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政治ジャーナリズムは世襲政治をもっと疑問視しよう

2021年10月01日 | メディア論

 

政界に生き残る旧システム

2021年9月30日

 自民党総裁選で岸田文雄氏が当選し、来月4日の臨時国会で第100代目首相に指名されることになりました。政界を支配する世襲政治の構造が今回も、はっきりみてとれました。

 

 政治、外交、経済、社会などの世界の枠組みが激動期に入っています。旧システムは新システムに置き換えられていく。政治ジャーナリズムは政界の内部情報ばかり取材せず、政治構造にもっとメスをいれてほしい。

 

 「将来の首相候補」人気皇室のランキングで、岸田氏は下位グループでした。石破、河野、小泉氏らに上位を占められ、「優柔不断で迫力に欠ける岸田氏では首相は務まらない」の評価でした。それが河野氏に圧勝しました。

 

 派閥の岸田派は48人で、細田派(92人)、麻生派(65人)、竹下派(54人)などの後塵を拝しています。「軽量級だからいつでも下ろせる」が岸田氏を担いだ安倍、麻生氏らの意図でしょうか。

 

 一年前、無派閥の菅氏が首相に選ばれた時もそうでした。「無派閥の菅氏なら下ろせる時はいつでも下ろせる」で主要派閥の思惑が一致しました。国民の期待度が下位のグループから二人続けて総裁=首相が選ばれる。本格派の首相の誕生を求めている時代に逆行しています。

 

 今回の総裁選、党と閣僚人事を主導しているのは、安倍・麻生連合(2A)のようです。いづれも戦後の動乱期に首相を務めた祖父を持つ世襲政治家の典型です。党幹事長になる甘利氏も、父親が代議士でした。

 

 自民党政界を見渡せば、世襲による支配構造がより強固になってきています。小選挙区制の下で当選回数を重ねやすい世襲議員の比率が上がり、かれらが支配構造のピラミッドを昇っていく。

 

 派閥の領袖は全部、世襲議員です。細田派(事実上の安倍派、祖父が岸信介首相)、麻生派(祖父が吉田茂首相)、竹下派(総裁選直前に死去した竹下亘氏は竹下登首相の弟)、岸田派(岸田氏は祖父、父親が代議士)といった具合です。

 

 党総務会長になる福田達夫氏(54)は、若手代表として将来が期待されています。祖父は福田赳夫首相、父親は福田康夫首相です。この「将来のリーダー候補」(朝日新聞)も典型的な世襲政治家です。

 

 閑職とはいえ、党広報本部長の河野太郎氏は三代目、組織運動本部長の小渕優子氏は父親が首相でした。こう列挙すると、息がつまってきます。

 

 政治家としての資質が期待されている林芳正参議院議員は、今度の選挙で衆議院議員(山口3区)に転進する構えです。政治一家で父親は「通産官僚→衆議院議員」でした。

 

 世襲でもない人物が政界に入り、生き抜いて行こうとすると「有力政治家の入り婿になる」手があります(例・加藤官房長官)。次は「有力者に媚びを売る」やり方で、「アベノミクスを踏まえたサナエノミクス」を唱えた高市早苗氏がその好例です。

 

 もう一つは「危ない橋を渡る」です。IR(リゾート開発)汚職で逮捕された秋元代議士、選挙違反事件(買収)で逮捕された河井議員らです。世襲議員のように選挙地盤、資金力、知名度に恵まれていないから「危ない橋」を渡ってでも、議席にしがみつくのです。 

 

 閣僚人事で早々に財務相に決まった鈴木俊一氏は、父が鈴木善幸首相、義兄が麻生太郎氏です。閣僚、党役員の40%程度が世襲議員ですから、世襲制は自民党の下部構造です。

 

 議員にとっては既得権益であり、自ら改革しようとする意欲はわかないでしょう。ですからジャーナリズムが問題提起すべきなのです。

 

 国庫からも317億円(21年度)の政党助成金が交付され、自民党分は170億円です。多額の国費が投入されのは、政治が国家にとっての公共財だからです。その国費の下で多くの世襲議員が生まれている。政治の家業化(政治の権益化)を助けるための国費であってはならない。

 

 世襲制が参入障壁になり、政界に外部から人材が参入しにくい構造になっている。それが日本の停滞を生む一因になっていると思います。

 

 民間企業でも、世襲でトップが決まることはあります。家業化した零細企業、創業者系の中小企業ではトップが世襲ということもあるでしょう。国費が投入されているわけでもないからそれでも構わないのです。

 

 

 


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