わたしの勤務するミュージアムは地球と宇宙をテーマとした施設です。来館者には地球と宇宙のあれこれに触れながら,ワンダーな気持ちになっていただきたいと願っています。そのために,いろんな知恵を絞って展示や解説の工夫をしたり,ミュージアムの活用方法を考えたりしているところです。それをわたしたちからの仕掛けといっていいでしょう。
地球に関しては,地球のかたちそのものに目を向けて展示を工夫しているところです。これはわたしの提案です。本シリーズで精力的に取り上げている立体地球づくりがそれです。立体のかたち,大きさをはじめ,アート作品にまで広げて,仕掛けを展開中です。
館内のあちこちに配置した立体地球は20個を超すはず。天井には,もっとも簡単な工作物モビールが釣り下がっています。あっちに。
こっちに。
単独で並べている錐地球もあります。
先頃,こんなことがありました。
スタッフが来て「女のお子さんが,立体地球がほしいといっていらっしゃるのですが,どうしましょうか」と聞きました。「ほしいなら,あげてください。お出会いしましょう」といいながら,出会いに行きました。わたしはそういう希望者が出てくることを想定していましたが,子どもがほしいとはおもしろい話だと感じ,事情を聞きたくなったのでした。
その子は近隣市に住む小学3年生の子でした。「好きなものをプレゼントするので,選んで」と伝えると,迷うことなく一つを手にしました。それは陸と海をそれぞれ緑,青に着色したものでした。「わたしはこれがいちばん好き!」といいながらニコニコ顔をしていました。
「なぜ この地球がほしくなったの?」と尋ねました。わたしがいちばん知りたい点でした。すると,この子からは学年としては意外にも驚くほどすてきなことばが出てきたのでした。それは「本格的な地球だからです」とことばでした。ただのおもちゃ風でない,ほんまものを見たという満足感を感じているのでしょう。こんな工作物がこんなことばを引き出すことになろうとは! まことに光栄です。実際,わたしのつくったこの地球は丹念に展開図を描いて手づくりしたものなのです。
「あなたがいるところは,この地球のどこかな」と聞くと,しばらく経ってから「ここ!」と返ってきました。その反応を褒めながら,「大事に大事にしてくださいね」と伝えたのでした。
魅力的な仕掛けはこころをくすぐり,ワンダーな気持ちを引き出します。これからも仕掛けづくりをたのしみながら,こういう出会いを,わたしは大事に大事にしたいと願っています。