自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ツマグロキンバエのこと

2013-11-21 | 昆虫

庭の白菊でいちばん目立つ昆虫は,なんといってもツマグロキンバエです。わんさといます。縞模様のある複眼を一度見れば,もう忘れられないでしょう。よく見ると,個眼が観察できます。それがこの昆虫の特性でしょうか。

下写真はオスです。複眼が頭をすっぽり覆うように配置されていて,左右がくっ付いています。そして,その間に単眼が三つ見えます。眼でしっかり見て,触覚で大好物のありかを匂って,ひたすら舐めとります。 

 

時には,脚をからだをきれいにする道具に使ったり。 

 

慎重に写せば,ちっとも警戒心が現れません。口から液体を出して,口吻やら脚やらを清潔にしている姿も見えました。液体は光を反射して青く写っています。 

 

メスはオスよりからだが一回り小さな感じです。複眼が離れているので,メスとはっきりわかります。

じっと見ていると,同じ花の上をじつに丹念に動いて食餌行動に熱中していました。あるとき,口から水滴が出てきたのには,すっかり驚きました。その水滴が丸くなって,今にも落ちそうになりましたが,また口内に戻っていきました。 

 

そうそう,もう一つ驚いたことがありました。『ハナバエのからだ』 (11月18日付け記事)中のおしまいの写真に写っている,肛門からの排泄物をツマグロキンバエもそっくり同じに出したのです。それも数回。その一滴が,上写真に写っています。前脚の先近くに,透明感のある水滴がそれです。本記事の二枚目の写真にも,二滴写っているのがおわかりかと思います。

観察は簡単に済ませないことです。じっくり見つめることが肝要かと思われます。 

 


ジャガイモの真正種子と,その周辺の話(1)

2013-11-21 | 随想

わたしが試みているジャガイモ種子の発芽実験のことで,こんな話をしてくださった方があります。

「それは確かにおもしろい試みですが,ジャガイモのでき方についてまったく知らない人が多いのではないでしょうか。都会育ちで,野菜作りに縁遠い人なら,とくにそういう傾向が強いと思います。そうした人がこの記事を読んでもピンと来ないかも,ですよ。」

そういえば,直接見聞きしたことがなければ,わからないのは当然だなと思い浮かぶ節があります。子どもにニワトリやアリの絵を描かせ何本の足を描くか見てみる,おとなでも子どもでもよいのでパイナップルの生っている風景を想像して絵に描いてもらう(下写真は知人Eさんが石垣島で撮影),ニワトリの卵が生産される風景を想像して話してもらう,スイカやトマトが生っている様子を想像してもらう,……,そういう試みをすると結果はじつにおもしろいものになります。

 

あるとき,小学5年生を対象にしてパイナップルの生っている想像図を描いてもらったことがあります。ほんとうにびっくりするほどユニークなものが続々登場しました。木の枝からたわわに実った実がぶら下がっている,蔓が伸びてあちこちに実が付いているなんていう想像図も出てきました。とても印象深かったので,その結果をある雑誌に寄稿したことがあるほどです。

またあるとき,一人の女性校長がこんな話をしてくださいました。「担任をしているときでした。野菜を栽培したことがなかったので,カボチャが蔓にできるなんて想像もしていなかった。てっきり,木の実のようにぶら下がってできると思っていた。教える者として,いろんな経験を重ねていないと恥ずかしいですねえ」と,つくづく。

子どもも,おとなも,学ぶ機会,思い込みを修正する機会がなければ,あいまいなままの知識を持ち続けるほかありません。ですから,そもそもジャガイモのでき方について知らない,あるいは関心がない人に,わたしがいくらジャガイモの花やら種子やらについて,また花と実のつながりについて伝えようとしても理解が進まなくったって,それはそれで止むを得ないのかもしれません。人はそれぞれに自分の関心にもとづいて生きているわけですから。

そう割り切ったとしても,ジャガイモは人類の食糧としてとても重要なもののひとつです。それで,種のことも含め,今よりすこしは関心を向けていただければ,わたしとしてはうれしいですね。それに「知るはたのしみなり」というぐらいですから。「アッ,ソウカ!」「ソウダッタノカ!」という程度であれ,知を得るのはいいことでもあります。

というわけで,数回にわたってジャガイモの種子のことや,それにまつわる周辺話について書いてみようと思います。