前回からの続きです。
大分市のMさん宅に続いてOさん宅にお伺いしたのは28日(水)の15時前後のことだった。Oさんは現役時は県内随一の老舗デパートでオーディオ売り場を担当されていて根っからのジャズ愛好家。いわば趣味と実益を兼ねた仕事に従事されていたことになる。
時代の移ろいでオーディオが今日のよう状態になったのはとても残念なことで、「(オーディオが)不採算部門になって幹部が売らせてくれないんですよ~」と当時、淋しそうにしておられたのが記憶に残っている。
「不採算部門」でふと思い出したが、2週間ほど前に知人からメールが届いた。
「ローサーのPMー6Aですが、私の手におえないボイスコイルの断線があり秋葉原の50年の老舗「ヒノオーディオ」に修理代金を振込み修理依頼をしました。
もうそろそろ出来上がるかなと思い、進捗状況のメールを入れましたが、一ヶ月ほど前は、もう一本のほうで難儀していますのメールがありましたが、今回はURLからの問い合わせをしても、自動返信メールのみで、担当者からのメールがありません。「あれ~おかしいな!」 と思い電話をしてみたら「お客様の都合により現在つながりません」のメッセージが流れました。
ググってみますと、2チャンネルに「お店のシャッターが降りていて、督促状の張り紙がいっぱい貼ってある」とのこと、どうやら倒産したようです。この場合、スピーカーと修理代は諦めるしかないですかね」
もう随分前の話だが、自分にも覚えがある。とあるオーディオショップにラックスのアンプを委託販売で預けていたところあえなく倒産。電話連絡がつかないので直接お店に行ったところ、入り口のドアに沢山の張り紙がしてあったのでガッカリ。「今にして思えばその兆しがあったのに、早く気がつけば良かった」と悔やんだが、もう後の祭りだった。
とにかく「ヒノオーディオ」さんは「AXIOM80」の在庫で有名なお店だったが、これからどういう風に在庫品が流通していくんだろう?
昨日(30日)届いた、あるオーディオショップの「冬季ボーナスキャンペーン」のカタログでは「AXIOM80」のオリジナルボックス入りに何と「525,000円」の値がついていたのにはほんとうに驚いた!
旧いオーディオ製品のほんとうの価値を知る連中はもはや60代以上の年齢層に限られるのだが、購買力を当て込んでのことだろうか。それにしてもね~。
話は戻ってOさん宅のオーディオシステムである。
JBLのパラゴンを特注のラックでもって、ちょうど耳の高さで聴けるように上げてあるのが何と言っても大きな特徴である。
パラゴンは重さが350kgあるそうで、その点このラックはちゃんと強度計算して作ってあり形もパラゴンに沿わせてある。迷ったのが塗装の色だったそうで、パラゴンと同じ色を考えたけれど区別がはっきりしなくなるのであえて違う濃いめの色彩を施されたという。
また、ラック内に収めてあるアンプ類はすべて引出し可能になっているのも心にくい。特注品ならではの機能である。
こうして工夫を凝らされたパラゴンだが、たしかに聴きやすかった。音のバランスが非常に良くて、これならクラシックも十分聴けるほどだと思った。それでいてジャズの雰囲気も申し分なし。
「パラゴンに音は期待しない方がいい。あれは家具を兼ねているところに良さがある。」というのが通説だが、この音ならイメージがあっさり覆ること請け合い。
あまりに良かったので、どうしても我が家で同じCDを聴きたくて3枚借りてきた。そのうちの1枚が「Basie Big Band」。どうやら病み付きになりそうなビッグ・バンド!
アンプの方は組み合わせが3系統あって、「ゴールドムンドのプリとSAEのパワー」「JBLのプリ(SG520)とパワー」「マッキントッシュのプリメイン」。
JBLプリの「SG520」は一度は聴いてみたいアンプだったが、けっして帯域は欲張ってないのに芯があって何よりも音に色気があった。「色気」なんて俗な言葉を使って申し訳ないが、自分では音を表現するのにこれほど適切な言葉はないと思っている。
マッキントッシュのアンプはパラゴンの両脇に置いてある「ヴァレンシア」(アルテック)用である。
音に聞き惚れているうちに早くも17時近くなって夕食時になりそうなので、名残惜しかったがMさんとともに辞去した。
今日はMさん宅の「タンノイ・オートグラフ」、Oさん宅の「JBL・パラゴン」と、実にいい耳の保養をさせてもらった。良く調整された他人のシステムを聴かせていただくと、我が家のシステムを客観的にながめることが出来て実に参考になる。
その意味でも、貴重な1日だった。