
4月11日、19:00~ 東谷心療内科 院長であられる東谷先生のうつ病の勉強会があり、聴講してきましたので報告します。
座長: 鶴岡病院 医長 東海林 岳樹 先生
演者: 東谷心療内科 院長 東谷 慶昭 先生
東谷先生の講演に先立ち、座長の東海林先生から、本年度開院予定の山形県立こころの医療センターのストレスケア病棟についての説明がありました。ストレスケア病棟は、うつ病、神経性障害、アルコール依存症、マイルドな統合失調症、パーソナリティー障害などの患者用病棟で、認知行動療法、修正型電気痙攣法や疾病教育、家族支援、職場面接などにも新たに取り組むとのことでした。
講演「うつ医療連携の工夫」
東谷心療内科 院長 東谷 慶昭先生 (専門は産業医)
山形県産業保健総合支援センター
東谷先生の専門は、職場で働く人の「こころの健康」(メンタルヘルスケア)とのことで、講演の内容はうつ病というよりは適応障害が主でした。
講演のポイント
適応障害(うつ病)は、
・(精神症状より)身体症状を訴えることが多い
・眠れない、食欲がない、だるいの訴えは要注意
・適応障害(うつ)はこころのエネルギーが下がった状態と理解する
・適応障害の対応は、(薬ではなく)労務管理が中心になる
・時間の経過ととこころのエネルギーの関係を図で説明し、自分が今どの状態に
いるのかを理解させることが有用
・職場復帰後2か月遅れて、症状が出てくることを知っておく
・職場復帰可能の判定条件は、1)本人からの「やれそうだ」、「復帰したい」の
復帰の希望、2)リズム表の提出、3)振り返りレポート提出
・家族とは別にもうひとつの家族(職場、学校、友人、コミュニティー・・)が
必要
・ストレスはバランスで理解する
(「やりがい」、「趣味」などのプラス要素を増やすことも大事)
以下講演メモ
1、メンタルヘルスケアの担い手
初診は内科、婦人科医がかかわることが多い、
産業保健においては、判断は産業医が担うが、
対応は、人事労務管理者
2、精神症状よりも身体症状や行動
不安、怒り、焦り、緊張などの精神症状より、頭痛、めまい、動悸、胸痛、はきけなどの消化器症状、呼吸困難、関節痛など身体症状の訴えることが多い。
職場では、「ケチな飲み屋」
ケ:欠勤、チ:遅刻、な:泣き言、飲:能率が下がる、み:ミス、屋:辞めたいといだす
勤労者のうつの診たて
睡眠(眠れない、寝つきは悪くないが、目が覚める、2週間継続)、
食欲(がない、体重が減った)、
休日の過ごし方(休日に何もできない、寝ている)、
☚ 大事な質問、うつ病では1日寝ていることが多い
原因不明の身体症状
3、メンタルヘルスは3か月単位
時間経過とこころのエネルギーの変化
一般的には、大きな変化(昇進、異動)後2か月で落ちて、6か月で戻る(適応)
適応障害、うつ状態では、下がったままで、戻らない
うつ病は、こころのエネルギーが下がった状態
*メンタルヘルスは3か月単位
3か月以内の疲労感辛さは、誰にでもある
3-6か月は、慣れていく過程
6か月以上経過しても慣れないケースは要注意
1年以上経過してさらに状態が悪化する時は休養が必要なことが多い
うつ病と適応障害
適応障害では、職場で症状が強い、休日には楽になる、好きなことはできる、
こころのエネルギーそれなりにある、
対応は、職場環境の調整など労務管理が中心で抗うつ剤の効果はあrまりない、
短期間の休養で改善する
4、職場復帰のポイントは続けて働けること
適応障害、休むと症状が改善する、 うつ病は、改善しない
人間関係や仕事との相性などに問題があることが多い
休んで元気になったとして、再開で再発
適応障害、職場環境の調整で解決することが多い
図で説明すると納得してもらうことが多い
振り返りレポートを書くことで、問題が抽出できる
職場復帰後2か月遅れて出てくることを知っておく
復帰時のエネルギーを高くすることが必要
職場復帰可能の判定条件
1)本人からの「やれそうだ」、「復帰したい」の復帰の希望
2)リズム表の提出
3)振り返りレポート提出
5、こころの健康はからだの健康から
種々の身体疾患は、うつ病を伴う頻度が高い
例:脳卒中、消化器疾患、心不全、COPD、虚血性心疾患、
平日の睡眠時間:6時間以下、9時間以上寝ている人はうつ病に多い
睡眠不足
肥満、糖尿病、・・・・・
老化が早まる
成績が下がる
生理が早く来るなど性成熟が早まる
こころの健康のために有用な要素
朝食、栄養バランス、禁煙、禁酒、趣味、運動、満足、規則正しい生活
ストレスはバランスで理解する
「つらいストレス(仕事の負担度など)」と「ストレス緩和(やりがい、評価、裁量権)」 とのバランス
プラス要因を増やすことが大事
人と人とが連携することが大事
自殺のキーワードは、「孤立」
相談する相手がいない
!家以外のもうひとつの家族が必要
「わいわいがやがや」 がお互いの良い関係を形成
自分が安心して過ごせるふたつ以上のコミュニティーが必要
良好なワークバランス