富岡市へお仕事で通う機会を得て、何度か世界遺産登録を目指す富岡製糸場に足を運ぶことができました。
審査が厳しくなった世界遺産登録は、かなりハードルが高いもので、まだまだ現状を見る限り多くの課題を乗りこえていかなければならないと予想されますが、この機会に多くの人、モノ、お金が動くのでなんとか、良い方向に持って行ければと思います。
実のところ、私は世界遺産登録自体は、必ずしも良いこととは思っていません。
世界遺産に登録さえされれば、観光で地元が潤うかの幻想、何を伝えるべきなのか勘違いしたような事業に塗り固められるのは、なんとか避けたいものです。
しかし、そうした議論も含めて、自分たちの暮らす街をどのようにつくっていくのか、市民レベルで大きな議論の渦が巻き起こることは、とても良いことです。
地域の本屋がどのように生き残って行くのかも、まさにそうした課題のただ中でこそ展望が生まれてくるものと思います。
日本全国どこへ行っても瀕死状態ともいえる地域をどのように立て直すのかは、おそらく例外無く共通の課題であると思われますが、残念ながらハード中心の思考から抜け出した例は、極めて稀であるといえます。
予算がないから、人材がいないから、誇れるものがないから、ではなく
今あるもののなかにどれだけ魅力あるものがあるのか、それをどう発見し、表現して行くか、あるいは自分達の財産として磨き上げていくか、そんな運動を広げていけたらと思います。
まだ完成途上ですが、そんな魅力を本屋で発信するツールとしてスライドショーをつくってみました。
昨年、東北支援ツールとして遠野の原風景のスライドショーをつくりましたが、映像の評価にくらべて、他地域でのリアリティーにやや欠けるのか、身内の評価ばかりでいまひとつ広がりを見せませんでした。
そこで、今度はローカルの話題はローカルに徹するべきと、群馬向けの視点でまとめてみました。
まだ動画部分が三脚を使わないブレまくりの映像であったり、素材不足のためピンぼけ写真をそのままつかったりしてますが、徐々に撮り直して完成させる予定です。
安くなった32型テレビのサイズが調度、本屋の棚2段分なので、5万円相当の在庫を減らして、3万円程度の液晶画面の投資をする提案をしているのですが、まだまだ提案内容をブラッシュアップしていかなければなりません。
それは、コンサルの提案頼みの行政活動ではなく、今、街で暮らすひとり一人の実態に即し、言葉を聞き、時間がかかっても自分たちの力で一歩一歩をすすめる環境づくりをはじめていくことに他なりません。
そんなことをなんとか伝えられたらと思ってつくったもので、下手をすると世界遺産登録を真剣に目指している人からは文句を言われかねない内容です。
地元では、同じ近代産業遺産といえる足尾銅山の場合は、富岡製糸場以上に廃墟しか残っていないところですが、こちらの場合は、かつてそこで働いた人びと、その町で暮らした人々が実に多くのことを語り伝えています。本もたくさん刊行されています。
それに比べて富岡製糸場の場合は、製糸場の概要を伝える文献は豊富にありながらも、そこで働いた人びと、ともに暮らした町の人びとの語ったものがほとんど見当たりません。
製糸場に隣接した片倉北通りの写真をいくつも載せてますが、この廃れた光景が、そこに暮らす人びとの生活が、どれだけ変わるかこそに、世界遺産登録を目指す運動の真価が現れるものと思います。
楽しい作業が、これから始まります。