして意味を探ろうとする、その結果としてカルトと呼ばれるだけで、実はそれほど大した意味は無いんですよね。

だって、巨人の高橋由伸選手(当時)のテレホンカードだけが元の世界に通じてるなんて設定に、意味なんかあるワケがないw

それって映画版の脚本を書かれた林民夫さんのお遊びだろうと思ってたら、漫画版にもしっかりありましたw(ってことは小説にもあるんでしょう) なぜ高橋由伸さんでなければならないのか、気にはなるけどもう疲れましたw

ポートレートは、映画版でエリ子(多部未華子)の親友=大久保ちゃんを演じた小南千明さん(現在シンガーソングライターとして活躍中)と、クマノイさんを演じた市川春樹さん(すでに引退された模様)です。
 


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2 コメント

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Unknown (gonbe5515)
2020-11-09 18:55:57
ハリソン君、考察その2、おつかれさまでした。そしてありがとうございました。


漫画版『ルート225』、探してみます!これはもう、読まずにはおられないです。
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Unknown (harrison2018)
2020-11-09 19:01:25
楽しんで頂けたなら良かったです。こちらこそありがとうございます。漫画版はアマ○ンでかなり安価で購入可能です!
返信する

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