司会 庄内には、高度な医療技術、最先端の医療機器が豊富にあると思うが、具体的にどんな医療を受けることができるのか、紹介してほしい。
例えば、日本海総合病院では、PET―CTを2012年6月1日に庄内で初めて導入した。また、同病院は、県内で3番目となる救命救急センターを2011年に開設した。同センターには、世界最速の処理能力のある320列のCTや、血管の造影装置もある。
荘内病院は、県のがん診療連携指定病院に指定され、山形県の地域周産期母子医療センターにもなっている。
司会 鶴岡地区では、どういった先端医療が受けられるか。
荘内病院の脳神経外科では、かなり以前から血栓溶解療法といって、脳卒中の超急性期に血栓を溶かす薬を使うことによって脳のダメージを軽減できる治療法を消防隊と一体化して運用している。また、血管内にカテーテルを挿入し、脳血管内の血栓を除去するという最先端の治療も行っており、日本海総合病院から紹介してもらうこともあると聞いている。
また、脳卒中については以上のような前方連携だけでなく、発症後にリハビリテーションを行い、在宅に戻すプロセスも必要だが、そのような後方連携では、地域連携パスを導入し、患者さんをスムーズに回復期リハビリテーション病院に転院させ、そこでしっかりリハビリテーションを行い、機能を回復させ地域に戻すということをシステム化して行っている。脳卒中に関しては発症から在宅まできちんとしたレールが敷かれていると思う。
ほかにも、内視鏡を利用した非侵襲的な肺がん治療なども積極的に行っており、少なくとも外科の技術はかなり高い病院だと思っている。
また、鶴岡は、全国から4か所が選定された厚生労働省の「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」を受託し、地域における緩和ケアの普及を目指し、多岐にわたる活動を行ってきた。がんに関しては、どうしても治せないという患者さんがいる。従来、そういった患者さんの多くは、病院で治療し、そのまま病院で亡くなっていた。ここ数年はその流れが随分と変わってきていて、住み慣れた自宅で家族に囲まれながら病院並みのケアを受けつつ、在宅で看取とることが可能となってきている。鶴岡の在宅緩和ケアの質はかなり高いものになってきていると評価している。
司会 今話が出た投資効率の問題は、医師不足、看護師不足のところで詳しく聞きたい。三原先生、荘内病院は脳外科、外科、緩和ケア、内視鏡技術などのレベルが高いという話だったが、地域としてはこれから何が必要になるか。
三原 そこは日本海病院との役割分担ではないか。荘内病院があえて高額の投資をして何か新しいことをやっていくというような時代にはならないと思う。とにかく、今、地域での一番の課題は少子超高齢化社会。高齢化率は鶴岡も酒田もだいたい30%ぐらい。これがさらに進み、あと20年以上、2040年頃までには高齢化率40%にまで上昇する。そういった中では、新しい治療を模索するより、高齢者を地域の中でどう支えていくか。どうすれば、高齢者が最期まで安心して生き生きと暮らせることができるのか。これからはむしろ、そういった地域づくり、まちづくりが必要になる。
もちろん、病院には先端医療もお任せはするが、地域の中で支えなければならない高齢者人口の方が圧倒的に多くなるわけだから、治す医療から支える医療へと変えていかなければならない。荘内病院のような地域支援病院は、最先端に突出するのではなく、最先端を担いつつも、地域に根差した病院であってほしいと思う。