環太平洋経済連携協定(TPP)への参加をめぐって国内的な議論が高まる中、これからの農林業・自然環境に若い世代がどうのように向き合っていくか、身近な農高生についての本、『農高生の里山応援隊』を読んでみました。
この本は、急ぐ必要がなかったせいか、いつか目を通そうと入手はしたものの、のびのびになっていたいわゆる“つんどく(積読)書”の一つでした。
著者、青木豊氏は、群馬県立勢多農林高校の教諭。1962年赤城山育ち。実家は大沼の青木旅館。赤城山の豊かな山々、湖が青木先生の原体験のようだ。
今では、校名に「農」をしっかり掲げているのは、群馬県内では勢多農林高校だけではないだろうか。好感がもてます。本書は、著者が担任でもある勢多農林高校の中でも旧園芸デザイン、生活教育科を再編した「グリーンライフ科」の生徒たちの学習と活動に焦点が置かれている。
「自然破壊という漠然とした言葉の中で何が起こっているのか、それがどのように関係しているのか多くの日本人が気にとめようともしなかった。農業高校生たちに何ができるのだろうかという戸惑いもある。しかし誰かがやらなければならない」と著者。
里山とは村と接する森や山のこと。生物多様性(種、遺伝子、生態系)の大事さ、大豆やカツ丼、こけし、鉈(なた)などを通して里にある文化をまなぶ。
里山の危機に、著者と生徒たちの着々としたフィールドワークの貴重な記録が本書の収められています。中でも印象に残ったのは、可愛らしい合鴨(アイガモ)を飼育し活用しての「アイガモ農法」、そして役目の終わったアイガモの解体・・。
(写真:田植え機の運転実習 本書から)
農高生の里山応援隊―勢多農林高校グリーンライフ科の生徒たち | |
青木 豊 | |
柘植書房新社 |