老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

ジッと死に向かって生きる

2020-10-03 09:50:23 | 生老病死


1702 ジッと死に向かって生きる(再掲 2018年6月3日のブログ)


昨日
キャンバスで約2時間をかけ
83歳の素敵なお婆ちゃんに会いに行って来た
(介護相談を担当させて頂いているひとりの女性)
悪性の外陰部癌
疼痛に耐え
ジッと生きている

いまは
サービス付き高齢者向け住宅に棲む

彼女は寂しく話してくれた
「神様は私には幸せをもたらしてくれなかった」
「人生の最後まで癌に苦しみ いまは死を待つだけ」

癌の痛みは本人だけしかわからない痛み
手足は痩せ細り 棒のよう
両脚を動かすと激痛が走り
その痛みが顔に現れ
いたたまれない

彼女は「痛く」ても顔には出さず
笑顔で「(会いに来てくれて)ありがとう」と話される
後、数日の生命かもしれない・・・・
ジッと死に対峙し生きている

医師、看護師そしてケアスタッフが
彼女の居室を訪れる


彼女との出会いのきっかけは
私の妻の父親と
従弟の関係にある

20代のときに
両親を見送り
かけがえのない妹と弟がいた

妹は妻子ある男性と交際
騙され海で入水自殺

彼女が定年になり退職となり
その退職金の全てが
弟のサラ金に消えた
その弟を恨むこともなかった彼女

弟は手遅れの肝硬変を患い他界した

それ以来家族はなく
独りで暮らしてきた

昨年の今頃
外陰部に腫瘍ができ
場所が場所だけに
受診が遅れに遅れた

彼女は自分の生命はそう長くはないと悟り
自分の亡き後
家の取り壊しと葬式と墓を賄うだけの僅かな貯金を
妻の父親に託した

彼女は話す
天涯孤独の身ではない
こうして妻の母親が毎日のように来てくれ独りではないことを・・・・

彼女は
苦労の連続
耐えて生きてきた
いままた疼痛にジッと耐え生きている

何もできない私
痩せ細り手を握り返してきただけの自分
 


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (cyogorri(雨音))
2020-10-03 10:28:59
こんにちは
何時も拝見させていただいて勇気を頂いてます。
私など、まだまだ、なのですね、頑張ります、ありがとう
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Unknown (ピエリナ)
2020-10-03 11:08:14
人を責めもせず、じっと死に向かって生きる。
この方、ご立派ですね。
私なんて足もとにも及びません。
返信する
Unknown (星光輝)
2020-10-03 13:26:09
雨音様
こちらこそ
まとまりのないブログをお読み頂きありがとうございます。
そんなことないです。
人間、生きているだけで・・・。
自分もまだまだです。
お互いに頑張りましょう。
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Unknown (星光輝)
2020-10-03 13:36:43
ピエリナ様
自分も彼女から教えられました。

弟様が悪徳闇金から借りたお金が
膨れ上がり
お姉様にすがったのです。
彼女は、弟のために
千万円単位の退職金を
サラ金の返済に充てたのです。

弟は酒に溺れ肝硬変になり亡くなった。

その話を聴いたときは
ほんとうにいたたまれなかった。
普通だったら弟が作った借金
自分の老後を考えたら
退職金は使わない。

彼女が一番悲しかったことは
家族がいなくなったことです。

縁がありこうして最後彼女と
かかわりを持てたことに
感謝しています。

彼女は、職場の同僚(女性)と
ワインを飲むことを楽しんでいました。

癌の痛みをこらえながら
サービス付き高齢者向け住宅の一室で
ひとり過ごされていた時間の方が多かっただけに
さぞかし辛く泪を流していたのでは、と
思っています。

でも、サービス付き高齢者向け住宅のスタッフに
看取りをしていただけたことが救いだと思っています。

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Unknown (ピエリナ)
2020-10-03 14:55:54
私もホスピスでいろいろな方の人生に触れました。

この方の最後の日々と最期が安らかであられたと信じたいです。

今更ですが、こうしてご縁を頂きましたので、ご冥福をお祈り致します。
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Unknown (星光輝)
2020-10-03 16:14:30
お祈りありがとうございます。
筑波山が見えるところで眠っておられます。
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Unknown (kame3957)
2020-10-05 13:02:37
老い楽の詩様
とても切なく悲しいです。
胸が詰まる思いです。
どの様にお過ごしだったのでしょうか?
どれ程の痛みや苦痛などを乗り越えたのでしょうか?

本当にとても強い方ですね、どうぞ
安らかに憩われれます様お祈りいたします。
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Unknown (星光輝)
2020-10-05 16:50:17
kame3957 sama

彼女が生まれた地のサービス付き高齢者向け住宅に入居し
毎日のようにwifeの母親が面会に行っていました
好きな飲み物や果物などを差し入れをしていました
どの位痛かったのか
彼女は言葉にしませんでした
医師からは痛み止めの錠剤など処方され
最後はモルヒネも投与されたと思います

「神様は私には幸せをもたらしてくれなかった」
「人生の最後まで癌に苦しみ いまは死を待つだけ」
彼女のこの言葉は胸に刺さります

でも最後はやすらかな顔で眠りにつきました

wifeの実家家族とwifeのお姉さま家族で
葬儀と墓に埋葬をしました
自分も参列しました

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