メスグロヒョウモンが蛹化したのが5月12日(木)のこと。以来,羽化をたのしみに待ち続けました。2週間が経って,ようやく羽化のときを迎えました。なにしろ初めて観察する種です。とくべつな関心を寄せてきただけに,わくわく感が膨らみます。
5月26日(木)。深夜。蛹の表皮を通して,中がよく見えます。翅の紋様からはオスであることがわかります。 それにしても,表皮のツヤの強さには驚いてしまいます。
5月27日(金)。早朝。成虫のからだがぎゅうぎゅうになって,透明袋に詰め込まれている感じがします。いよいよ羽化の瞬間を迎えたようです。
しかし,じっとそこにいるわけにはいかず,その場を離れました。30分後に見ると,もう誕生していました。見逃したー! 瞬間を見ることは叶いませんでしたが,無事に生まれたのです。よかった,よかった。すでに翅はすっかり拡がっていました。ちょうど,口吻を伸縮させているところでした。
時間が経って手に載せました。後翅の裏模様がよくわかります。すてきなモデルです。
床に置くと,翅を拡げました。メスグロヒョウモンのオスならではの紋様が確認できます。
野に放つと,元気に舞い上がっていきました。
終齢幼虫との出合いから,その後の変化がよくわかりました。昆虫との付き合いでは,「丁寧に」「一つひとつの機会をたいせつに」という原点がとても大事です。このことを改めて感じる生態観察事例となりました。
幼虫が成虫に大変化を遂げる間にある蛹期間。このチョウの場合は2週間のうちに,組織の組み換え,大改造が行われ,幼虫期とはまったく異なった機能とかたちを整えました。移行期の蛹期間中,体内はドロドロ状態といってもよい,想像を遥かに超えた事態が進行してきたのです。
それを思うと,一層感慨深いものがあります。
いのちの未知を紐解くのはおもしろいものです。