作家マルセル・プルーストに「失われた時を求めて」という長編があります。20世紀において「ユリシーズ」(ジェームス・ジョイス)と並ぶほどの傑作とされています。
今回のタイトルはそれにあやかって「失われた高音域を求めて」といきましょう。名著ならぬ「駄文」ですけどね(笑)。
さて、オーディオ愛好家にとって極めて残酷なことですが加齢とともに聴力が衰えていく・・、これは周知の事実ですよね。
もちろん個人差があるわけですが、一般的に低音域よりも高音域の方が聞き取りにくくなるとされています。
ちなみに、人間の可聴周波数帯域は「20~2万ヘルツ」となっており、具体的にはおよそ1万ヘルツ以上が おぼろげ になってくるはずです。ただし、肝心のご本人はいきなり聴こえにくくなるわけでもないので、それほど切実感がないのが一般的ですかね(笑)。
で、そういう隘路(あいろ)に対処するのに2つのタイプに分かれると思います。
ひとつは、自然に任せて放置するタイプで、いわば物理的に聴こえなくなった1万ヘルツ以上に対し、これまで培ってきた脳のイメージ力で補完するタイプです、そしてもう一つは聴こえなくなった高音域に対してもろに物理的に補完しようという直截的なタイプです。
どちらが高級なタイプかはもう言わずもがなですね。音楽はいわば脳のイメージで楽しむ芸術ですから当然前者だと思いますよ~。
しかるに、このブログ主となると・・、お粗末ですけど典型的な後者なんですよねえ~(笑)。
失われた高音域に対して、やたらに執着するタイプなんです!
実例を挙げてみましょう。
通常では「AXIOM80」(以下「80」)に「ツィーター」は不要です。このフルレンジは高音域まで十分といえるほどカバーしていますからね。
むしろ、余計なものはつけない方がいいのですが、この歳になるとどうしても高音域が淋しくなってきて・・、とうとう画像のように「ツィーター」(「075」)を付ける破目になりました。
とはいっても、「80」と再生周波数帯域がダブると音が濁るので微かに聴こえる程度の「超高音域」でローカットしています。
具体的には、使用したコンデンサーは「マイカ」で、数値は「0.075μF(マイクロ・ファラッド)です。周波数早見表でいくと、計算上は「26万5千ヘルツ」でのローカットになります。人間の耳ではまったく聴取不可能です。
ところが・・、耳を近づけてみると微かではありますが明瞭に聴こえるんですよねえ~。
そして、ツィーターを付けた状態と外した状態で聴き比べてみるとあら不思議・・、付けた方が音が瑞々しく聴こえるではないですか。
オーディオは結果(出てくる音)がすべてです。理論上の空論は実践の結果には太刀打ちできません(笑)。
以来「80」を聴くときはずっと付けっぱなしです。
で、「075」にはまったく不足を感じていませんでしたが、いつものようについ浮気心が湧いてきました。
「075」の代わりに「リボンツィーター」(デッカ)を試してみたくなりました。これまで、なぜ敬遠していたかといえば、このリボン型は能率がものすごく低いんですよねえ。「075」が「110db」だとするとせいぜい「85db」前後ぐらいがいいところでしょう。
したがって、使うアンプもパワーのあるものじゃないと使えませんので諦めていたのですが、まあやってみなくちゃ分からん・・、というわけで試してみました。
ツィーターが軽いので箱の上に堂々と置けます。ユニットの配置が「縦一文字」というところが「音像定位」上、メリットですかねえ。
ローカットするコンデンサーはウェスタン製のオイルコンデンサー「1μF」です。これにロシア製の極小マイカをパラってます。
計算上は「2万ヘルツ」でローカットになりますが、問題はこれを駆動するアンプですね。
無理を承知でツィーター専用の小出力の真空管アンプでボリュームを全開にして鳴らしてみたところ、お~、なかなか行けるじゃないか!
「075」とは一長一短で、「元気溌剌」さと「しっとりした奥ゆかしさ」でプラマイ「ゼロ」かなあ。
オーディオは何といっても実験あるのみですね。
結果的に「失われた高音域を求めて」作戦は大成功でした・・、な~に余っていたものを活用したい一心でしたけどね(笑)。
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