本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

大般若経を『転読』するということ

2023-05-20 21:28:05 | 住職の活動日記

なかなか面白い話でした

ここのところ

京都アスニーでは

色々の講座が開かれています

昨日も

「秀吉の妻・北政所、おねね」

という題で

ドラマでしか知らない

こういう人物が古文書により

新たなというか正確な人物像

が見えてきます。

 

今日の講座ですが

こういう専門的と思える題

少ないのではと

思っていたのですが

さすが京都たくさんの人が

拝聴されています

 

大般若経は詳しくは

大般若波羅蜜多経といいます

玄奘三蔵が翻訳したので

有名です

その量は六百巻もありますが

それをわずか3年10ヶ月で

翻訳しています

漢訳が完了するのは663年

最初に大般若会が修されたのは

神亀元年正月17日

(宮中に僧六百人を招き災異を

 を除くために読誦した)

とあります。

 

今ではこの大般若経も

折れ本になっていますが

最初の頃は巻子(巻物)です

それを一人が一巻を読むという

一日で終わらなかったことも

あるようです

それが11世紀ごろには

折れ本になり、今の経巻の

ようになっています

 

転読という語は

巻物の経巻を転がしながら

読んだところから

この言葉が生まれたようです

 

そこで転読作法の所ですが

先ズ諸衆入堂着座

次ニ導師登礼盤 …

と続くのですが

なにせ文化財の先生ですから

作法次第に堪能でない

思わず、こうですよ

といいたかったのですが

もうその立場に非ずです

 

でも面白いことに

こういう巻子による法要が

意外な所で残っています

お寺の宗派も色々ですが

一つの村落の宗教行事として

村というか町をあげての

神社も一緒になっての行事

として残っています

 

巻物ですから

お坊さんが広げて読むと

その後から檀家の方が

せっせと巻き戻しをしていく

というように

もうその村の人総出で

この行事が残っています

その途中で

檀家の方が住職から一巻を

受け取りそれを神社に供えに

行くという

 

お参りが終わると

村の境界の所にお札を立てて

廻るという

別な所では

そのお札が「虫おくり」に

なったり

この風習も、虫送りという

そういう虫を退治するという

のではなく、「おくり」

という表現も仏教的な香りが

するのです

 

もともとは宮中行事として

執り行われたものが

「大般若経会」という功徳が

全国的に広まって

それがその地その地の慣習と

結びついて

それぞれに発展してきた

それがもう宗教行事を超えて

民俗行事として

伝えられているということは

とても興味深いものでした

 

やはり文化財保護課の先生

福持昌之という方ですから

こういうことも

宗教行事ではなく

民俗行事として

伝えられていく

そこに残していく意味がある

ということです

 

宗教行事としての仏ではなく

五重塔も舎利塔ではなく

非常に重要な建造物として

本尊ではなく歴史的な

工芸品として見るという

そういう形でしか見ない

という先生にしても

ジレンマがあるようです

 

という先生も

この道に入ったのも

ふと訪れた薬師寺で

ご本尊のお見ぬぐいの手伝い

それが縁となって

今だに30年も続けておられる

ということです

 

物として見るのもさびしいし

かといって

あまりにもありがたいものと

みるのもどうかと

難しい問題です

本当は物の中に魂を見る

そこに本当の姿が

見えるのでしょう

仏師の方も

「木の中に仏を見た

私はそれを彫りだしただけ」

といっておられます

 

でも大般若の以外というか

昔の形を見れたのは

とてもよかったと思います。

 

 

 

 

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