自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ヒラタアブの幼虫は大食漢

2013-03-25 | 昆虫

ほんとうに惜しいことに,空き家になった隣家の片隅で観察継続中だったホトケノザ株が処分されてしまいました。なぜか,誰がしたのか,まったくわかりません。その株が空き地に無惨に放置されています。

「これでは産卵したヒラタアブは災難だろう」と思い,いくつかの茎を調べました。すると,卵が1個葉に付いていました。それを採集して水を入れた容器に差しておくことにしました。

その翌朝のこと。卵がどうなっているか探しました。しかし見つかりません。「はて,おかしいな」と思いつつ,もっとよく探していくと,なんと幼虫が見つかったのです。体長はせいぜい3mmといったところでしょう。背中に褐色の鈍い模様が付いています。これははっきりヒラタアブの幼虫の特徴を示しています。

ところが,もう一度よくよく確かめていくと卵があったのです。ということは,幼虫は別の卵から既に孵っていた個体だったことになります。一つの茎に卵と幼虫を見たわけです。これは幸運!

しばらくしてから見てみると,アブラムシを捕らえて口にしていました。初めて見る光景に,わたしは固唾を呑んで見守りました。それで写真で記録しておくことにしました。

時折頭をもたげて,獲物をグウッと持ち上げるようにしています。からだの位置は動かず,上半身だけが活発です。 アブラムシは降参しているようで,ほとんど動きはありません。近くにいるアブラムシはまったく無頓着です。知らぬが仏といった感じなのでしょうか。なお,以下三枚の写真は葉の裏を上向きにして撮ったものです。本来なら,天地が逆になっています。

じっと見ていると,アブラムシのからだに丸い玉状のものが付いているのが目に止まりました。明らかに体液だとわかります。こうして一つのいのちがヒラタアブのいのちを支えるために,静かに消えて行ったのです。 

食べ終わってしばらくすると,もう次のアブラムシをくわえていました。今度は黒っぽい体色をしたアブラムシです。こんなに次々と食べるとは! 大食漢を象徴するような食べぶりです。アブラムシは慌てて逃げる素振りはちっともありません。ヒラタアブの幼虫のからだの上を平気で歩いています。そんな環境で暮らしていると,幼虫はいくらでも獲物を口にできます。 

アブラムシはどんどん子どもを産みます。ヒラタアブはアブラムシの存在を本能的に悟り,その傍らに産卵します。二つの昆虫のかかわりだけにとどまらず,そこにテントウムシやらアリやらが加わって,いのち相互の関係が多様に膨らんでいきます。これがホトケノザで進行しているドラマなのです。