駆け抜けた鹿の腹部跡
鹿の食害がこれほど問題にならなかった頃、大雪が続いた冬があった。
その時美ヶ原高原の麓の谷間で、餓死した数十頭の日本鹿が発見され、積雪に弱い鹿の生態が明らかになった。
除雪が終わって一段落した午後、鹿の安否が気がかりでスノーシューをつけて山に向かった。
100メートルも進まないうちに、畑に続く竹藪から1頭の鹿が現れた、雪に阻まれて動作は鈍く数歩動いては立ち止まる。
後部の白い斑紋が大きく見えた、慌ててカメラを取り出したが間に合わなかった。
するとまた1頭 前の鹿のあしあとを辿って素早く土手の影に消えた。そしてさらに3頭目が同じ道を駆け抜けて行った。
3回のチャンスを棒に振った。ファインンダーを覗くより先に、まずレンズを向けてシャッターを切る動作ができなくてはならない。
迅速な行動ができない者に野生動物は撮影できないことを思い知らされた。
さらに雪を踏みしめ山道を進むと、小さな流れの対岸から鹿の鋭い警戒音が聞こえた。
カメラを構えたが姿は見えない。しばらくして林の斜面を登る2頭の鹿が見えた、しかし木立が邪魔でシャッターが押せない。
躊躇してる間に鹿は尾根の向こう側に消えた。またしても失敗。
雪原から竹やぶに続く鹿の腹跡 数日前のものと思われる
鹿を撃ち殺し、罠で捕殺する行為が害虫をひねり潰すように普通に行われている。
もし鹿が絶滅危惧種だったらどうだろう、鹿を餓死から救うために自衛隊のヘリが飛んだかも知れない。