素焼きまでの木地は既に年間にお納めすべき量は焼き貯めてありますが、それらを3分の1づつ彩色を済ませてお納めすることになっています。
その最初の分がやっと塗り終わりほーっとしています。どうしてもすべて全く同じ顔に描き分けるということは至難の業ですが、おおかたまあまあ(あくまで自己採点)かなと思っています。昔は今戸近辺には鉄砲狐を作る家、内職で絵付けするところもあまたありましたから、面描きひとつ比べれてみても当然個人差というものが出てくるのですが、概ね言えることは、昔の今戸焼の狐の面描きの筆のタッチは、筆の穂先によって三角形に見える筆の置き方、払い方にあると思うので、その点については特に意識しています。
狐の足元に置いた黄色は戦後の作には省略されて久しいので、はじめてご覧になる方に目新しく映るでしょうか?じつはこうして黄色く塗るという配色は天保年間から昭和戦前の尾張屋春吉翁(明治元年~昭和19年)までは普通に引き継がれていたもので、時として黄色が黄土色だったり、金泥だったりという差はあっても足元は塗るという決まりがあったようです。浅草橋にある創業300年のお人形の「吉徳」さんには天保年間の人形玩具の配色手本帳が残されており、その中でも、鉄砲狐の配色の図で、黄色が示されているのです。
画像に写っている狐の大群は今回お納めする分の3分の一くらいでしょうか。これら髭のあるのとないのと2体で一対としてカップリングして包み、段ボール箱に詰め込む作業もあり、狭い部屋ですべてひとりでちょっとしんどい。「十五夜さんの手も借りたい」とはこんな感じです。
画像の中の狐のほとんどは髭のない子がほとんどですね。なぜかというと、このあと目鼻の感じによって髭の似合いそうな子を定数選抜して髭を描き込んでいたからです。
ゆうべやっと全て包み終わり、箱詰めもできました。ご先方のご都合がつき次第お届けする予定です。とにかく狭いので、このあとに控えている作業を進めるためにも、詰め終わった段ボールが早く場所を空けてくれるといいなと思っています。