ヨット、乗馬、競馬、庶民的になってラグビーとテニス、フェンシングもそうか。
共通項はなにか。実は貴族スポーツというのがある。ラグビーは正確にはジェントリーとなるが、階層があるわけだ。ヨットや乗馬は維持費が凄い。ヨットは建造費から港の係留経費から補修費、そして維持管理のための人員がかかる。まあ元々帆船で言えば、高速艇だ。本来は通信用や駆逐艦的な仕事をする船であった。それをスポーツにするのは、歴史の重さだろう。貴族が軍艦を動かすには、ある意味必修科目だ。乗馬もその意味ではそうだ。
競馬はその上での更なる趣味であった。乗馬が出来る貴族が、自分の持ち馬を競わせる。ただその上には自分が乗っていないだけだ。だがその血統から飼育方法、作戦まで、一応はオーナーが差配する。
貴族階級とジェントリー層が作ったのはラグビーだった。ここには戦術シュミレーション的な物がある。ボールを運んでぶつかってと言う動きと、兵站線のようでもあり、重武装兵士と経騎兵の組み合わせでもあり、全員が重武装だったらどうなるのかというシュミレーションでもある。そのときその時で変幻自在の動きを要求するゲームだ。
最近マンガで、スクラムハーフがもしも走れる巨漢だったらというのがあった。ずいぶんラグビーの事を知っているなと思った物だ。スクラムハーフが小柄なのに意味はない。人が集まれば大きいのから小柄な人までいるわけで、その中でのポジション分けということだ。この多様性がラグビーの魅力と戦術性なのだが、これを無視出来れば巨漢スクラムハーフはあり得るわけで、オールブラックスだろうか。エイトとスクラムハーフが圧倒的メチャクチャ突破力があれば、ゲームの体勢は決まってしまう。
戦争で言えば、高速で連射出来て高速で移動できる戦車と装甲車がいたら、そりゃ怖い。
ありがたい事に世の中にはそんな人は滅多にいなし、そんなメチャクチャな人を集める事が難しい。
スポーツの側面として、そういった戦争と繋がるものがある。特に19世紀にルールが出来たスポーツにはその傾向がある。そう言ったスポーツはイギリス人が大体の所のルールの原型を作っている。これまた大英帝国の最盛期になになにが必要だったかと考えれば、これは必須科目です。
戦争だらけだったからです。
その中で、少し微妙なスポーツがありました。テニスです。騎士道に基づく球技と言うべきでしょうか、19世紀末に大流行します。騎士道と言えばフェンシングになるのですが、相手を傷付ける可能性があります。そこで接触しただけで判定が出来る今のシステムになったのですが、それではどこかもどかしさがあるわけです。
テニスが流行した理由は、0点をラブといったような表現でしょう。人が傷つかないように配慮しています。上流階級にはそれが受けたのでしょう。
体を程々に動かしつつ、コミュニケーションとしてボールとラケットがある世界でしょうか。それでいながらボールは刃であり、ラケットは盾でもあるわけです。
コミュニケーションでもあり戦いでもある。そうサーブと言う言葉は玉を提供しているのです。この辺りの謙虚さが、天皇陛下が好む理由でしょうか。
錦織圭が凄いのは、スポーツとしてのテニスではないという気がします。もちろん天才でアメリカ在住という経歴ですが、多分アジア人で初めて、そのテニスをしたのかと思います。
日本人が全米オープンで決勝に出たからと言って、アメリカで話題になるとは思えません。彼らが驚いているのは、多分人種差別的な物かもしれません。そして日本ってテニス人口が多い割には上位にいる選手がいないという不思議がありました。体格とか人種とかを疑われても仕方がない所もありますし、日本人もどこか納得していたわけです。
国内だけでいいや。数は少ないがレッスンプロの道もある。そう言った状況があったのではないのかと思います。
日本はこの貴族スポーツのうち、どうしても勝てないのは乗馬でしょうか。あとは大体いい線どころかかなりの結果を出しています。ラグビーも最近かなり良くなっています。とはいってもワールドカップ優勝候補に入るまでにはなっていません。
まあそうかと思っていたら、もっと凄い日本人がいました。国枝慎吾選手です。車いすテニスなのですが、動画を見る限りすさまじいものです。完璧に予測していますね、椅子の動かし方が完璧です。あり得ないほどの強さです。
グランドスラムを4回やっています。日本人初の車いすテニスプレーヤープロです。
すいません、今回の錦織圭で知りました。彼はバケモノです。
ただ彼は脊髄腫瘍で半身不随になったのですが、2010年以降、歩けるほどに(この場合は健常人の衰えたと言うレベルではないはず)なっているようだ。ここが問題になるだろう。ここまで圧倒的に強ければレギュレーションの変更もあり得るからだ。
逆説的に、そこそこ強い日本のテニスですが、底辺の広さが彼の強さに繋がっているかも知れない。
とはいえこれは凄い成績だ。
私と同様に今回初めて知った人が多いようで、彼のホームページはビジーだった。
日本百名山一筆書き、日本百名山を全部短期間で登り全行程人力で行う田中陽希氏のプロジェクトがある。NHKで放映されている。
テレビがないので解らなかったが、大体の移動スピードが時速6キロ。山でも舗装路でも、海路はカヌーでとしても平均でそのスピード。装備はその時期で変わるが、海路以外では山でも平地でも同じ装備。つまり相当重いのだ。それでも平地ではジョギングのスピードだろう。
エイプリルフールから始まって岩手県を通過した。
でこれのなにが凄いのかと言えば、彼はこの間故障していないのだ。これは年の問題ではない。普通はこれだけ歩いていれば、体のどこかが故障するのだ。鍛えているから出来るわけではない。偶然もある。もちろん軽い故障はなんとかしているのだろうが、あり得ないほどの丈夫さなのだ。
もちろん一定の低い負荷が常に加わるような動きは、人は慣れる。だから壊れにくくなるのだが、それにしても丈夫すぎる。
アスリートなら当たり前でしょ?そう思うかも知れないが、滅多にない。
だから天才なのだ。壊れない、これだけでも天才の資質だ。
真面目に凄い。国枝慎吾氏の場合、身障者の場合は特に体のひずみが出やすいと思う。そこをどうクリアしたのかもあるが、故障しなかったか少なかった可能性はあるだろう。健常人でも、錦織圭氏の異常な回復力と、田中陽希氏の場合でも滅多にいる人ではない。
故障しない。もちろん軽微なのはあるのだろうが、選手生命に関わる故障はない。
もの凄くうらやましい。