レバノンから高笑いが聞こえてくる
2020年1月1日
話題が乏しくなる年末や正月が、元日産会長のゴーン被告の逃亡劇で俄然、盛り上がっています。メディアの報道、関係者の反応を拝見していますと、的外れが多すぎますね。ゴーン被告はベイルートで、アリババやシンドバットの千夜一夜物語を読み返し、高笑いをしているに違いありません。
冗談から先に申し上げます。弁護団の弘中淳一郎氏は「無罪請負人」の異名があります。ゴーン被告は日本の裁判に出頭して、保釈条件の違反、不正出国容疑で再逮捕されるヘマをするはずがありません。主犯不在で裁判は空中分解し、その結果、ゴーンは事実上、無罪の状態に置かれます。弘中氏はさすが「無罪請負人」らしい仕事をしました。
保釈の条件は、「知恵を絞り、証拠隠滅や逃亡はあり得ないシステムを地裁に提出した」(弘中氏)といい、パスポートの強制保管、海外渡航の禁止、自宅に監視カメラなどの措置を講じました。同氏は「出国は寝耳に水」と。それよりまず謝罪し、レバノン行きを試みるべきです。反応が的外れです。
日本の常識など通用するはずがないアラブ世界ですから、パスポートの再発行や偽造なんかは得意業でしょう。「パスポートなしに、出国できない」と、弁護団が思い込んでいたとしたら甘すぎる。
「本当に逃げてしまった」の発言に絶句
検察も的外れです。「国外に出る可能性も考えていたが、本当に逃げてしまうとは」と、検察幹部の一人は憤ったと。さらに「だから地裁の保釈に検察は反対していた」と。のんびりしています。実際に保釈されたのですから、逃亡の可能性に備えて、どのような態勢をとっていたのか。ゴーン被告に憤っても、意味がない。憤る矛先は自らの不手際でしょう。
音楽バンドに扮した一団が被告の自宅を訪ね、演奏後、楽器を入れる木箱に被告を潜ませて連れ出したとの、情報が流れています。最大のヤマ場です。それが本当なら、監視カメラに映った段階で、警備員が駆け付け、チェックする。警備担当は検察、警察のどこなのか、何をしていたか。
被告はプライベート・ジェット機で日本に帰国したところを検察に逮捕されました。大手柄の検察は、被告が逃亡する際、同じように私有機を使うことを想定していなかったのか。
日産は当局者に怒りをぶつけよ
日産関係者の憤慨もピントが外れています。「法廷の場で真実を明らかにして欲しかったのに残念だ」「自分の正当性を主張する手段が国外脱出なのか」と、朝日新聞が報じています。そんなことを期待できる相手ではない。憤慨をぶつける相手は海外逃亡を許した当局者です。
最後に、「逃亡」か「出国」かで、新聞の見出し分かれました。日経新聞は「無断出国」、読売新聞は一面トップの主見出しが「無断出国」で、迷いがあったのか、脇見出しで「保釈中、逃亡」でした。どう考えても「逃亡」で、「出国」は的外れです。朝日新聞の「レバノンに逃亡」が正しい。
弘中弁護士がうなだれている新聞の写真は印象的でした。被告の保釈に功があったのに逃亡され、裏切られ、自分にも責任があるという表情です。弁護士を裏切ることなんて何とも思っていない。自分の弁護に不満だった被告は、弁護士報酬を払うかどうかも分からない。弁護団は報酬をあきらめ、かりに払ってもらえた分があれば、どこかに寄付でもして、詫びたらよい。