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USスチール買収にみる経営トップの国際感覚の低さ

2024年09月08日 | 評論

 

大統領選という最悪のタイミング

2024年9月8日

 日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、バイデン大統領が中止命令を出す方向だと、報じられています。すでにトランプ氏は「日本に買わせてはいけない。我々の製造業の遺産を取り戻す」と断言し、ハリス副大統領(民主党大統領候補)も「米国が所有し、米国が運用する企業であり続けるべきだ」と、述べています、日鉄による買収計画の破綻は必至の流れです。

 

 つくづく思うのは、日鉄が買収計画を発表したのは、大統領選が始まる直前の昨年12月で、なぜこのような最悪のタイミングで発表したのかです。大統領選に絡んで、直ちに政治問題化する。それくらいのことを経営のトップは分かっていなければならない。

 

 期限内(25年6月まで)に交渉がまとまらなければ、880億円の違約金を取られる。2兆円を投じる計画が失敗すれば、株価にも大きな影響がでる。経営トップの責任は重く、失敗は辞任ものです。

 

 次期大統領が決まって、冷静に議論ができる状況を待つ。並みの経営者でもそう判断する。日鉄の経営トップは、「最悪のタイミングでの発表」について説明しなければいけない。メディアもそこを追及しなければいけない。その気配はありません。

 

 この買収計画は、経済、産業的な視点だけでは論じられない。「米国の安全保障を損なうのか」、「労働者の雇用に影響がでるのか」、「大統領選に巻き込まれたら高い買い物になる」、「日鉄がUSスチールを再建できるのか」、「USスチールは米国の製造業を代表する歴史的なシンボルで、国民感情が絡んでくる」など多くの論点がある。

 

 大統領選を左右する鉄鋼、自動車産業の生産拠点が集まる「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の一角、ピッツバーグには、USスチール本社、全米鉄鋼労組(USW)の本部がある。この州を大統領選でとれるかどうか。両陣営とも必死です。労働者票が絡んできます。

 

 日鉄の買収計画は、案の定、鉄鋼組合を巻き込み、鉄鋼労働者票を取りたいトランプ、ハリス両氏を巻き込み、バイデン氏が決定的思われる決断をした。日経新聞社説は「日米鉄鋼再編を政治化するな」(3月16日)と見出しで、「政治が正当な理由もなく、民間企業の経営に介入してはならない」と、書きました。幼い主張で、政治化するのは必至の案件です。

 

 日鉄経営トップは「しまった」と思ったら、違約金を払っても、早めに買収計画を中断するか、撤回し、大統領選後に出直す決断をすべきでした。「大統領選の終了を待って交渉を再開する」といえば、疑問に思う人は少ないでしょう。

 

 「トランプ氏に近いポンペオ氏(トランプ政権下の国務長官)を多額の費用を払ってアドバイザーに雇った」、「1900億円の追加投資を決めた」、「取り締まりの過半数は米国籍とする」など、ずるずる譲歩案をだし、カネもだす。なんのための買収が分からなくなってきました。この「ずるずると譲歩案」が最もいけない。

 

 純粋に経済、産業的に考えれば、日鉄の買収は単純に否定すべきではないのかもしれません。それにしても、論外のタイミングで買収交渉を公表(開始)したことは大失敗でした。私にとっては、日本を代表する鉄鋼メーカーのトップの判断能力の有無にショックを受けました。せめて米政府の裁定が出る前に、買収計画の撤回、中断を決断すべきです。

 

 


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1 コメント

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マルテンサイト千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-09-23 19:33:56
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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