自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

襲われたトガリハチガタハバチの幼虫

2016-05-11 | 生物

サルトリイバラはルリタテハの幼虫の食草としてよく知られています。もちろん,単独でこの葉を食べているわけではなく,競合する相手がいます。競合するといっても,葉の数はたっぷりあるので,適当に棲み分けているって感じなのですが。

そんな相手の一つがトガリハチガタハバチの幼虫です。この幼虫は群れをつくって葉を見事なまでに食べていきます。群れを見ると,「こりゃ,なんだー!」と思わず叫びたくなる人もいるでしょう。


食痕を見ると,葉の端から丁寧に食べています。並んでなかよく食べるのですから,当然です。下側に葉には小さな糞がぱらぱら載っています。食痕と糞とでその存在がわかります。

わたしがこの日に見た幼虫は体長が10mm足らずでした。からだにはまだ透明感が残っていて,ひ弱そうな感じがしました。

この直後,スゴイ場面を見ることになりました。別の葉の表面にカメムシがいました。アカサシガメのようです。口吻の先にものが引っ掛かっているように見えたので,よく観察してみました。すると,どうやらトガリハチガタハバチの幼虫らしいのです。それも,ただ吻が引っ掛かっているのではなく,突き刺さっている!


それで,写真に収めて調べることに。結果わかったのは,幼虫のからだから体液がなくなって萎んでしまっていること,体液はサシガメに吸い取られてしまったと想像できること,でした。

こんなに小さな幼虫にも,こんなに大きな天敵がいるのです。クモ程度ならありふれているのでよくわかりますが,カメムシとは! 自然界の厳しい掟です。

 


ギフチョウ,孵化!(続々)

2016-05-11 | 昆虫

ギフチョウの孵化場面を見たいと思うとき,その機会を見逃すことはほとんどないでしょう。なにしろ,外から見る卵は変化がくっきりしていて,孵化直前には中が透き通って見えかけるからです。おまけに,卵の数が多いので注意していさえすれば必ず観察できます。

すでに生まれた若齢幼虫が殻の近くにいれば,それに続く幼虫がいます。きょうだい同士なので当たり前。


手前の卵が孵化したと思うと,ほんのわずかに遅れて向こう側の卵から幼虫がからだを出しました。 

 
誕生した幼虫たちはふしぎなほどに身を寄せ合います。単独でいる姿を見るのは珍しいほどです。なかまであることをどんなふうに感知しているのでしょうか。観察する者にふしぎを誘います。

 
こんなたくさん孵化するということは,それだけ淘汰されていく率が高いことを物語っています。しかし,生まれたばかりですぐにいのちを失う例は少ないでしょう。自然界ではその昔,今の乱開発時代と異なって,それなりにカンアオイがたくさん生えていたにちがいありません。たくさんの食草がたくさんの幼虫のいのちを支えていたのです。

わたしたちが仮に雑木林でカンアオイを見かけたとしても,それはかつての自然の姿ではありません。ギフチョウが飛ばなくなってしまった自然です。幼虫がいなくなった地域の自然です。

そこから,葉を食草として採集してきて,幼虫を飼育・保護するのはじつに尊いことなのですが,じつに悲しい現実でもあります。人工飼育して生まれたチョウを見るのは,大自然のあるべき姿を考える材料にはなりえても,箱庭的自然の観察にすぎません。一度自然を失えば取り返しのつかない結果を招く好例です。

たくさんの幼虫と実際の自然を見て,人間の愚かさを思います。