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三菱電機の社長辞任が示す責任の取り方の官民格差

2021年07月03日 | 経済

 

国際競争にさらされない政界

2021年7月3日

 三菱電機が鉄道車両向け空調設備などの不正検査を35年も続けていたことが分かり、杉山社長が引責辞任することになりました。

 

 記者会見で意向を表明した杉山社長は唇を噛みしめ、無念の表情を浮かべました。長期にわたる不正を自分の代になって、掌握しました。その責任をなぜ自分1人が背負うのか。見て見ぬふりの社長もいましたか。

 

 同社は16年度以降、3回社内検査を実施したものの、不正を見つけられなかったそうです。それが「6月14日に発覚し、社内調査に入った」(杉山社長)と言いますから、内部告発でもあったのでしょうか。

 

 「新しい社長に不正の解明に取り組んでもらう。そのためには、自分は辞任したほうがよい」と。スパッと辞める杉山社長は潔い。政界のトップが「責任は私にある」と言いながら、何ら責任も取らないのと比べたい。

 

 同社では、社長の任期は4年という決まりを続けてきました。検査をしながら不正を見抜けなかった前任の社長(14ー18年)は、辞める杉山社長(18年4月~)にだけ責任を押し付けてはなりません。

 

 その前任の前任社長あたり、さらに担当役員らも役員慰労金を自主的に返納するなどして、責任をとるという姿勢を示すべきでしょう。どこまで遡るかは、今後の調査次第です。

 

 国内大手メーカーでは、製品のデータや検査を巡る不正が続いています。三菱自動車(16年4月、燃費)、スズキ(16年5月、燃費)、神戸製鋼(17年10月、検査データ)、三菱マテリアル(17年11月、検査データ)、日立金属(20年4月、特殊鋼の検査データ)などです。

 

 経済、産業のグローバリゼーションによって、国際競争が激しくなり、取引先企業のすそ野が広がっています。それが不正を誘発する。一方、不正を隠し続けると、そのツケは何倍にもなって跳ね返ってくる。

 

 第三者機関を設けて、真相究明に客観性を持たせる。そうした手法が企業で一般化し、うみを出し、再出発することが必要な時代です。

 

 それと対比したくなるのが政界の疑惑追及の甘さです。安倍前首相のモリカケ、桜見の会の問題は好例です。菅首相の長男が関わった東北新社の不透明な企業行動といい、真相解明は尻切れトンボに終わりました。

 

 自民党から河井議員夫妻に提供された1・5億円という破格の資金の動機も解明されていません。第三者機関よりも、検察のほうが法的な権限を持っているのに及び腰です。人事権を官邸に握られているからでしょう。

 

 真相究明、疑惑解明、責任の取り方には、政界(官でもある)と民間(企業)の間にあまりにも大きな格差があります。

 

 企業が国際競争にさらされ、透明度の高い対応が必要なのに対し、政界は国内競争だけを考えていれば済む。それも県は市よりも小さな小選挙区で戦っていれば世界は完結します。

 

 企業を監視しているのは、世界中の取引先、株主、市場、顧客です。不祥事が起きれば、国内外の報道機関、調査機関のチェックも受けます。企業とメディアの距離も開いており、容赦のない批判が飛び出してきます。

 

 それに対し国内政界は、政治家と一体化してしまったような政治ジャーナリズムのチェックしか受けません。政治家にとって都合の悪いニュースはなかなか浮上してきません。

 

 NHKの著名な女性記者は安倍前首相の代弁者になってしまっていることへの自覚がありませんでした。通信社の記者OBが政権の宣伝マンと化しているのに、テレビの常連として引っ張りだされることも似ています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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