2011年12月31日の夕陽が山脈の谷間の隙間を通して、日時計の秒針のように市街地の狭い範囲を赤く染めている。
陽が落ちる、燕岳の尾根筋の雪の輝きを覆い隠すように蒼い影が山頂に向かって伸びてゆく。
突然 山頂の一点がシリウスのように強い光芒を発する。
それは山小屋のガラス窓の反射光であり、ある季節限定のささやかなセレモニーである。
今年も様々な出来事があったけれど、最後の締めくくりに小さな光のショウに出会えたことで気持ちが和んだ。
2分程して山頂は蒼いシルエットに変った。
たおやかな歳晩である。
て
テレビが冬山を目指して上高地に向かう重装備の登山者を伝えていた。
食料と住居を背負い、腰まで隠れる積雪と格闘しながら一歩ずつ高度を稼いでゆく。
急斜面では胸まで埋まりながら、泳ぐように両手で雪をかきわけて進む
常念は今日も吹き荒れているだろう。
枇杷
今年から 年度期間が1月~12月に変わった関係で営業日が1日伸び、今日が年度最終日である。
午前中出勤し仕事を修め清掃した。
晴天が続いて気温が日々低下して行く中で、丸丸と着膨れしたように枇杷が咲いている。
枇杷の植生は暖地に限られると思いきや、寒冷地にすっかり順応して逞しく茂っている。
冬枯れした根元の雑草を掃除していたら、こぼれた種子から芽生えたのだろう形の良い幼木が数本生えていた。
以前 取り入れの終わった晩秋の畑で枇杷の幼木を見つけ、植木鉢に植えつけて室内に持ち込んだ。
室内で元気に越冬した苗木は、翌春戸外で存分陽光を浴びて驚くほど成長した。
そんなことを3回ほど繰り返している間に室内で育てられる限界を越えてしまった。
止むなく、冬の間一番暖かいと思われる南側の窓下に移植した。
多分凍死するだろうと思ったのだが、葉の先端が少し変色しただけで無事越冬したのである。
地球温暖化が幸いしたのかも知れない。
爾来成長を持続し、数年前から 花が咲き 実がなっている。
正月用の日本酒が揃った。
斬九郎 信州伊那宮島酒店 大吟醸 北安曇郡池田町大雪渓酒造 夜明け前 辰野町小野酒造 岩波 当地の岩波酒造
大して飲むわけでもないけれど、美しいラベルをみていると心が暖かくなる。
ことによると花見の酒もこれで間に合うかもしれない。
カクタス
年が押し詰まるころ深夜になると自警団がハンドベルを鳴らしながら各戸に回ってくる。
終戦後しばらくの間、年の瀬になるともの取りが頻発し、主として食べ物が狙われたらしい。
牛を一頭盗まれたという話も聞いたし、治安も怪しかった。
夜 炬燵にもぐりこんで聞く夜警団のベルの音に安堵して眠りに落ちた。
零下5.7℃ 街灯の灯りがまだ残っている。
吾らの暮す集落は見るからに寒村である。
まわりの山林、竹林が少しづつ住宅地を侵略していることが良く判る。
この集落の住民は理屈屋で、偏屈揃いだと他の集落の人が云う。
うっそうとし茂る木々を綺麗に切り倒おすことができたら、閉塞した心が開かれるかもしれない。