前回からの続きです。
初対面となるHさん(大分市)をお迎えしての試聴会(26日)はお互いに長年の知己のような雰囲気の中、めでたく終了した。10時から13時40分までぶっ続けで、何と昼食抜きだった(!)ことがその熱意を証明していよう。
はじめに「AXIOM300」から聴いてもらったが、「ノラ・ジョーンズ」(SACD)がイマイチ冴えなかったようだ。口には直接出されないけれどもHさんの反応を見ていれば大体分かる。こと、オーディオに関してだけは自分はテレパシーがよく働くのである(笑)。
そこでいよいよ真打の「AXIOM80」の登場。試聴盤は同じノラ・ジョーンズ。
「ああ、これはいいですね!」と、すぐに頷かれた。「スピーカーの真ん中にノラがすっくと立ってます。いい音になると歌手の口が小さくなるとはこういうことを言うのですね。」と感嘆しきり。
何せ噂に聞くだけだった「AXIOM80」を初めて聴かれるのだから無理もない。「古いスピーカーなので古い音がするかと思ってましたが全然予想が外れました!」
「そりゃそうですよ~。現代のスピーカーをもってしてもフルレンジでこれ以上のものがあったらお目にかかりたいものです」とは、陰の声(笑)。
それと、「AXIOM80で鳴るベースの音がとても気持ちいいですね。」との発言にはいささか驚いた。
なかなか耳が肥えた方なのである。
これまで我が家の「AXIOM80」を聴いたお客さんの反応は大体二つに分かれる。「低音が物足りない」派と「低音はこれで十分です」派。
前者は日頃から低音域をドスンとかボ~ンとか、いわせるのが好きな「おおらか型」、後者は「スピード感のある低音を楽しむ」で現わされる「緻密型」である。
好みの問題なのでどちらがいいとか悪いとか言えないが、質の高い楽しみ方となるともう言わずもがなだろう。おやおや、いつもの我田引水がまた始まった(笑)。
とにかくHさんが当方の陣営に属することは間違いなく分かったので、大いに聴かせ甲斐があろうというもので、「AXIOM80」はそのままにして次から次にアンプを取り換えて試聴していただいた。
371シングル、WE300シングル(モノ×2台)、刻印付き2A3シングル
この中で一番お好みだったのは「WE300B」シングルだった。
ちょっと意外な気もしたが、先日のAXIOM80仲間の試聴会のときに不評だったのでちょっと手を加えたのがどうやら功を奏したらしい。
初段管「E80CC」(ヴァルボ)はそのままだったが、ドライバー管を「MHL4」へ、整流管を「5R4GY」(フィルコ)に変えたところ見違えるほど聴きやすくなったことを実感していたところだった。
ひとしきりWE300Bオールドで聴いてから、ご要望に応じて「中国製」の300Bに差し換えたところ、「やっぱり、違いますねえ!」と、心から得心がいかれたご様子。
そういう極めて微妙な差をこともなげに表現できる「AXIOM80」の繊細さに改めて感心されていた。
「それほどお気に入られたのでしたら、我が家には余分に復刻版のAXIOM80が2ペアありますので1ペア譲ってあげてもいいですよ。」
「それはありがたいですね。これから、エンクロ-ジャーやアンプを揃えますのでそれまで待っていただけませんか?」
「いずれオークションに1ペアだけ出すつもりでしたので、もちろんいいのですが、もっと時間をかけてゆっくり検討された方がいいかもしれませんね。」と、申し上げておいた。
オーディオに限らず即決はあまりいい結果を産まないのが世の習いである(笑)。
Hさんのご帰宅後に次のようなメールが届いた。
「いまだに音が頭に残ってます。感動が忘れられません。ネットでしか見たことがないものが沢山あり、夢のような時間でした。おかげさまで自分の好みが分かったような気がしております。」
これほど喜んでもらえると何だか少しは世の中のお役に立っているような気がして、こちらもうれしくなる。
釣ってきた魚を(他人に)配って喜んでいただくのもいいが、そのうれしさとなると一時的なものに過ぎないが、精神的な喜びともなると、その深さといい、時間的な持続性といい、質的にずっと上回るような気がする。
いずれにしても、Hさんとの試聴で当方も新しい発見があったので後日、記載してみよう。