鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.135 (パス協議会講演会)

2013-07-10 15:14:35 | 日記


昨晩(7月9日)は、パス運営協議会主催のパス講演会を行いました。
今回は、黒部市民病院の今田先生をお呼びして、「パス医療原則の確認と連携パ
スへの応用」と題した講演をいただきました。

先生がもっとも伝えたかったことは、

パス医療の本質は何なのか、その原則を再確認しよう!

ということだったと思います。

とくに、先進地区の鶴岡だからこそ、知ってほしいと力説していました。

講演後のディスカッションでは、多くの先生たちから質問が寄せられ、
さすが鶴岡!、とても活発な講演会でした。

パスは、多職種協働によるチーム医療が不可欠な病院でこそ必要なツールです。
医療の安全性の向上、効率化、さらには病院経営においても有用です。
病院でのさらなる普及を期待したいと思います。

以下、講義メモです。
私にとってはパスとは何かを再確認するよい機会だったと思います。

パスの最大の効用は、最適な医療の標準化
 例えば
 ・手術を行う基準・手術の準備
 ・合併症を発見するためには、採血をいつ行うのかが最適化
 ・立位訓練を開始する時期の基準は
 ・どういう状態になったら、合併症予防タスクを開始するのか
 ・どの状態で退院するすのか

標準化 は 画一化 ではない!
 画一化 「何日目に何をする」「この治療にはこの薬を・・」
 標準化 「こうなったら こうする」、「こういう人は こうする」、
     「こうでない人には こうする」」

パスで絶対しっておかなければならないこと
パスの基本構造
 その1:パスはステップ構造になっている
 例)小児呼吸器疾患のパス
 step1、「呼吸困難が解消する」 という条件があり、それをクリアーして初
    めて次のステップへ進む、
 step2、「酸素や持続吸引を用いないで安楽なできる」をクリアーして
     次のステップへ 
 step3、「活動時の安楽な呼吸ができる」をクリアーして次へ
 step4、「酸素飽和度が90%後半を維持し、眠れる、食べられる、
     遊べるようになる」

 その2:パスにはアウトカムが必須(アウトカム設定がなければパスではない)
  アウトカムとは、期待される治療の成果・目標
  アウトカムには4種類がある
  1)チェックポイント的なアウトカム(次のステップへ進むための確認)
  2)毎回確認するアウトカム(維持すべき患者状態の項目)
  3)パス終了時のアウトカム(パス終了時に達成しているべき患者状態項目)
  4)時限のアウトカム(1,3が達成できるまでの期間)

アウトカムにはアセスメント項目がもれなくついてくる
 例)感染症の兆候なしというアウトカムには
  以下のアセスメント項目がある
   CRP < 0.5
   WBC <9000
   体温<38.0
   術創の発赤腫張なし
   機嫌がよい

バリアンスとは
 アウトカムの未達成
 日程の延長・短縮
 パスからの変更事項【オーダーの追加、削除)
バリアンスを集積、分析することで
 ・アウトカムの設定が適切なのか?
 ・適応基準が適切か
 ・パスの中身が適切か
 を確認でき パスを改善へつなげることができる。

パスをチェックするための多職種によるパス大会は極めて有用

まとめ

・パスは連絡帳ではない
 分析を行うことで、地域の医療ケア向上の改善に繋がらないものは
 パスではない
・アウトカムのないものはパスではない
・パスの分析には
 連携がうまくいっているか?
 患者状態が予定通りか
 地域全体の治療ケア成績はどうなったか
 の3者が必要である。

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No.134 (一緒に学ぼう 社会保障のABC:第8回)

2013-07-10 15:13:41 | 日記
回は、国民年金制度がどのような議論を経て実現したのかについて解説してい
ます。税方式にするか、社会保険方式にするかでもめたようですが、自分の老後
のことは自分で備えるという自立自助の考え方を基本とすべき、税だと国の財政
負担が膨大となる、税収はそのときどきの経済状況に左右される、などの理由で、
社会保険方式になったようです。一方で、保険料を免除する制度や納付期間の短
縮などで、保険料を払えない人にも考慮し、国民全員が加入する制度となりまし
た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国民皆保険・皆年金(7)国民年金の創設
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 前回、1955年頃から国民年金制度を作ろうという機運が高まり、1959
年に国民年金法が成立、1961年に国民皆年金が実現したことをご紹介しまし
た。

 今回から、国民年金制度の内容について見ていきます。最終的に決まった内容
と、そこに至るまでの議論の経緯を知ることで、日本がなぜ「国民皆年金」とい
う理想的だけれど無理もある仕組みを採用したのかが、わかってくると思います。

 制度創設にあたっては、幾つもの論点がありました。

・ 保険料の拠出を条件に年金を給付する「社会保険方式」にするのか、保険料
 の納付を求めず、税金を財源に年金を給付する「税方式」にするのか。

・制度の対象を、国民全員とするのか、既に存在する制度に適用されていない
 人だけを対象とするのか。保険料負担能力のない学生や専業主婦などは
 どうするのか。

・保険料を納めてもらう期間やその額、年金の額などはどうするのか

 これらの点について、総理府(当時)の社会保障制度審議会や、厚生省(当時)
の学識経験者5人による国民年金委員などがそれぞれ検討し、案を公表しました。

■社会保険方式か税方式か

 中でも大きな論点となったのが、社会保険方式にするのか、税方式にするのか
です。今回は、ここを重点的に見てみたいと思います。

 もちろん、社会保険方式にするといっても、当時、既に高齢になっている人な
どへの年金は税金で賄うしかありません。だから、何らかの形で税方式による年
金給付も行う必要があったのですが、制度の基本をどちらの方式で行うのか、ま
た、社会保険方式を基本とした場合、税方式の年金をどのように取り入れるかで
意見が分かれたのです。

 社会保障制度審議会は、社会保険方式を原則としつつも、税方式も恒久的に制
度に組み込む案を主張し、国民年金委員は、社会保険方式を原則とし、税方式に
よる給付は例外・一時的とする案を主張しました。

 一方、農業者団体や社会党などは、国民年金の対象者は低所得者が多いことな
どから、社会保険方式は難しいとして、税方式一本の制度にするよう主張しまし
た。社会保険方式だと、保険料拠出の記録・管理や、保険料の徴収に手間がかか
るという問題もありました。

■社会保険方式を基本に

 これに対し、政府は、社会保険方式を原則とし、制度発足時に既に高齢となっ
ている人や、身体障害がある人、どうしても保険料納付の条件を満たせない人な
どにだけ経過的・補完的に税方式による年金を給付することにしました。なぜ社
会保険方式を基本としたのか。その理由を、国民年金法案の提案理由説明(19
59年2月13日衆参両院本会議、厚生大臣発言)や、当時書かれた本(小山進
次郎著「国民年金法の解説」、1959年)などから見てみましょう。

 主な理由として挙げられているのは次の通りです。

 社会保険方式は、「若いうちから、自らの力でできるだけ老後の備えをして
おく」という自立自助の考えに基づいており、それは生活態度として当然である
ほか、資本主義的な経済体制にも合っている。そうした考えを取ることで、制度
の持続可能性も高まる。

  高齢者人口が急激に増えていく中で、税方式にすると、国の財政負担が膨大
になり、将来の国民に過度の負担を負わせる結果となる。それを避けようとすれ
ば、年金額など給付の内容が、社会保障の名に値しないほど不十分なものになら
ざるを得ない。

 税収はその時々の経済・財政事情の影響を受けやすいため、税方式を基本とす
ると、制度の安定性や確実性に不安が残る。

 諸外国でも年金制度の先進国といわれる国はすべて社会保険方式を原則として
いる。

 社会保険方式にしたのは、自立自助の精神が日本の社会・経済生活に合ってい
ること、また、高齢化が進む中で、税方式では国民の老後を支えられる本格的な
年金制度にならないと考えられたからといえます。

■所得が低い人も含める

 社会保険方式を基本に国民皆年金を実現するということは、保険料負担が困難
な低所得の人も、制度の対象に含めることを意味します。「国民年金制度が社会
保険方式を基本とするならば、保険料の徴収確保が制度の成否を決めるカギとな
るはずだから、保険料納付を期待しにくい人は、はじめから制度の適用外とする
べきだ」――。こうした反対意見も多く聞かれるなか、貧富や保険料負担能力の
差を問わず、基本的に全員を制度の対象とした主な理由としては、以下の点が挙
げられます。

 一般に、保険料を拠出する能力の低い人こそ年金を最も必要とする人たちだ
から、その人たちをはじめから除いたのでは、全国民に年金を保障し、それを生
活設計の拠り所として、国民生活の安定をはかる、という制度の趣旨が実現でき
ない。

 年金制度は長期にわたって保険料を納める仕組みなので、人生のある一時期
に負担能力がなくても、後に負担できるようになると考えられる。ある一時期の
負担能力だけを問題にして制度の対象外としてしまうと、低所得者にかえって不
利な制度となってしまう。

 実際上の問題として、拠出能力が十分な人だけにすると、国民年金制度とい
う名を掲げながら、本来、カバーすべき人の2割に満たない人だけを対象にする
制度になってしまう。

 「保険料の拠出をしたことで、給付の権利が得られる」ことが社会保険の最大
の特徴です。その根本的な性格を変質させる恐れがある人たち、すなわち保険料
を拠出する能力が十分ではない人たちまで制度に含めた理由には、国民みんなに
年金を行き渡らせ、福祉国家を実現したいといった理想や、財政運営上から見た
現実的な判断があったといえそうです。

■免除期間を設ける

 さて、保険料は所得捕捉の難しさを考慮して定額とされ、その水準も国民の大
部分が負担できる額に設定されました。しかし、それでも低所得の人には何らか
の配慮が必要です。そこで、生活保護を受けている人や保険料を負担する能力が
乏しいと認められる人には、保険料を免除する制度が設けられました。

 さらに、普通だったら年金を受け取るのに25年以上保険料を納めなければな
らないところ、低所得で免除を受けている人の場合は、納付済みの期間は最低1
0年あればよいとされました。最低10年の保険料を納めた期間と、保険料免除
期間とを合わせて25年以上あれば、年金を出すこととしたのです。これは社会
保険の仕組みからすると「極めて異例な仕組み」(「国民年金法の解説」、19
59年)といえます。

 そうまでしても、できるだけ多くの人を社会保険方式による年金制度に含め、
年金を給付したいと政府は考えたのです。

 国民年金の内容については、次回も引き続き、見ていきたいと思います。

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