かって交流があった懐かしいオーディオ仲間が我が家に試聴にお見えになったときの言葉をいまだにときどき思い出す。
「魅力的な音というのは絶対に”野太い音”ですね。以前聴いたWEー205D真空管のプッシュプル・アンプで鳴らしたウェスタンの大型ホーンの音が忘れられません。まるで実像が眼前でリアルに再現されたような印象を受けました。205Dは最近、中国製の復刻版が出ていますので是非試してみたいですねえ。」
おそらく我が家の「プアな音」が反面教師となったのだろうが、何気なしに呟いた仲間の言葉にオーディオへの飽くなき探究心を垣間見た気がして印象深かった。「野太い音」の定義については、お付き合いを通じて感覚的に分かるのであえてお訊ねしなかった。
翻って、「お前は野太い音のような明確な音のポリシーがあるのか」と、問われるとはたと困ってしまいますねえ(笑)。
あえて、言えば「現状よりも少しでもいい音を」ぐらいでしょうかね。
ポリシーが無い証拠が現状の6系統もあるスピーカーに現れていると指摘されても仕方がないですね、甘んじて受け入れます(笑)。
とはいえ、オーディオは「百人百様」で、100人の愛好家が居れば100人とも音の好みも違えば考え方も違う。もちろん趣味の世界だからご本人さえ楽しければそれでいい~。
そういうことを前提にしながら、無粋な自分なりに勝手に「音の交通整理」をしているつもり。
端的に言えば「音」を「無難な音」「魅力的な音」そして「正しい音」の3つに振り分けている。
これには解説が必要ですね(笑)。
「無難な音=音楽鑑賞をするうえでそれほど違和感を感じない音」
デジタル時代になってからのオーディオ装置は平準化が進み、今やどこのご家庭でも「無難な音」を確保しているのはまず間違いないと思う。
人間の耳は環境への順応性が高く、そこそこのオーディオ機器であれば全うな音に聴こえるはず。
「魅力的な音=聴いていて振るいつきたくなるような色気のある音」
魅力的とくれば、俗な言葉で申し訳ないが「色気」という言葉がすぐに思い浮かぶ。我が家の音でいえば「真空管アンプ」と「箱」が見事にマッチした時の「AXIOM80」の音だと言える。背筋がゾクゾクっときてムラムラと・・(笑)。
そして、「正しい音」・・、
その昔、「オーディオ・テクネ」というオーディオメーカーが専門誌に「原音に近づく正しい音とは」と題して記載していたものをそっくり引用させてもらおう。
もちろん、信用するのもしないのも貴方の自由です。押し付けるつもりは毛頭ありませんからね(笑)。
1 ボリュームを上げてもうるさくない音で会話が楽にできる
2 音は前には出ない。後方に広がり自然に消える
3 音像は左右後方に定位し、左右フラットに定位しない
4 小さな音でも明瞭度が下がらない
5 スピーカーの近くでも離れた後方でも音質、音圧の変化をあまり感じない。音は波紋である!
6 音は思っている程、迫力、パワー感のあるものではない
7 視聴上、歪(物理特性ではない)が小さくなると音像が下がり、音階、楽器の音色が正しくなる
8 長時間聴いても疲れない、連室でも音が邪魔にならない
以上のとおりだが、音響に対する専門的な知識があるわけでもないが、これまでのオーディオ経験を通じて、かなり思い当たる節が多い。
ちなみに、「正しい音」を得るために、これらの項目群に対して順番に個別に撃破すればいいのだろうが、そうはいかないところがつらいところで、たとえば、ひとつの項目が実現できなければその他の項目も総じて同じレベルに留まってしまうという厳しい現実が待っている。
そして、主観的な存在としての「魅力的な音」と客観的な存在としての「正しい音」が一致すればこの上なく理想的なのだろうが、まずありえないのではないかな~。
オーディオはつまるところ各自の感性の世界ですからね。
最後に、「心なき 身にも哀れは・・」(西行法師)で、せめて日頃から聴いている音に何がしかのプライオリティ(優先権)を設けていることだけは申し添えておこう。
それは、
「システム全体の音が澄んでいて柔らかい雰囲気で楽器の音色がそのまま素直に表現されているような音。それに音像に奥行き感があること。彫りの深さとでも言うべきか。それぞれの楽器の前後の位置関係が明瞭に分かればこの上なし。」
はてさて、完璧に実現できるのはいつのことやら・・(笑)。
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