「自主判断の国は右ハンドルの国」
グラスゴウ、エディンバラ、或いはロンドンの賑やかな通りを、信号を無視して渡ったことは何度もある。おまわりさんは何も言わない。だって自分も同じことをしてるんだから。
じゃあ、なぜ信号を無視するのか?
チャップリンの「モダンタイムス」は、文明の発達によって機械に翻弄される人間を、皮肉たっぷりに描いた映画だった
信号は機械です。自動車が来ないのに機械の指示に従ってじっと待つ。ちょっとおかしいんじゃない?そんな潜在的メンタリティーがあると思う。
地元ダンフリースの街で、信号を無視する歩行者にクラクションを鳴らす車を見たことは一度もない。車は徐行するか停止する。これが大阪だったらあんた…
観光客なども多いロンドンのトラファルガー広場の交差点で、おまわりさんに聞いたことがある。「歩行者が信号を守らなくていいんですか?」
おまわりさんの返事「ま、自分で判断すればいいんじゃないですか?」だって!
ただし、信号を無視して事故に遭えば自分の責任になる。だから、自己責任のもと自分の判断で行動すると言うことでしょうね。
こちらでは、自主判断の訓練は小さい時から受けているようです。子供達が地元の学校に通っていた頃、授業参観を覗いたことがあった。
印象に残っているのは、先生がしょっちゅう生徒たちに質問していたことです。
「あなたはどう思いますか?」
答える為には自主判断が求められる。
英国では、センターラインがあって速度標識のない道では、時速60マイル(約100キロ)出していい。買い物でスーパーに行く時など、常に時速100キロは出す。
うちアラントンの前の道は、かつてアニー・ローリーさんも馬車で通った田舎道だけど、時速百キロ出していいんです。ところが、狭くて百キロなんてとてもとても無理です。さらに、追い越しもOKだけど怖くて無理。
実は、そんな道がそこら中にある。お巡りさんは言う…
「百キロ出すのも追い越しするのも、自分で判断すれば?」
メガネをかけて運転する友人の免許証に「眼鏡使用」の記載がない。
「日本の免許証には眼鏡使用の記載があるよ」とお巡りさんに言ったら、彼は首を傾げていた。
「なぜ免許証に書く必要があるの?メガネをかけて運転するかどうか自分で判断すればいいじゃない」どうです?日本とは随分違いますね。
さて、近年、日本の路上で、右ハンドルのベンツやBMWをかなり見かけるようになったけど、昔は「外車は左ハンドル」が常識だった。
日本は、その昔の日英同盟を受け、郵便制度や道路交通行政など、英国に倣った。で、英国や、そのほかの英連邦の国々同様、左側通行・右ハンドルの国となった。
右ハンドルの外国車が増えてきたと言っても、今でも、わざわざ左ハンドル車を選んで、得々と乗っている方を見る。これ、実はとても滑稽なことなんです。
英国では、昔から、ベンツもポルシェもフェラーリもランボルギーニも、右ハンドル車しか売ってないし、そもそも左ハンドル車を欲しがる人などまったくいない。
逆に、アメリカやフランス、ドイツなど左ハンドルの国で、右ハンドル車を欲しがる人がいると思う? 第一、売ってませんよ。
世界の国の35パーセントは右ハンドルの国です。そんな中で、左ハンドル車をわざわざ選んで乗る人がいるのは日本だけの珍現象です。もちろん左ハンドル車をわざわざ用意する外車デーラーがあるのも日本だけの珍現象です。なぜか?
敗戦後、日本を支配した連合軍総司令部GHQの実体はアメリカで、天皇陛下の命運も彼らが握っていた。敗戦による貧しさでどん底にいた日本人の前に現れたのが、あのでっかい夢のようなアメリカ車です。
そんな夢の車に左ハンドルが付いていたことが、今に至るも左ハンドルへの憧れとなったわけ。つまり左ハンドル車への憧れは、戦争に負けた国民の、貧しい植民地根性だと言える。こんな国は日本だけです。
ついでに言うと、戦争以前、横浜には、フォードなどアメリカの車を生産する工場があったけど、すべて右ハンドル車だった。
メル・ギブソンのデビュー映画、オーストラリアが舞台の「マッド・マックス」に出てくる車は、でっかいアメリカ車も含め、すべて右ハンドルだったし、クラーク・ゲーブル主演の「一攫千金の男」では、香港の岸壁にキャデラックかシボレーとおぼしきアメリカ車が映ってるいたが、やはり右ハンドルだった。
ハンドル位置こそ優先事項だと言うことです。そんなことも知らず、日本でわざわざ左ハンドルを選ぶ人って…いやはや…。だから滑稽だと述べた。
左ハンドル車は右ハンドル車とはバックミラーに映る死角が違う。この死角の違いが事故の原因となる。相手の車が右ハンドル車であれば起こらなかった事故を僕は二度経験している。僕の姉も一回経験している。
スーパーの駐車場で、前にいる左ハンドル車のおばちゃんが、駐車チケットを取るのにわざわざ車から降りて発券機まで行く。これ、後続車にとって迷惑だよね。
交差点で右折するとき、左ハンドル車の場合、対向右折車が保冷車やトラックなどだと前方が見えない。
反対方向から直進して来る車がないのに右折出来ないのでじっとしている。これも後続の車にとっては迷惑この上ない。
つまり、日本に於いて左ハンドル車は社会の迷惑だと言うこと。
英国に住んだリンボウ(林望)先生はその著書「イギリス観察辞典」で、「一億円やると言われても日本で左ハンドル車に乗るのは嫌だ」…僕もまったく同感です。
自動車史上最も高値がついたフェラーリ250–GTO。
時価50億円以上!写真のように右ハンドル車も多く生産された