ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

ランダル・レイのMMT論

2021年01月12日 | 経済
以前から読みたいと思っていたMMTのバイブル的な書、『現代貨幣理論入門』(L・ランダル・レイ著 東洋経済新報社)をやっと読了しました。

分厚い本で理解するのに難解な記述だった。翻訳ものゆえだろうか。

貨幣の「文化的遺伝子」とやらを説明している。
我々に必要なのは、政治と連携し我々の意思を強固なものにする文化的遺伝子である。貨幣制は素晴らしい創造物である。主権通貨は国家的なものである。利益最大化の論理に代わる「公益」が必要である。政府は公益のために支出する。我々は通貨制度を公共目的追求のために使わなければならない。その結果として誰もが個々の私的な目的を追求できるようになる。

MMTでは、通貨発行権のある政府にデフォルトリスクはまったくない。インフレが悪化しないようにすることだけが制約である。基本的には標準マクロ経済学の考え方であるとする。

松尾匡先生の巻末解説が良かった。MMTの命題は異端ではなく常識である。日本ではMMT支持は保守派ばかり、左派サイドでは山本太郎ただ一人、と。なぜか「私(松尾)はMMT論者ではないが・・」という。

私はMMT理論を最初に知ったとき正直驚いた。直感的に、親からも聞いていた敗戦直後のハイパーインフレを連想したからだ。経済活動による富の創造・分配に支障が生じるのではないか。インフレ抑制が実際うまく制御でき得るものなのだろうか。当の米国のMMT推進派経済学者が、財政赤字が破綻しない実証例に日本を挙げていることも何か不安をぬぐいされない。ただMMTの積極財政論は、ロジックとしては整合されている。

ここまで富の分配に不平等性が拡大してしまった新自由主義経済手法に、アンチを示す意味では再考に値する理論ではある。ここはリスク覚悟で現状を打破するためにさらに実証してみるのもよいのではないかと、不安ながらも期待を込めて。

 
MMT理論のランダル・レイ教授発言(NHKニュース)
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