焦点の絞り込みの間違い
2017年3月21日
築地市場の豊洲移転に関する百条委員会での質疑を聞き、もう結論を出すべき段階にきたと、思いました。不透明な過去の経緯の追及は今後も続けるせよ、豊洲の安全性に問題はないとの専門家会議の結論を尊重し、小池知事は早期に移転に踏み切ることです。安全性への不安、心配な点が残るなら、早急に補強、改修工事にとりかかるべきです。
豊洲問題を鉄道に例えれば、複線です。食の安全性と、過去の経緯に対する責任追及という2つの路線です。いつの間にか、石原元知事が絡む過去の経緯の無責任さ、不透明さに焦点が移り、メディアもそこに重きをおいて、2つを混線、混同した報道を繰り返してきました。土壌や水の安全性に関する分析専門家がたくさんいるのですから、なぜもっとかれらの見解、知見を紹介してこなかったのでしょうか。
日経のように「移転問題がさらに混迷してきた」(21日の社説)と、今も方向感覚がずれたままの新聞もあります。一方、朝日新聞は「なぜ過去の責任追及と、食の安全・安心の問題が結びつくのか」(20日の解説)、読売は「過去の経緯と安全の問題を区別して、速やかに方向性を示すべきだ」(21日の社説)です。やっと、2つを混線させてはならないという本質的な焦点にたどりついた感じです。
豊洲は欠陥構造物なのか
百条委員会の質疑を聞けば聞くほど、知事や副知事クラスの無責任さにはあきれ果てます。無責任さの結果として、完成した豊洲市場が欠陥建造物で、食の安全を脅かすというのなら、稼働を延期しても、責任追及と並行して取り組むべきです。
実際はどうか。「基準を超えて検出された地下水中のベンゼン、シアンなどは、食の安全を脅かさない。直接、飲んだり、魚を洗ったりするわけではない。市場用地はコンクリートで覆われており、地下に封じ込め、浄化して排出すれば問題はない」。集約すれば、委嘱した専門家会議、外部の専門家の見解はこんなところでしょう。
豊洲の稼働を開始し、安全性問題という路線には区切りをつける、無責任行政の追及という路線は今後の都政改革のためにも残すという決定が必要な段階です。もちろん、安全性については、監視と改善を今後も、おろそかにしてはいけません。また、稼働を開始しても、反対派が差し止め請求の訴訟を起こすことは考えられ、決着に時間を取られます。そのためにも、早く補修、改良にとりかかることです。
直下型地震が起きたらどうする
築地市場は首都直下型地震が起きれば、崩壊する恐れがあるそうです。豊洲は震度7までは耐えられる設計になっています。小池知事は7月の都議選の材料に使えるとみて、責任追及を重視してきたとみられます。これだけ大震災への備えが叫ばれているのですから、稼働を始めても、小池知事のメンツはつぶされません。また、稼働開始の延期論を掲げて、都議選で勝った場合、稼働開始のタイミングはもっと難しくなります。
確かに政治、行政の無責任さにはあきれ果てます。重要事項について、石原氏は「豊洲移転は既定路線だった」、「用地買収は浜渦副知事に一任していた」、その浜渦氏は「○○理事に指示していた」などと述べました。閣僚や知事らは責任追及されると、突然、痴呆症にかかる人がいるらしく、石原氏らは「記憶にない」を連発しました。
だれが決定したのかも分からないうちに、当初の基本的な設計が変更され、土壌汚染対策の工事が行われました。その結果、安全性に問題がが生じたなら、食の安全性と行政の責任追及に並行して今後も取り組むべきでしょう。幸いにして、そうではないというのに、責任追及を続け、そのために稼働開始を遅らせるというのは、実に不思議な話です。
最後に。石原氏はまともに都政の重要案件をチェックしていたとは、思えません。東京ガスとの土地売買交渉で「瑕疵担保責任の放棄」が行われていたことを知らかなかったとの証言には絶句します。極めて常識的、基本的な項目です。自らが率先して担当部署に直接、確認すべき事項です。行政を運営する上での、基礎的な知識が全くなかったのでしょう。百条委員会といえば、自民党都連の幹事長だった某議員は、自ら監査役をやっている会社が99%の入札率で、工事を受注していたと報道されています。こういう人物こそ証人喚問すべきでしょう。
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