『現代思想』(青土社)9月号の特集「精神医療の新時代」は良かった。読み応えがありました。略語や専門用語が多く辞書を横においての熟読となりました。
薬物中心の医療実態に新提言
「オープンダイアローグ」(OPD)という新しい精神医療の提言がメインでした。このOPDはフィンランドの臨床心理士ヤーコ・セイックラが中心となってつくりだしたもの。急性期の統合失調症に効果が認められます。これまでの1対1(モノローグ)ではなくチーム医療による複数による「開かれた対話」療法です。即入院、薬物中心の現在の医学とは時に対峙する形ともなる方法です。頭の固い既成の医療体制には一石を投じるものだけに、日本でも、どこまでこの療法を取り入れることができるかは未知数です。
本書を読んで精神医療を支えるスタッフの専門領域の広さに感心しました。表象精神病理、哲学、医療社会学、神経科学、臨床精神医学、臨床心理士、精神科医、精神病理学、ソーシャルワーカー、当事者研究、医療人類学・・
現代思想的には、OPDはポスト・モダニズムの影響を受けていると言われているようです。OPDの普及拡大で精神医療の景色がガラッと変わるといいですね。精神医療は芸術(アート)との関連性、類似性もあるのですな。医学のほかに心理、政治経済、哲学思想、芸術とまさに学際的な特徴が強い分野であることも理解できました。
OPD療法で友は治っていたかも
私には統合失調症で30年近く入院生活を送っている親しい友人がいます。時々見舞いに訪れますが、薬の副作用のせいか鈍い動きで精気が感じられません。もし発症の時に、家族、医療スタッフ、友人の私などが彼を囲んで、動画のような開放的なODP療法を行っていたなら、きっと改善していたのではないかと思われるのです。急な幻聴も一過性のものだったのではないかと・・私から見て家族間の対話の少なさ、親しいもの達との理解(共有)不足が思い当たるからなのです。入院するのは早すぎたように感じました。また一旦入院してしまうとなかなか出られない・・。そんな身近な事例があるだけに新しいチーム医療OPDを知り、その可能性に惹きつけられました。
注目します!オープンダイアローグ療法
きょうの一曲はOPD療法のセイックラ氏と同じフィンランド人のバンドThe Soundsの『Lonely Guitar』
【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔
『開かれた対話』フィンランドにおける精神病治療への代替アプローチの (Open Dialogue, Japanese subtitles)
The Sounds - Lonely Guitar