自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

モンシロチョウ,孵化の瞬間

2016-05-22 | 昆虫

モンシロチョウは,わたしにとってあまりに身近で,ありふれた生きものなので,これまでくわしく記録することはありませんでした。学校現場にいた当時も,生物教材として何度もかかわってきていたので,目に焼き付けるだけにとどまっていました。

最近,ここまで身近なのに画像を残していないのはどうも気になるなあと感じかけました。それで,孵化の瞬間だけでも写真に収めておこうと思い,撮ったのが以下の写真です。なお,卵はわたしが耕作している畑で採取したものです。卵はダイコンの葉に付いています。

5月22日(日)。午前0時25分。卵の高さは0.8mm。色を見ると,濃淡の様子から孵化が近づいていることが窺えました。 

 
7時02分。上部は透明,下部に濃い褐色部分が見えます。確かに孵化が近づいているようです。まちがいなく,幼虫誕生の兆候です。

 
10時13分。右の卵を見ると,中から幼虫が殻を食べて穴を開けていました。大急ぎで撮影を開始。

 
10時16分。頭がすっぽり出ました。複眼が確認できます。

 
10時17分。出始めた幼虫のからだは透き通った感じがします。初々しいなあという印象です。

 
10時19分。ほぼ出終わりました。殻に穴を開けかけてから10分も経っていません。じつに滑らかな誕生,というか。体長は1.1mm。


出てしまうと,からだの向きを180度変えて卵殻に取り付きました。もちろん,これを食するためです。 

 
このあと,間もなく左の卵でも幼虫が誕生。2つの卵は同じチョウが同時に産み付けたきょうだいだったようです。 

 


メスグロヒョウモン,前蛹へ,蛹へ(後)

2016-05-21 | 昆虫

5月12日(木)。あまりにも突然に始まった蛹化。

午前10時23分。頭部から胸にかけて脱皮が進んでいきます。


10時25分。脱皮が半分終わりました。皮はどんどん上方向に送られていきます。 

 
10時27分。皮が完全に尾端に送られ,個体はなんとかこれを落とそうとくねくねとからだを動かします。 


10時29分。皮が落ちて,からだの向きが180度入れ替わりました。これは垂直な支柱に付いているために,たまたまそうなったのです。 

 
11時16分。脱皮完了後45分が経って,かたちがかなり変わってきました。からだの向きがまた入れ替わっています。

 
10時間後。ずいぶんかたちが整ってきました。このあと,突起はこのチョウ類として特有の金属光沢を見せ始めました。

 

 
次の大変化は羽化。体内では劇的な組織組み換え作業が進んでいきます。大変化の瞬間を見届けられたらサイコーなのですが。 

 


野生メダカ捕りで感じた環境変化

2016-05-20 | 生物

ミュージアムのコーナーに郷土の淡水魚を飼育展示しています。人気があって,餌やり体験を子どもたちにしてもらっているほどです。

その水槽でメダカを飼っているのですが,産卵期を迎えたにもかかわらず,オスが数匹,メスが1匹という有様です。これでは殖やすことができません。それで飼育担当者が悩みを抱えていました。というのは,メダカがほしくっても野生のメダカはほとんど見かけなくなっており,近くで簡単に捕獲できるポイントがないからです。

相談を受けて「じゃ,探してみるか」と伝えたものの,すぐになんとかできるといった話でもありません。

後日,わたしの知る穴場にで出かけてみました。そこはミュージアムからかなり離れたところです。

結局そこでほしいだけの数を捕ることはできましたが,そこもまたあちこちの自然と同様これまでの環境とはずいぶん違ってきていました。それに見合うかのように,メダカが激減していたのです。


かつては水草が浮いているといったのどかな湿地・田園地帯だったところが,キショウブが生い茂る風景に変わり果てていました。水質成分が変わって,窒素分が着実に増えているのでしょうか。ビニルまでもが浮いていて。なんだか水の濁り具合が気になりました。田植えの終わった水面を照り付ける日差し,苗をなでて吹き渡る緑風だけが昔のままでしょうか。


環境の変化は,メダカを生物指標にするだけでも歴然としていました。さらに,以前はカワセミが棲息していたのに,今回姿を見かけることができませんでした。

ミュージアムの水槽にはなんとか必要な数を補充できるものの,自然環境を思いつつ複雑な気持ちで帰路についた次第です。

 


ナナフシの成長(3)

2016-05-19 | 昆虫

5月11日(水)。 大きいもので体長は50mm足らず,小さいもので40mmといったところ。

飼育ケースの底には糞がどんどんたまっていきます。なのに,これまで食餌風景は見たことなし。いつか目撃したいと思っていたら,今日,その場面を見ることができました。バリバリと音が聞こえて来そうな勢いで食べていました。食べかけると夢中になっているかのよう。顕微鏡モードで撮ったため,鮮明さには欠けます。


自分に近い方まで食べてくると,また口を先の方に伸ばし,そうして少しずつまた手前に近づいていきます。「これはスゴイ!」。ひととき,固唾を呑んで見入りました。 

 
5月17日(火)。頭部の前方から撮りました。この写真だけを見ても,たいていは「何の顔かな」と戸惑うのではないでしょうか・

 
ちょうど仰向けになったので,急いで撮りました。ブリッジのような体形をして,しばらくそのままの姿勢だったのでびっくり。これも,擬態の延長として解釈できそうです。

 
今日の時点で体長は50mmです。採集した頃と比べると,「よくもマア,こんなに大きくなって!」なんてすっかり驚いてしまいます。

 


ツマグロヒョウモン,卵から孵化へ(2)

2016-05-18 | ツマグロヒョウモン

5月17日(火)。午前6時。昨夕,孵化間近と見た卵を見ると,なんとたった今幼虫が出終えたばかり! あと30分早く見ていたら,孵化の始終を見届けることができたのに。惜しい,惜しい。でも,そんな経験は度々してきたので,別の個体に期待しておきます。

とりあえず,そのときの状況をすこしばかり。

ルーペで確認すると,すでに孵化後。卵殻から出た直後で,外向きの格好でした。


見ているうちに,反転。そうして殻を食べ始めました。誕生後初めての食餌です。これまでにお世話になっていた殻をきちんと栄養にしていきます。習性とはいえ,こういう風景を目の当たりにすると律義さということばを思い浮かべます。月並みなことばですが,母への感謝といってもよさそうな風景なのです。


とにかく一心に(と思えるような勢いで)口にします。幼虫が摂り入れる動物質タンパク源としては,最初にして最後の栄養剤になります。


別の卵を見ると,孵化が近づいている模様。


これを職場に持ち込んで,スタッフと観察しました。しかし,この日は残念ながら孵化に至りませんでした。

5月18日(水)。仕事は休み。朝見ても変化なし。「おかしいな」と感じながら,畑仕事に出かけました。ところが昼前に帰ってみると,なんと孵化して卵殻の脇にちょこんとしていました。「あー,またもやられたかー!」。もうこれは完全な肩透かし!


今回の観察から学べるのは,誕生の瞬間は厳密にはいつ,どのようにやって来るかわからないという点です。「一度あることは二度ある」といいます。今回もまた,「止むを得ないか」と諦めつつ,「よーし,今度こそは!」と気持ちを新たにしています。じつのところ,取り上げている例以外に産付場面を二度確認したのです。いずれも卵が産み付けられています。タイミングのよさに感謝しつつ,これらの変化を追ってみます。

それにしても,いのちの実態は簡単には想像できないものです。

 


ベニシジミの幼虫にアリが!

2016-05-17 | ベニシジミ

ベニシジミとヤマトシジミは,おなじみのシジミチョウです。おなじみというほどに,普段から見かけます。

両者の幼虫は姿は似通っています。シジミチョウらしいというか,ワラジムシに似た格好をしています。生態は,食草をはじめとしていろいろ違っています。

その1つが蜜腺の有無です。幼虫が持つ蜜腺から甘露成分を分泌して,アリを招き,そのことで天敵から身を守っているのだとか。共生関係にあることを物語っています。

このことはヤマトシジミを観察していると,よくわかります。蜜を分泌するあたりに突起が2本あります。それが,出たり入ったり。とても特徴的な動きなので,一度見ると忘れられないでしょう。そこにアリが訪れるのです。

一方,ベニシジミには蜜腺はありません。したがって,アリとの関係はないということになります。

研究者の次の引用文(赤字)からも明らかです。

  シジミチョウであるベニシジミには蜜腺が無く,アリはベニシジミ幼虫に出会っても興味を示しません。

しかしこの程,妙な光景を見ました。ベニシジミの幼虫にアリがわんさか。これをどう解釈してよいか,迷います。ヤマトシジミの幼虫と勘違いしているのでしょうか。すこしはお気に入りの分泌物があるのでしょうか。それとも,獲物として捕獲しようとしているのでしょうか。

 

 
アリは,ちっとも立ちそろうとする気配を見せません。わたしが指をそっと触れてもそうなのです。

 
翌朝,同じようにアリたちが群がっていました。幼虫が残した食痕辺りにも興味がありそうです。


翌々日。アリの数こそ減りましたが,いました。やっぱりなにか訳があって訪れているように思えます。横にいる若齢幼虫にも関心がありそう。 

 
自然の解釈は,やはり一筋縄ではいかないようです。通り一遍の見方だけでは,どうも多様性を解釈し切れそうにありません。 

 


ツマグロヒョウモン,卵から孵化へ(1)

2016-05-16 | ツマグロヒョウモン

我が家の庭,また脇の道で,今日(5月16日)現在で確認できているツマグロヒョウモンの卵は3個。それぞれに少しずつ産付時期がずれているようで,見た様子にもズレが感じられます。

5月13日(金)。葉の表に産み付けられた卵は,まだ純白に近いといってよいでしょう。直径は0.8mm。 

 
5月16日(月)。葉裏の卵をひっくり返して観察してみると……。わずかながら褐色がかって来ていて,上部に茶色っぽい色が見えます。頭部ができているのでしょう。


葉柄に付いた別の卵では,上部がはっきりと黒っぽくなっています。 

 
トリミングすると,さらによくわかります。毛らしきものまで見えます。順調な変化で,いよいよ孵化間近という感じがします。

 
さて,明朝はどうなっているでしょうか。こんなふうに思う気持ちが,わたしの知的好奇心をくすぐり続けます。変化を見届けるというのはおもしろいものです。

 


カンアオイ,人手で被害

2016-05-16 | 生物

先日の記事で,ミュージアムスタッフがカンアオイの自生地に行き,ギフチョウの幼虫が葉裏にいるのを発見したという話題を取り上げました。

わたしもその雰囲気を自分の目で確認したくって,訪れました。ところが意外や意外。聞いていた箇所に生えているはずのカンアオイが一様に他の草とともに刈り払われていたのです。棲息環境を大事にするという点からすると,まったく悲惨な光景に変貌し果てていました。


理由は簡単です。横を走る用水路の維持管理にために,年中行事として草刈りが行われた結果です。作業にはまったく非はありません。作業をした人は,足元にそんな意味のある幼虫が棲んでいるなんて想像もできなかったでしょう。

しかし,当の幼虫から見れば,一方的な被害に遭ったわけです。

わたしは,丹念に確認しました。カンアオイの株はいくつか残っていましたが,幼虫はまったく見当たりませんでした。残念な話です。


残った株に,幼虫が歩いて到達すれば,何匹かは生き残れるでしょう。ぜひぜひそうあってほしいものです。


それにしても,貴重な野生生物をどうやって保護するか,考えさせられるひとときになりました。

 

 


溝で見たコオイムシ

2016-05-15 | 昆虫

5月15日(日)。快晴。午前中は集落出役で,農業用水路の清掃作業に出ました。6月に入ると田植えの季節。それに備えた溝掃除というわけです。イノシシが土手を掘って大量の土を溝に落としているので,力のいる仕事になりました。


こういう作業のときも,もちろん腰にはコンデジを携行しています。どんな特ダネに出合うかわかりませんから。

やっぱり思ったとおり! 水がわずかに溜まって土が泥状態になっているところで対面したのコオイムシです。小型のタガメを連想しました。体長は20mmというところ。

合わせて2匹見ることになりました。はじめはこれです。鍬で土を寄せたとき,その勢いで土の上に出て来たのです。翅は褐色。指を触れると,警戒して静止しました。


数分後にもう一度,コオイムシに出合いました。今度は,背中に卵をおんぶしていました。この姿からオスとわかります。コオイムシは,メスがオスの背中に産み付け,オスは卵を保護するのです。池や湿地にいるということですが,こういうところにもいるとはおもしろいなあと思いました。成虫はどこからか飛来して,ここに棲み付いたのでしょう。


手のひらに載せると,じっとしていました。卵を数えると,40個程も。

 

こういう事実が見えてくると,作業の疲れが和らぎます。やっぱり,わたしにはコンデジの携行が欠かせません。 

 

【追記】わたしのうっかりミスで,はじめはマメゲンゴロウとばかり思い込んでいました。しかし,そうではなくコオイムシです。文中の文言も含め訂正してお詫び申し上げます。(5月16日)

 


ルリタテハ,5齢幼虫の夕暮れ

2016-05-14 | ルリタテハ

5月14日(土)。快晴。

夕暮れ時。勤務を終えて帰宅途中,いつもの山裾にルリタテハの幼虫の様子を見に立ち寄りました。そこでは,終齢幼虫が葉を1枚食べ尽くしてじっとしていました。 「無事だったんだぁ」。


近寄って撮りました。まるまると太っているのがわかります。もう蛹になりそうな頃です。 

 
接写モードで,背景の景色を無理やり入れて撮りました。もちろん,背景など具体的にわかろうはずがありません。以上の写真はコンデジを使用して撮影したものです。


上写真と対比しようと思い,今度は同じ場面を虫の目レンズを付けた一眼レフで撮りました。レンズ面と幼虫との距離は1,2cmといったところです。フラッシュを使っています。背景の様子,というか,環境がなんとなくおわかりいただけるかと思います。これがこのレンズの最大のよさです。
 


撮影している間にも,どんどん暗くなってきました。

幼虫は間もなく,蛹化するのに叶った場所を求めて移動します。そこはサルトリイバラでしょうか,他の場所でしょうか。注目に値します。