社会保障は参議院選挙の争点のひとつです。
少子高齢化が急速に進むなか、いかに制度の持続可能性を確保し、支える側と支
えられる側の双方が納得できる仕組みにしていくかが問われています。
そのためにも、まずは制度をしっかりと理解する必要がありますね。
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国民皆保険・皆年金(8)国民年金の内容
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国民年金制度で、社会保険方式か税方式かと並んで大きな論点となったのが、
制度の対象者をどうするかです。厚生年金保険など、既にある制度の適用者を含
む全国民とするのか、それとも、農民や自営業者など、制度に加入していない人
たちだけを対象とするのか。全国民とする場合も、既にある制度を一度ご破算に
して、新しい制度に全員入ってもらうのか、既存の制度は残したまま、二重に加
入してもらうのかといった点が議論になりました。
社会保障制度審議会は、既存の制度に加入していない人だけを対象とする案を
出し、国民年金委員は、既存の制度の加入者も含め、全国民を対象とする案を出
しました。
■未加入者のみを対象に
これに対し、政府は、いろいろ検討した結果、既存の制度に加入していない人
のみを対象とすることにしました。本来は、全国民を対象とした一本の制度にし
た方がわかりやすく、望ましいと考えたのですが、既存の制度にはそれぞれ歴史
や経緯があり、今さらやめるわけにはいきません。かといって、既存の制度をそ
のままにして、新制度に二重に加入してもらうのも、制度を複雑にさせます。そ
こで、この問題は引き続き時間をかけて検討することとし、さしあたって、既存
の制度に加入していない人のみを対象とすることにしたのです。
対象者の年齢は、20歳から59歳までとされました。保険料負担能力のない専業
主婦(既存の被用者年金の適用を受けている人の配偶者)や学生は、制度の対象
とせず、任意加入を認めることとされました。前回、保険料負担能力がない人も
できる限り社会保険方式の年金制度に含め、支払いが難しい場合は保険料免除の
制度を設けたことをご紹介しました。なぜ、専業主婦と学生は別扱いにしたのか
と疑問に思われる方もいると思います。
専業主婦の場合は、夫が生きている間は夫の年金に加給年金が加算され、夫の
死後は遺族年金を受け取れるなど、不十分ではあっても、夫の年金によって生活
を守ることが可能だと考えられたからです。ただし、離婚した場合は無年金となっ
てしまうため、専業主婦も国民年金の対象にすべきだという意見も根強くありま
した。検討を重ねた結果、とりあえずは制度の対象とせず、本人が希望すれば参
加を認める任意加入とすることにしたのです。
学生の場合は、卒業して社会に出た後は、被用者年金に加入する人が非常に多
いことが予想されたため、同じく任意加入とされました。
■20歳になったら月100円
保険料は、本来は、所得が多い人はより多く支払う「所得比例制」がよいと考
えられたのですが、自営業者の所得を正確に把握するのは難しいとの理由から、
定額とされました。保険料の額は当時の金額で20歳から34歳までの人は月額100
円、35歳から59歳までの人は同150円。
年金を受け取れるのは65歳からで、基本的に、保険料を納めた期間が25年以上
必要です。25年以上納めた場合の年金額は月額2000円、保険料を全期間(40年)
納めた場合は同3500円。高齢者一人あたりの現金支出額や消費支出、高齢者世帯
の最低生活費などを調べ、あまりみすぼらしくならないような金額にしたのです。
■「皆年金」ついに実現
こうした内容を盛り込んだ国民年金法案が1959年2月に国会に提出され、4月
に成立、1961年4月に、「国民皆年金」が実現しました。被用者年金でカバーさ
れていなかった人たちを対象とした制度を創設することで、全国民をカバーする
公的年金制度ができたのです。
なお、1985年の大改正で、厚生年金の一部が国民年金の一部分になりました。
これにより、国民年金は全国民を対象とした一本の制度となり、勤め人も自営業
者も専業主婦も、20歳から59歳までの人はすべて国民年金に加入して、「基礎年
金」と呼ばれる定額の年金を受け取る現在の仕組みになりました。学生について
は、1989年の改正で、これも20歳になれば強制加入の対象とされました。
現在の年金の仕組みについては、また改めてご紹介したいと思いますが、国民年
金法が成立する前、当時の政府が思い描いていたような全国民を対象とした一本
の国民年金制度が、四半世紀後に実現したともいえます。
少子高齢化が急速に進むなか、いかに制度の持続可能性を確保し、支える側と支
えられる側の双方が納得できる仕組みにしていくかが問われています。
そのためにも、まずは制度をしっかりと理解する必要がありますね。
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国民皆保険・皆年金(8)国民年金の内容
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国民年金制度で、社会保険方式か税方式かと並んで大きな論点となったのが、
制度の対象者をどうするかです。厚生年金保険など、既にある制度の適用者を含
む全国民とするのか、それとも、農民や自営業者など、制度に加入していない人
たちだけを対象とするのか。全国民とする場合も、既にある制度を一度ご破算に
して、新しい制度に全員入ってもらうのか、既存の制度は残したまま、二重に加
入してもらうのかといった点が議論になりました。
社会保障制度審議会は、既存の制度に加入していない人だけを対象とする案を
出し、国民年金委員は、既存の制度の加入者も含め、全国民を対象とする案を出
しました。
■未加入者のみを対象に
これに対し、政府は、いろいろ検討した結果、既存の制度に加入していない人
のみを対象とすることにしました。本来は、全国民を対象とした一本の制度にし
た方がわかりやすく、望ましいと考えたのですが、既存の制度にはそれぞれ歴史
や経緯があり、今さらやめるわけにはいきません。かといって、既存の制度をそ
のままにして、新制度に二重に加入してもらうのも、制度を複雑にさせます。そ
こで、この問題は引き続き時間をかけて検討することとし、さしあたって、既存
の制度に加入していない人のみを対象とすることにしたのです。
対象者の年齢は、20歳から59歳までとされました。保険料負担能力のない専業
主婦(既存の被用者年金の適用を受けている人の配偶者)や学生は、制度の対象
とせず、任意加入を認めることとされました。前回、保険料負担能力がない人も
できる限り社会保険方式の年金制度に含め、支払いが難しい場合は保険料免除の
制度を設けたことをご紹介しました。なぜ、専業主婦と学生は別扱いにしたのか
と疑問に思われる方もいると思います。
専業主婦の場合は、夫が生きている間は夫の年金に加給年金が加算され、夫の
死後は遺族年金を受け取れるなど、不十分ではあっても、夫の年金によって生活
を守ることが可能だと考えられたからです。ただし、離婚した場合は無年金となっ
てしまうため、専業主婦も国民年金の対象にすべきだという意見も根強くありま
した。検討を重ねた結果、とりあえずは制度の対象とせず、本人が希望すれば参
加を認める任意加入とすることにしたのです。
学生の場合は、卒業して社会に出た後は、被用者年金に加入する人が非常に多
いことが予想されたため、同じく任意加入とされました。
■20歳になったら月100円
保険料は、本来は、所得が多い人はより多く支払う「所得比例制」がよいと考
えられたのですが、自営業者の所得を正確に把握するのは難しいとの理由から、
定額とされました。保険料の額は当時の金額で20歳から34歳までの人は月額100
円、35歳から59歳までの人は同150円。
年金を受け取れるのは65歳からで、基本的に、保険料を納めた期間が25年以上
必要です。25年以上納めた場合の年金額は月額2000円、保険料を全期間(40年)
納めた場合は同3500円。高齢者一人あたりの現金支出額や消費支出、高齢者世帯
の最低生活費などを調べ、あまりみすぼらしくならないような金額にしたのです。
■「皆年金」ついに実現
こうした内容を盛り込んだ国民年金法案が1959年2月に国会に提出され、4月
に成立、1961年4月に、「国民皆年金」が実現しました。被用者年金でカバーさ
れていなかった人たちを対象とした制度を創設することで、全国民をカバーする
公的年金制度ができたのです。
なお、1985年の大改正で、厚生年金の一部が国民年金の一部分になりました。
これにより、国民年金は全国民を対象とした一本の制度となり、勤め人も自営業
者も専業主婦も、20歳から59歳までの人はすべて国民年金に加入して、「基礎年
金」と呼ばれる定額の年金を受け取る現在の仕組みになりました。学生について
は、1989年の改正で、これも20歳になれば強制加入の対象とされました。
現在の年金の仕組みについては、また改めてご紹介したいと思いますが、国民年
金法が成立する前、当時の政府が思い描いていたような全国民を対象とした一本
の国民年金制度が、四半世紀後に実現したともいえます。