メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

荒川洋治「文庫の読書」

2023-07-14 10:00:56 | 本と雑誌
文庫の読書: 荒川洋治 著  中公文庫(2023年)
 
先日たまたま昼食で入ったビルにあった大きな書店でたくさん平積みになっている文庫本の中、おやっと眼についた。
荒川洋治はほぼ同世代で、以前ラジオ番組の週一(?)コラムで、本のことを中心にしゃべっていた記憶がある。なかなかおもしろく、なるほどを思うことも多かった。
 
この本は詩人でありたいへんな読書家である荒川が、新聞の連載、文庫の解説などで書いたものを集めていて、多くは読んだことがなく著者・タイトルも初めてというものが並んでいるが、紹介された本の内容紹介・指摘は本質的なところをうまく書いていて、この行数でよくもその本が好きになりそう、という紹介である。
 
明治から大正、昭和にかけては私小説の作家たち、あまりめぐまれなかった人たちも多く、こういう世界に批判的な文学論もあってなじんでいなかったが、荒川の手にかかると作者の眼とその表現がきわめて優れたものだということが理解される。
 
さてひまもあるから何を読もうかといってもなかなか、という状態だったが、少し改善されるかもしれない。ただ、リアルな本屋で出ている文庫本がほとんど並べているところがあればいいのだが、なかなか。入手はネットで出来るが、文字の大きさなど確認したいこともあるので。
 
一つ気がついたことで、今や文庫の発行元、種類は一昔とくらべるとたいへんなものだが、本書に取り上げられているものに、光文社古典新訳文庫が多い。この数年、知人から紹介されたものも含め、この文庫は私もいくつか読んでいる。出版社の企画として評価していいものだろう。
 
文庫本の紹介が連載であると、なかなか便利でもあり楽しい。以前週刊文春の読書欄に坪内祐三がコーナーを持っていて、荒川よりはもう少し娯楽むきなものもあったが、この人もかなりつっこんだもの好きだなあと思いながら愛読し、入手して読んだ文庫もかなりあった。
残念なことに早逝してしまった。

 

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