作家にして釣り師の「夢枕 獏」さんの著作「毎日釣り日和」(2008.5.15毎日新聞社刊)を読んでいたら241頁に次ぎのような記載があった。
「”だいたい、他人が釣れた話は面白くない”というのが、釣り人の一般的な考え方である。にもかかわらず、プロの釣り師は、あまり釣れなかった話は書きたがらない。しかし、ぼくは所詮素人だから、釣れなかった話や自分の技術が未熟であるという話を平気で書く。そこが面白いということらしい。しかし、こちらは面白い話を書くために、わざと釣らないのではない。本当は、たくさん魚を釣っていやがられるほど自慢話を書きたいのだ。」
夢枕さんの邪気のない風貌を見ているだけで、「この人は生まれついての楽天家で楽しいことばかりを思い描いて人生を送ってきた人だろうなあ~」といつも感じ入るのだが、ここに書かれていることはまさしく自分の心理にピッタリ。
とにかく釣れなかったときの話は正直言って書きたくないのがホンネ。いつもたくさん釣ってさりげなく自慢話を書きたいのだが、そうは問屋がおろさないのが釣りの世界。
自然が相手の釣りはそんなに甘いものではなく、どんなに、緻密な計画を立てても、そしていろんな工夫してみてもどうしても釣れない日がある。そういうときは、ブログにどう書こうかしらんと釣っている最中から脳裡をよぎっていく。
しかし、釣れないときは釣れないなりに何とか格好をつけるのが腕の見せ所だろう。それに「他人が釣れた話は面白くない」という強い後押しもある。むしろ、釣れなかったときの原因や状況を書くのもいいかもしれない!
さて、延々と予防線を張ったのでお分かりのとおり、7月22日(火)の釣行はまるで釣れない日だった。場所は前回の釣行で味をしめたF波止で、今回は最初から直行。午後の中汐の「下げ7分(ぶ)~上げ3分」を狙った理想的な時間帯なのだが、これがまったくうまくいかない。
一番の原因が強風。7月なのに前日に雨が降って低気圧が去り高気圧の張り出しによって気圧の差ができ海上ではときどき突風交じりの強風が吹き荒れた。竿さばきが困難、仕掛けのもつれ、釣りの小道具が吹き飛ばされるなどたいへん。(しかし、やや涼しかったのはありがたい)。
次にマズかったのが、稚鯛(6cm程度)が山のようにたくさん湧いていてお目当てのクロ(メジナ)がツケエに食いつく前に失敬してしまうこと。これではもう釣りにならず策の施しようがない。
場所を替えようにも、出発時間を遅らせたため時間帯が中途半端で移動時間と仕掛けの手間を考えるとまさに絶望的。
仕方がないので、考えられる最善の方法「あっちこっち投法」をやってみた。
マキエを「あっちこっち」にできるだけ遠くに飛ばして稚鯛がいなくなった隙にクロを狙うという非常に忙しくて、しかもなりふり構わない品の悪い釣り方。
しかし、こうすることでようやく釣果が得られるようになってきた。それでもポツリ、ポツリと手の平クラスのクロが上がる程度で我慢あるのみ。そのうちようやく、1匹大き目が来た。本日最初で最後のチャンス。
今回の竿は渓流用(ダイワの華厳5.3m)を海釣り用にガイドをつけ改造して初めてのトライだったが釣り味がまことに絶妙で一気に魚が寄ってきた。竿が短いのでタモ網の操作がしやすく一発でうまく掬えた。
この竿は弾力や、重心のバランス、軽くて取り扱いやすさなどが抜群でこれからメインの竿にすることにした。それに7.1mの竿を1日中振り回すと、釣行の後、いつも手首が痛くなるのが通例だったが今回はぜんぜん痛くならず、これは今回の大きな収穫だった。
600g 釣り場(突端部) 対面の遠景
結局、全体で23匹、一番大きかったのが600gだったが、全般的に小ぶりでなんとも冴えない釣果だった。
それと、食味の話だがたった1週間の違いなのにクロ(メジナ)の脂分が抜け落ちていたのにはビックリした。カミサンが言うには料理しているときからヌルヌル感がないといっていたが、実際に食べてみると刺身も吸い物も淡白そのもの。いつもの脂分の3分の1程度だった。
なお、クロ(メジナ)が一番美味しいとされているのは寒グロ。海苔などを主食としているので磯臭さが抜けてたしかに超美味。その次が梅雨グロでこれは脂分がたっぷり乗ったおいしさが重宝される。
真夏のクロは番外の(粗末な)扱いだが、自分はむしろ淡白なほうが好みなので今ぐらいが丁度いい。
と き 2008年7月22日(火)、海上ときどき強風
ところ Y半島F波止
釣り時間 12時30分~17時20分
汐 中汐(干潮15時前後)
マキエ エサ取り用(ジャンボ1.5角、米ぬか2袋)
本命用(オキアミ小粒1角、パン粉1kg、集魚材チヌパワー)
ツケエ オキアミ小粒
釣 果 クロ23匹、うち1匹(600g)