老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

渦巻き線香

2023-04-16 10:26:03 | 老いの光影 第10章 老いの旅人たち
1933 渦巻き線香



明日17日は義父の49日。
逝かれたことが信じられず「生きている」と思ったり、ふと「いない」と気づいたりする。

普通の線香は、直線の棒状になっていて、燃焼時間はだいたい数十分程度でしかない。
火をともしてから数十分で灰になって燃え尽きてしまう。
お通夜の席など、一晩中線香の火を絶やしてはいけない時などは、
普通の線香だと頻繁に火をつけなければならず大変である。

渦巻き線香は長い間火をともすことができ、お通夜などに使われる渦巻き線香は、
12時間(なかには24時間)ほど火をともすことができるので、夜中も線香の火を絶やさずにいられる。

煙を出し燃えている渦巻き線香を眺めながら、渦巻き線香は人生のように思えてきた。
燃え始め、最初の一回りは時間が長い。
それは子どもの時間のようにも映る。
線香が燃え尽きるのはまだまだ先のことであり、「子どもの頃の時間はゆっくりと流れている。
「もういくつ寝るとお正月」の歌は、クリスマスや正月が来るのを本当に待ち遠しく待ったのも随分過去のこと。

時間の流れは知らぬ間に過ぎ往き、
気がついたら渦巻き線香は最後の一回りになり、
残された時間はあとわずかになった。

線香が燃え尽きたら、臨終となる。
時間は眼に映らない。
時間は無常に流れ往く。
老いを迎え、老いの齢を重ね往き、
渦巻き線香の如く燃え尽きる。
最期は穏かな表情(顔)で眠るように逝けたら「幸福(しあわせ)だ」。