職場の芝を手入れしていて見つけたのが,クヌギの葉に付いたヤママユ(別名テンサン。漢字表記は山繭,天蚕)の繭。古いので元の緑色がすっかり褪せて,褐色になっていました。この葉は裏手にある木から風に飛ばされてやって来たものでしょう。
せっかく出合った繭なので,きちんと記録を残すつもりで写真に収めました。それと併せて,ヤママユのことについて調べることにしました。たまたま詳しい資料にお目にかかれ,情報がたくさん入手できました。。それについても触れながら,写真で見ていくことにします。
クヌギの葉に繭が接着されています。長径は5cm近く。繭の様子から,複数の葉に付いていたと思われます。向かって右側に,成虫が出て行った穴が残されています。
繭の中を観察しました。下写真は,上の写真の繭を横に切り開き左右を入れ替えて写したものです。黒褐色の大きな殻が入っています。左下に触覚が見えます。繭をハサミで切るとき,感触で絹糸が密に詰まっていることがよくわかりました。まるで紙です。
上写真の左端の糸だけを撮ったのが下の写真。これだけの糸を吐き出す労力は大したものです。
繭の表面を撮ってみました。なんと緻密なことでしょう。 呼吸で使う空気が出入りできるものの,気温や湿気といった自然条件の影響を最小限にとどめるのに効果がある筈です。
内側から見るとどうでしょうか。外よりもつるつる感があって紙状になっていますが,絹糸がぎゅうぎゅうに並んでいることには変わりありません。
繭一個(一粒)を作るのに使われている糸の長さは600~700mほどとか(家蚕(カサン)は1200~1500m)。 繭質がたいへんよいので,野蚕として今でも人工飼育されている地方(長野県が有名)があるといいます。それによって生産される糸を“天蚕糸”と呼んでいるそうです。ちなみに,クワの葉を餌として飼う一般的な蚕が出す糸は“家蚕糸”です。以下,天蚕糸の特質を列挙しておきます。
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光沢が優美。
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断面は扁平な三角形(家蚕は円に近い三角形)。
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太くて,伸度は40%と大(家蚕は2%)。
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これを材料にして作られた織物は丈夫(皺にならない,暖かい,手触りがよい)。
この特質を生かして家蚕糸に混織すると,衣料としての質がさらに向上するということです。それで,ネクタイ・財布・インテリアなどの素材として使われていると書かれています。
今回は触れませんが,外観も性質も食性もことごとく違っています。このことについてはいずれ機会を見つけて書くことにしましょう。
接写の世界からは,いろんな情報が次々と手にできます。好奇心をはたらかせてモノを見ていくって大事なことだナアと感じます。