負ければチャンスはもう来ない
2018年4月5日
財務省の決裁文書改ざん事件だけでも、政府に対する国民の不信感が高まり、憲法改正の国民投票で与党側が勝つ見込みは大幅に後退したと、思っていました。さらに、改憲されれば条文に明記される主役の自衛隊で、文書管理の隠蔽疑惑が持ち上がりました。
国民投票にとって、これは致命傷になりかねません。朝日新聞は「文民統制が利いていないと野党」、読売新聞は「組織的隠蔽の疑いも」と、大きな記事を掲載しました。財務省も防衛省も安倍政権の関わりが深く、財務省関係者から逮捕者が出たり、防衛省で新たな事実が明るみになる可能性もあります。
当初の予定では、年内に憲法改正を発議し、来年に国民投票という日程を安倍政権は組んできました。勝つのが難しくなる一方の流れの中で国民投票に臨み、「負ければ、自衛隊明記のチャンスは当分、こない」、「勝っても賛否はきわどい票差となり、与党側は次の選挙で議席を減らす」ですね。
リスクが大きいタイミング
負けた場合、自衛隊はどうなるのでしょうか。安倍首相は「国民投票で否決されても、自衛隊合憲には変わりがない。憲法の条文に明記して、違憲論をつぶしていく」と、説明してきました。憲法解釈上では、そうであっても、国民投票で否決されれば、違憲論が息を吹き返す可能性があります。
9条で「武力行使の永久放棄、陸海空軍の不保持、国の交戦権の否定」を掲げながら、自衛隊が存在するのは憲法解釈で認めてきたからです。国家の自衛権を否定する国はまずないでしょう。自民党案にある「自衛の措置とるための実力組織」も、現行憲法との整合性をとるための苦し紛れの表現です。そうであっても、国家の基本である憲法に自衛組織を明記することは当然の措置だと思います。
自民党案ではそのほか、「教育の充実、家計負担の軽減」、「緊急事態条項」、「参院選の合区解消」が列挙されています。首を傾げる案もあります。「教育の充実」は自衛隊明記に反対論が起きるのを防ぐ緩衝材で、本当に必要なのか疑問です。緊急事態条項の不備は是正しておくべきにせよ、今のような政府だと、緊急事態に名を借りて、政府の権限を広げる不安感を持たざる得ないという懸念があります。
作戦行動を隠す懸念
そういう批判もあり、このタイミングで急いで国民投票を実施すべきでないと思います。防衛省の問題は「大臣を無視し、重要情報の報告もしない」ということですから、「作戦行動を大臣や国民から隠しておく」につながります。「憲法改正で自衛官の士気が高まる」という改憲賛成派がいます。「士気を高める」前に、国民の目をごまかしているとおもわれない自衛隊にすることが先決です。
安倍首相は最後まで粘り、チャンスを狙い続ける感じですね。先日、親近感を持っている新聞社や通信社のトップクラス、NHKの元会長などと会食との記事がありました。首相支持率が急落している時期です。「なぜこんな時期を選んでねえ」と、首相の神経を疑いたくなります。焦っていますね。
他方、新聞、テレビが真意をいぶかる放送法4条(政治的公平性)の廃止を検討しています。くせ球です。ネット事業者を放送事業に参入させ、トランプ米大統領のように、自分に有利な報道をしてくれるメディアを育成したいのでしょうか。支持率の低下は首相に不利な報道をする、新聞、テレビのせいだと錯覚しているようでもあり、とにかく八方ふさがりで、相当、焦っているようですね。
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