本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

アポリア

2017-10-10 21:31:54 | 住職の活動日記

「アポリア」 難しい言葉ですが

解決できない難問、という意味です。

もともとは「行き詰まり」ということが

語源のようです。

 

仏教の中心課題に

「自利利他円満」

ということがあります。

人も利益し、自分も利益すると

それが円満であると、

なるほど、理屈ではそうですが

いざ、現実問題となると

難しいもので

なかなか実現不可能ということです

 

最近はツイッターというのでしょうか

小鳥のさえずり、ということが

もともとの意味ですが

このつぶやきが世界を動かしている

たった140文字の言葉で

世界が揺り動いている。

 

この世界はすっきりと割り切れる

ものではありません。

解決できない問題を抱えています

それを無理やり

スッキリしようとすると

何とかファーストといって

自国さえよければいいと

自分中心の世界を描いてしまいます

 

経典を読んでいくと

唯識だの空だの般若だのという

ことがでてきます。

なぜこのような難しい内容を

語っているのだろう、と

それはやはり、

解決できない問題を解決する

ためなのです。

 

解決できない問題だからと

止めてしまうわけにはいかない

であれば

自分の立っている立場を

検討しなければいけない

その自分の立場を考える

その方法が唯識とか般若という教学

がでてくるのです。

 

人をたすけようと思えば

自分を犠牲にせんならんし

自分をたすけようと思えば

人を犠牲にせんならんという

そういうところにいるのが

私たちの現実でしょう。

 

その問題を一刀両断に

切ってしまうのではなく、

その問題を抱えていくところに

菩薩という人間像が

見出されてくるのです。

解決できないからといって

問題を棄てるのでもなく

無理やり力で解決するでもなく

どうにもならない立場に立つ

 

そこに「アポリア」というか

問題を懐き続けていく

そういう心の粘り強さが

必要のように思います。

 

最近ではいろいろな場面で

横文字が使われますが、

そのもともとは仏教のようです

何気なく使っている言葉にも

インドの言葉は沢山浸透しています

檀那とか、それからいうと

「檀蜜さん」も外来語です。

 

それは玄奘三蔵も苦労したのです

どのように訳すか

どうにもこうにも訳せないもの

訳してしまうと意味が変わるもの

その言葉はあえてそのまま音写した

それが日本語に浸透したのです

 

好き好んで使うというより

一つの言葉でも

色々な言葉で考え直してみる

そのために外来語で見直す

そういうことも必要ではないかと

 

アポリア、という言葉も

今の現実を見るには

そして考えるには

面白い言葉かもしれません。

 

 

 

 

コメント
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