一面に薄紫の絨毯を敷き詰めたようにレンゲソウが咲くと、農繁期に入る。
大鎌で刈り取られたレンゲソウは水田にすきこまれて肥料となり、根瘤バクテリアの働きで地中に蓄えられた窒素は秋の豊作を約束した。
「ジョメングサ」ともいわれたレンゲソウは稲作に大きな変化をもたらした。
と、中学の理科の先生がよく言っていた。
刈り取られる前のレンゲソウの中に寝転んだ、背中から湿気がジワリと伝わってきて快適なものではなかったけれど、蓮華のすだれを透してみる皐月の空は美しかったし、蜜蜂の羽音は眠気を誘った。
水田の持ち主から学校に苦情が来た「生徒が蓮華を踏みつけて刈りにくい、田んぼに入るのは止めてくれ」
全校朝礼の壇上で校長先生が生徒に向かって注意した。
あの蓮華畑はどこへ行った。
シャガの花も同じころ咲いた。