チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

窒素の大循環

2012-07-02 20:38:49 | 哲学

 
7. 窒素の大循環

 窒素は、空気中の80%を占めている、この空気中の窒素を根粒菌によって、硝酸や亜硝酸、アンモニアを生産し、それを植物が利用し、タンパク質やアミノ酸、核酸などの窒素化合物を生産する。動物は、そのタンパク質を食べて、アミノ酸として、体内でこれが代謝されると、アンモニアができる。

 すなわち窒素は、大気からはじまり、根粒菌を経て、植物によって、タンパク質やアミノ酸となり、動物の体内を代謝して、アンモニアを排出しさらに一部は筋肉となって、やがてその動物は、食物連鎖を経て、死によって土壌成分となり、アンモニアが大気に放出される。

 ここで、窒素循環の要となっているのは、根粒菌と植物である。植物は、亜硝酸を栄養素として、実を結ぶことによって、豆や穀物として人や動物の食物となり、動物の筋肉となる。根粒菌は、マメ科の植物の根に共生している。

 植物は、根粒菌に糖分を与え、根粒菌は、空気中の窒素を植物からの糖分を燃料として、複雑な反応を経て、植物が根から吸収出来る亜硝酸を生成する。この根粒菌はなぜかマメ科の植物にのみに、寄生し共生する。このため豆には、タンパク質が豊富であり、米や麦と豆いっしょに食べると栄養のバランスが良い。

 森林の各樹木には、内生菌や外生菌の固有の共存関係が存在し、それぞれの樹木と菌の共生関係が成立しないと豊かな森林は生まれない。このため、樹木の苗を植える時、根に固有の共生関係にある菌を付着させることによって植林の効率を向上させる。

 窒素の大循環のエントロピー逆走エンジンは、空気中の窒素を利用して亜硝酸を生成する根粒菌であり、その亜硝酸と葉緑体で生産された糖類をエネルギーとして、タンパク質や核酸を豊富に含む植物の種子を実らすことである。(第9回)


炭素の大循環

2012-07-02 15:06:19 | 哲学

6. 炭素の大循環

 有機物の酸化分解や、化石燃料が燃えることによって、CO2と水蒸気が排出される。大気中にCO2が放出拡散するため、あらゆる場所にCO2は供給される。空気中のCO2は、太陽光と水を原料として、植物の葉の中の葉緑体に於いて、糖類を生産する。この時、酸素を排出し、酸素の大循環エントロピー逆走エンジンでもある。

 この植物が生産する糖類を動物は食物として利用し、糖類はATPに変換され、動物の運動エネルギーとして利用される。植物のセルロース分が、地下での堆積によって化石燃料となる。すべての生物が枯死すると微生物の力によって、土壌成分とCO2と水、メタン等に分解され、土壌と空気中に炭素は放出される。これらは、陸上に於ける炭素の大循環である。

 海水の表層は、空気中の炭酸ガスを吸収している。CO2は他の気体と異なり、水に溶けると解離して、弱酸性になる。このため表層水の中では、酸素の5~10倍のCO2が溶解しているが、溶存炭酸ガスの大部分は、乖離イオンとなり、CO2として存在するのは僅か1%以下である。このため、魚は水中に於いて、生存できる。

 植物性海洋生物の量は、陸上と比較して、0.2%の過ぎないが、有機物の年間生産量で比較するとほとんど変わらない。それは、陸上植物は、2倍に増えるためには、数ヶ月~数年かかるのに対して、海洋の植物プランクトンは僅か数日で、倍増する。つまり、海洋生物のライフサイクルの回転が速いという特徴がある。

 海洋生物の一部は、無機炭素として、深層部へ沈殿する。このため深層水の過剰の無機炭素は、海洋の大循環で1千年ほどのサイクルで、表層に浮かび上がって、植物プランクトンを発生させ良い漁場となる。海水のCO2はサンゴや貝類によって、炭酸カルシウム(CaCO3)として海水から沈殿する。これが、海洋に於ける炭素の大循環である。

 炭素の大循環のエントロピー逆走エンジンは、葉緑体での糖類の生成であり、酸素の大循環のエントロピー逆走エンジンでもある。(第8回)


真水の大循環

2012-07-01 10:55:36 | 哲学

5. 真水の大循環

 空からの雨は、野原や森林をうるおし、川を下って海に流れる。水は重力によって、低きに流れ、海はエントロピー増大の結果として存在する。赤道付近の海水が温度上昇することによって、水蒸気が発生するが、凪ぎの状態では、熱エネルギーは海水に蓄積される。

 水の水蒸気圧は、温度によって、2次関数的に上昇する。水の分子量は、H2O(18)で空気の分子量(29)に比べ軽いために上昇気流を発生させる。さらに周りの水蒸気を集めて、風が発生し、波が生じてさらに水蒸気を発生させるこれが台風である。

 海水の熱エネルギーを燃料として、大波によってさらに水蒸気を発生させ、水蒸気は上昇し中心の気圧は低下し、台風は発達する。水蒸気は上空で冷やされで、雨雲を発生させ、雨を降らせる。

 海水から水蒸気が発生する時、540cal/gのエネルギーを海水から奪うが、大量の海水の熱容量のため、台風として、雨を森林や畑に真水を供給する。海水温と洋上の大気温の差が、大きい時、同様に低気圧が発生し雨や雪を降らせる。

 水は森の木々を育て、川となって田や畑をうるおし、川の魚を育て、海にそそぐ。エジプトのデルタの洪水は、畑の土壌中の塩分を流し、上流からの養分を供給し、豊かな麦の実りをもたらし、この結果エジプト文明は、数千年もの間繁栄した。現在のエジプトではアスワンハイダムの建設と灌漑によって、洪水は発生しなくなった。しかし、塩害のために20~30年で農地は使えなくなっている。

 寒冷地に於いては、水が凍って雪となって降る、雪は体積で数倍もの容積となる。北日本では、冬期間1~2mもの雪が降り積もて、雪の下の土壌は保温され、雪の下の土の中の植物も昆虫も寒さから守られる。冬の間に降り積もった雪は、春から初夏までにゆっくりと融けて、地中に時間をかけてしみてゆく。地中にしみ込んだ水は、湧水となって、春から夏の作物が真水を必要とする時、水が供給される。

 熱帯雨林やモンスーン気候帯では、森林に太陽光があたり、木の葉から水蒸気が発生し、高い山により上昇し上空で冷やされ、麓に雨を降らせる。その森林が伐られるとその気象をも変化させ、時には砂漠化させる。熱帯雨林を切り開いて、農地や牧草地としても、十数年で強い太陽、塩害、土壌流出により、時には荒地となる。これを防ぎ農業生産を続けるには、アグリフォーレストが可能性のある道である。

 河川は、地球の血管として、真水や養分を大地に供給しているが、河川は国境を跨いで流れるため、ダムや灌漑、森林伐採で、下流域の国々にも多大な影響を与える。中国の三峡ダムなども今から、その問題点が懸念され、紛争の原因ともなりかねない。貴重な真水は、大地を常に流れながらも、様々な形で植物や動物を潤し、ゆっくりと海に下るのが本来の姿のように思える。

 真水の大循環のエントロピー逆走エンジンは、暖かい海水(塩分を含む)が蒸発する時、水の成分である水蒸気のみが、気化し水蒸気を多く含んだ空気は軽いため、上昇し上空で冷却される過程である。前者は、塩類の溶け込んだ海水を水分子のみ蒸発分離し、後者は、水蒸気となって、上昇移動し、上空で冷却、過冷却状態から、核となる物質又は宇宙線によって氷の結晶となり、雨や雪となって、真水の大循環は完成する。
(第7回)